無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

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独居=不幸ではない…「おひとりさまの最期」上野千鶴子さん

 どのような条件があれば、ひとりで最期を迎えることができるのか。「おひとりさまの最期」(朝日新聞出版)などの著書がある東大名誉教授の上野千鶴子さんに聞いた。

 今は、だれもがおひとりさまの最期を考えなければならなくなった時代だと思います。ひとり暮らしの高齢者は増えていますし、夫婦で暮らしている人でも、いずれ相手に先立たれるからです。

 多くのお年寄りは、自分の家が大好きです。家が好きとは、家族と一緒にいたいという意味とは限りません。誰にも遠慮がいらないから、できることなら最期まで家で暮らしたいと思っている。「独居は不幸」という固定観念は正しくありません。

 それなのに、家族の意思で施設や病院に入れられてしまう。子どもは「心配だから」と言い、「年寄りを放っておくなんて」と周りも圧力をかける。人生の最期をどこで過ごしたいかという本人の意思決定を支える仕組みが必要です。

  「在宅ひとり死」へ備え

 10年以上前から、現場を見ていますが、ひとりで自宅で死ぬことは、必ずしも、「孤独死」ではありません。そもそも、「独居=孤立」という考え方は誤りです。介護保険制度を利用すれば、ケアマネジャーが付き、ホームヘルパーが入ったり、デイサービスに通ったりして、人の目が入ります。

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医療と介護連携に課題

 介護認定を受けている高齢者は、医師の指示があれば、健康管理のために、介護保険を使って、訪問看護などを利用できる。

 しかし、ケアマネジャーがつくる介護計画には在宅医療サービスが盛り込まれない傾向がある。例えば、訪問看護を受けている人は、介護保険を利用している人の1割程度にとどまる。

 医療と介護の連携についての著書がある東京都西東京市の在宅療養連携支援センター「にしのわ」の高岡里佳センター長は「点滴などすぐに医療的な処置が必要でないと、なかなか在宅医療の利用に結びつかない。ケアマネジャーの中には、医療との連携に苦手意識をもつ人も多い」と指摘する。

 さらに、24時間対応をうたいながら、夜間に連絡すると「救急車を呼んで」と断る事業者もある。在宅医療に熱心な医師や訪問看護ステーションが見つからない地域もあり、体制の整備が課題になっている。

 ◎QOD=Quality of Death(Dying) 「死の質」の意味。

 (大広悠子)

<次回に続く>

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[QOD 生と死を問う]ひとりの最期(上)「在宅」24時間支える

訪問看護や介護活用

 身寄りのない人だけでなく、配偶者との死別や離婚などによって、誰もが高齢期にひとり暮らしになる可能性がある。介護が必要になっても、住み慣れた場所でひとりで最期を迎えることができるのか。そのためにはどのような備えが必要なのか。質の高い死(Quality of Death)とは何かを探るシリーズの第8部は「ひとりの最期」をテーマに考える。

 熊本市内の市街地の一軒家で一人で暮らす女性(90)は、左足に転移したがんの影響で歩行が不自由だ。治療法はないと言われ、高血圧や心臓の持病もある。横になって過ごす日も多い。

 約2年前、ひとり暮らしを心配した横浜市の長女夫婦の自宅に同居したこともあったが、「家に帰りたい」と何度も訴えて、間もなく熊本に戻った。女性の長女(68)は複雑な思いを話す。「方言で話せる知り合いもおらず、慣れない生活をさせることになる。

治らないなら、できるだけ長く望みをかなえたいと考えた」女性は現在、ホームヘルパーや看護師、医師、薬剤師らの訪問を受けて生活し、大好きな相撲やサッカーをテレビで観戦。美容師をしていたため、数日に1度、散歩すれば、かつてのお客さんに会うこともあり、それが楽しみだと笑う。

 訪問看護師らからは「体調がおかしいと思ったらいつでも連絡してください」と、24時間対応する携帯番号を渡されており、家の中のあちこちに大きな字で番号が書いてある。

 さらに、普段の状態をよく知る在宅医らの連絡先が分かる書類を入れた筒を冷蔵庫に入れ、そのことが分かるよう玄関ドアの内側に貼り紙をしている。たとえ意識がない状態で見つかったとしても、在宅医らに連絡してもらえるようにするためだ。

 女性の介護計画を作った「ファーマダイワ」(熊本市)のケアマネジャー、八木 浩嗣こうじ さん(40)は「 看取みと りまで対応できる在宅医療があり、本人の意思がはっきりしていたので、体制を整えやすかった」と話す。女性は「自由がなくなるから、施設に入るつもりはなかです。やっぱり最期まで家がよか」とうれしそうに話す。

 「『最期まで自宅で過ごしたい』と望むなら、自宅を訪れてくれる医師や看護師の存在が重要です」。日本訪問看護財団(東京)の佐藤美穂子常務理事は話す。

 看護師らが定期的に訪問し、血圧や体温、受け答えの仕方など、普段の状態を知っていれば、持病の悪化を防いだり、突然倒れることを避けられたりするからだという。

 東京都北区のあすか山訪問看護ステーションでは、看護師が定期訪問の際に80歳代の女性の顔のむくみに気づくなど、異変を感じて医師に連絡、医師の指示で薬を飲むことにした。本人は「何ともない」と首をかしげていたが、放置すれば、心不全などで倒れかねない状態だったという。

 同ステーションの田中道子所長は強調する。「具合が悪くなってから病院に行くのでは遅い。定期的に在宅医療を活用すれば、ひとり暮らしでも自宅での看取りは、決して難しいことではない」

  <在宅医療>  医師や歯科医師が時間を決めて、患者の家に出向く「訪問診療」や、病状の悪化などに応じて緊急に訪れる「往診」、定期的に看護師が来て状態をみる「訪問看護」などがある。国は、在宅医療を充実させて、自宅で最期まで生活できるよう、24時間体制で患者に対応できる事業者への報酬を手厚くしている。 

<次回に続く>


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