無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

以前から注目をされ、既に全国で導入がなされている、認知症の人の尊厳を大切にするフランス生まれのコミュニケーション技術「ユマニチュード」と呼ばれる手法が注目を浴びています。介護をするご家族や現場のスタッフにもこの手法が普及されることが期待されます。佐賀からその内容について報告されていますのでご紹介します。介護に携わる皆様の負担軽減になればと思いますし、この手法を身に着けることで、施設スタッフの介護観が良い方向に変わってくれることを
期待します。
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介護家族のストレス軽減

佐賀新聞2017年09月17日        

介護家族のストレス軽減
介護家族のストレス軽減
介護家族のストレス軽減


 認知症の人の尊厳を大切にするフランス生まれのコミュニケーション技術が、介護者のストレス軽減にも効果があるとして、注目を集めている。介護する家族だけでなく、施設職員の職場の人間関係改善に役立つといった声も。対人関係の「技術」として身に付けられるだけに、応用範囲は広そうだ。

 「ユマニチュード」と呼ばれるこの手法は、2012年ごろから日本でも導入され始めた。「視線を合わせ続ける」「穏やかに話し掛ける」「腕や足をつかまない」などを組み合わせ、認知症の人と信頼関係を築くのが特徴。寝たきりを防ぐため、立つ機会を増やす支援をする介護のプロ向けに開発されたが、介護者の負担軽減にもなるといった指摘があった。

 そこで、東京医療センターの本田美和子医師らが、16年度に福岡市で認知症高齢者を自宅で介護する148人を対象に調査。2時間の研修後も習った内容を実践できるよう「部屋に入る時はノックして知らせる」といった具体的な助言を書いたはがきを約3カ月、毎週送った。

 その上で研修前と後の数値化した介護負担感の変化を調べると、ストレスが改善。介護される側の暴言や徘徊も減った。

 参加した下島康則さん(72)は妻(66)に優しく話し続けながら、わずかな反応にも気を付けていると、身を委ねてくれるようになった。「私もうれしいし、気持ちが軽くなった」

 認知症の義母を介護する福祉団体職員の山本誠さん(49)も効果を実感する一人。毎朝、玄関で義母の手を握り、目を見ながら「お留守番をお願いしますね」と笑顔で声を掛けた。すると義母は落ち着き、言い争いが多かった家族の会話が穏やかになった。

 一方、病院や介護施設の職員からも「自身の行動や周囲との関係が変わった」などの声が上がる

 ユマニチュードのインストラクターを務める看護師、石川咲希さん(28)は、以前は人付き合いが苦手だったが、いつの間にか同僚とおしゃべりを楽しむようになり、仕事もやりやすくなった。「技術として身に付いたので、無理なく自分を変えられた」と実感する。

 横浜市の特別養護老人ホーム「緑の郷」ではケアを嫌がる90代の男性に半年間、ユマニチュードを取り入れたところ、職員が自主的に利用者のレクリエーションや歩行練習に取り組むことが増えた。担当者は「入所者と向き合おうとすることで、モチベーションが上がったのでは」と分析する。

 職場の人間関係に詳しい社会保険労務士で「メンタルサポートろうむ」(宇都宮市)代表の李怜香さんは「ユマニチュードは相手の人格を尊重することが基本なので、どんな職場でも役立つ」と指摘する

「『触れる』のはセクハラと取られる恐れがあるため勧められないが『見る』『話す』技法は、互いが前向きな言動に変わるきっかけになる。パワハラ対策としても有効です」。

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<前回に続く>
ただ単なる認知症の高齢者が働くレストランではありませんね。随所に工夫がなされ、特にそのデザインにこだわったやり方など、大いに参考になります。今後、これらのノウハウが全国に広がっていく可能性を感じます。
次はカフェですね。色々な業態に広がっていく予感がします。〈コメント)
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認知症を抱える人が安心して働ける仕組みとは

 冒頭ご紹介したように、このお店では、認知症を抱える人がウエイターとして働いています。席への誘導や注文取りはもちろん、料理の配膳やお皿の片付けも行います。もしかしたら、「認知症を抱える人に、そんなことをさせたら危ないのでは?」と思ってしまう人もいるかもしれません。

 ただ実際にお店に行ってみて、そこには非常にこまやかな気遣いがされていることがわかりました。ホールには、ウエイターをしている方を普段から知っている人(福祉施設の職員さんなど)が常駐しており、困ったことや危険につながることがないか目を配っています。また、注文と違ったメニューが届いても大丈夫なように、お客さんには来店前に、アレルギーのある食品があるかどうかを確認しています 。

 もちろん、そもそも「間違う」ことを受け入れ、楽しむために来店しているというコンセプトがあるわけですが、認知症を抱える人が安心して働けるためにも「間違ってはいけない」ポイントはきちんとサポートする仕組みを作る、そんな運営者側の意図を感じました。

安心して働ける「環境」があれば、認知症を抱えていても活躍できる
安心して働ける「環境」があれば、認知症を抱えていても活躍できる

 そしてもうひとつ私が感じたポイントは、ウエイターやスタッフの衣装からお店の内装、さらには食器やマグカップにいたるまで統一したデザインがあり、「あたたかで、ワクワクできる」雰囲気が作られていること

内装や食器などのデザインは統一されている
内装や食器などのデザインは統一されている

 お客の側からすると、こうした環境があることで「自分も参加者のひとり」という一体感を得られ、よりウエイターさんに声をかけたり、手助けをしてみたりしやすくなります。また働く側からしても、認知症を抱えていようがいまいが、お洒落でワクワクできる環境って大事ですよね。

 これは個人的な意見ですが、「福祉」という言葉がつくと、ついつい無機的だったり、逆に過剰に親しみをもたせようとするようなデザインが選ばれる傾向があるように思います(個人的な意見ですよ!)。

 ただ今回の体験を経て、「福祉」というカテゴリーに入る取り組みであるからこそ、デザインの力にもっともっと注目すべきではないのか、と感じました。使いやすさだけではなく、あたたかさとか、ワクワクとか、そういう要素が入ってくることで、これまでになかった新しい可能性が開けるように感じます。

注文をまちがえる料理店 今後の展開は

 注文をまちがえる料理店は、9月18日まで東京・六本木でオープンしています。昨日確認したところ、ほとんどの席はすでに予約で埋まっているということですが、若干ですが当日のお席もあるようです。くわしくは運営事務局のフェイスブックページをご覧ください。ただとても人気で、すぐに売り切れてしまうそうです。

 なんだ、ざんねん・・・、と思ったかたもいらっしゃるかもしれませんが、同様の取り組みは今後も続いていくようです。運営事務局のもとには各地から実施を希望する問い合わせが相次いでいるとのことで、今回のオープンによって蓄積されたノウハウや、食器やエプロンなどの資材を提供することで、全国にこの取り組みを広げていきたいと考えているとのことです。

 さっそく今月24日には、東京・町田市で開かれる「RUN伴まちだ2017」で、認知症を抱える人による「注文をまちがえるカフェ」の出店が予定されています。運営事務局によれば、こちらはレストラン形式ではなくテントのような形で出店するので、お席にも余裕があるとのこと。

 あたたかでワクワクできる空間で、認知症を抱える人も、そうでない人も安心して触れ合える。そんな普段とはちょっと違う時間を過ごせる場を、よかったら体験してみてください。

【※】筆者は今回の記事の執筆にあたり、運営事務局より一切の利益を得ていません。またこの会は完全にボランティアにより運営され、会場のレンタル費や食材の購入などの費用以外の利益は得ていないことを確認しています。

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注文を間違える料理店の続編です。本日もテレビで報道をされていました。皆さんの関心が高くなっていますが、その仕組みについて、医療ジャーナリストの市川衛氏がレポートされています。今後の全国への広がりが期待されます。
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話題の「注文をまちがえる料理店」一般公開!笑顔あふれる空間を支える仕組みとは
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