厚労省が検討する自立と判断するための評価基準作り
安倍政権の中でも、自立支援介護を採り入れる声は強く、昨年11月に開かれた国の「未来投資会議」で前向きな議論が展開された。安倍首相自身が介護制度の「パラダイム転換を起こす。介護が要らない状態まで回復を目指す」と発破をかけ、自立支援の効果を反映した体系への見直しを迫った。
今春成立した改正介護保険法「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」でも、「自立支援等の施策」として、市町村の取り組むべき施策に含まれた。
厚労省が目下検討しているのは、自立と判断するための評価基準作りだ。要介護度の改善だけでなく、利用者ニーズの満足度など他の指標をどのように盛り込むかだ。今のところ対象者は要介護3以下の中軽度者となりそうだ。
そして問題なのは、自立支援に消極的な事業者への報酬引き下げ、ディスインセンティブ・プランである。その評価基準も模索中だ。
そもそも介護サービスを利用するのは老衰による心身の機能低下を抱えた高齢者である。老衰は日増しに進み、死に至るのは大自然の摂理であり、生物はそのような生理で地上に存在している。
どのように上等のケアを提供しても、老衰は誰にでも平等に訪れる。介護保険法第1条では「自立した日常生活を営むことができる」ことを法の目的としているが、その直前に「その有する能力に応じ」と記されている。ここが重要だ。
自立支援介護を徹底すれば、だれでも介護保険を「卒業」できるものではない。「有する能力」は加齢とともに低くなる。低くなった能力を補うのが介護保険サービスである。つまり「介護保険サービスを使いながら、自立した日常生活を営みましょう」というのが正しい理解だろう。
高齢者の要介護度が軽くならないのは、死に向かっているから当然ということが多い。それを「自立支援に消極的」と判断されてはたまらない。栄養分や水分、運動を無理矢理に提供するのは、決して自立支援介護とは言えない。虐待につながりかねない。
<次回に続く>