医療費抑制が焦点
生活保護は、収入が国の定めた最低生活水準に満たない場合に不足分を受給できる仕組みだ。世帯構成に応じて生活費や住宅費などが支給され、医療や介護は無料で受けられる。
厚労省によると、生活保護を受ける世帯数はバブル崩壊以降、一貫して増加を続け、この10年だけで1・5倍に増えた。8月時点で163万3541世帯に達し、過去最多を更新し続けている。
増加の主な要因は高齢化だ。65歳以上の高齢者の世帯の伸びが大きく、2016年度に初めて過半数を占めた。高齢者世帯の中では単身者が9割だ。支え合う家族がなく、低年金や無年金のため、生活保護に頼らざるを得ない実態がある。
これに伴い生活保護費も増え続け、今年度予算では3・8兆円。国が4分の3、自治体が4分の1を負担するため、国・地方双方の財政に影響する。
厚労省は景気動向の変化に合わせて5年ごとに受給水準を見直す。来年度が見直し時期に当たり、厚労省が制度全体の見直しも併せて検討している。焦点は保護費の半分を占める医療費の扱いだ。
厚労省の調査では、同じ病気で月15日以上の通院治療を続ける「頻回受診」は14年度に約1万5000人に上る。このうち約3800人について「医学的に過剰な受診」と判断し、受診を控えるよう指導した。
自己負担がないため安易に通院しているのではないかとの見方がある。厚労省は、医学的な必要性のない診察を受けた受給者に自己負担を求めることも含め見直しを検討している。約200万人の受給者全体からみれば一握りだが、厳しい姿勢を示すことで安易な受診を減らす狙いだ。
ただし、病気なのに受診を控えれば病状が悪化したり、命にかかわったりする恐れもある。厚労省幹部は「やり方は慎重に考えないといけない」と話す。