<前回に続く>
新自由主義的な政策は次のような形で社会に影響を及ぼしました。
一つ目は、コストダウンのための女性や若者を中心とした非正規雇用の活用です。1980年代まで、パート・アルバイトなどの非正規雇用は、家計補助型の働き方であり、社会問題化していませんでした。しかし、バブル崩壊後に男性正社員の雇用・給与が不安定化すると、これらは生計維持型に変化していきます。それでも企業はコストカットのため低賃金の非正規雇用を積極的に活用し続けています。
二つ目が、公共サービスの削減です。「官から民へ」の大合唱の下で、公務員の数や予算は劇的に減らされ、公共サービスは圧力にさらされました。その結果、公務の現場では大きく非正規化が進んでいます。特に、多くの専門職の人たちが非正規に追いやられました。その処遇は低く、フルタイムで働いても年収が200万円に届くか届かないかです。
三つ目は、請負や業務委託の拡大です。日本にはバブル崩壊前にも下請け構造はありました。しかし1990年代以降は、下請け企業への配慮がなくなり、買い叩けるだけ叩く、応えられなければ安い業者、海外の業者に出すということが広く行われるようになりました。その結果、低価格競争が進み、ピラミッド構造の中での「中抜き」も進みました。それが、実際に現場を担って働いている人たちの低賃金を生みだしました。
これら三つの出来事は、共通した考え方の下で進んできました。それがコストカットと市場競争に任せるという新自由主義的な考え方です。これらが政府や企業の方針となり、それが国民にも受け入れられていったことで、日本の低賃金構造が生まれたのだといえます。
全ては今日の社会問題の根源的な問題として顕在化しています。
<次回に続く>