区分支給限度基準額の中で、利用者の公平性も勘案
23日の介護給付費分科会では、「区分支給限度基準額」についても議論が行われました。
在宅の要介護者では、介護サービスの濫用を防ぐことなどを目的に、要介護度別に「暦月1か月当たりに利用可能な介護保険サービス量の上限」が設定されています。一方で上限を超えた介護サービスを求める利用者には、超過分を全額自己負担で利用できる「混合介護」が認められています。
ところで、訪問介護などでは、事業所と同一敷地内・隣接敷地内にある建物(有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など)に居住する利用者では、過度なサービス提供を防止するために「報酬を減算する」仕組みがあります。しかし、現在は区分支給限度基準額の中では「減算された報酬」で費用を算定しているため、同一敷地などの建物に居住する人では、結果として多数回の訪問系サービス受給が可能になっているのです。
例えば、同一敷地内などの建物の訪問介護を行う場合には10%報酬が減額されます。区分支給限度基準額の中でも10%減額された報酬をもとに「上限に達していないか」を計算するので、同一敷地内などの建物居住者では、そうでない人に比べて、制度上「10%多く、訪問介護などを受けられる」のです。
鈴木老人保健課長はこうした不公平を是正する必要があるのではないかと提案。多くの委員も不公平は好ましくないため「区分支給限度基準額に係る費用の算定においては、減額前の報酬で計算すべき」との見解を示しています。
ただし、小原秀和委員(日本介護支援専門員協会副会長)は「重度の在宅要介護者では、多数回のサービスが必要となる。要介護度など、利用者の状況を見たきめ細かな対応が必要ではないか」と注文を付けています。
なお、通所系サービスでも同一敷地内などの建物居住者では報酬の減額が行われますが、これは「送迎などを行わない」というコスト減に鑑みたもので、厚労省老健局老人保健課の担当者は「これを区分支給限度基準額の中で勘案するのは、かえって不公平を生むのではないか」との考えを述べています。上記の見直しは「訪問系サービス」を念頭に検討されることになりそうです。
介護給付費分科会では、2018年度介護報酬改定に向けた第1ラウンド議論を今回で終えています。次回・次々回に関係団体からヒアリングを行い、その後、第2ラウンドの具体的な議論に入る見込みです。