無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2010年10月

<在宅サービスの充実を急げ>
前回に続き、WEDGE11月号よりご紹介します。今回は、それでも在宅は可能各地の先駆者たちの紹介です。

今回は、やはり在宅で暮らしたいという高齢者のニーズに応えて、在宅を支える医療、患者、介護の分野で先駆者として取り組んでいる方々のご紹介です。

①おやま城北クリニック(栃木県小山市)の事例
  1992年より、地域の診療所や歯科医院などと提携・協力をして「在
   宅で最期を迎えたい」という患者・家族の希望を様々な職種と連携して
   サポートしている。現在約300人の患者を月に2回以上診断し、これ
   まで350人を看取った。

②東京都新宿区白十字訪問看護ステーションの事例
  治す医療から人生の終末期を支える医療へのパラダイムシフトが必
  要」と語る  秋山所長の理念に共鳴した16人の訪問看護師ととも
  に、月約900件の訪問看護を行いながら、年間約60人を看取る。

③新潟県長岡市の高齢者総合ケアセンターこぶし園
  特養などの施設を増やすべきとの議論もあるが、「高齢者を隔離して
  収容する大規模特養のあり方は福祉本来の姿ではない」と考える小
  山園長は、市内各地域に小規模特養を作り、人里離れた丘の上にあ
  るこぶし園の入居者を住み慣れた地域に帰していっている。更に、
  「出来る限り現在の生活を継続したいという高齢者自身のニーズと、
  心身・費用とも過重な負担を強いられる在宅介護者の双方を支える」
  という考えから、全国に先駆けて、小規模多機能居宅介護を始めた。
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少しづつではありますが、在宅で暮らしたいという方々のニーズに応えるべく取り組みがなされてきてはいますが、各地の先駆者に共通していることは、志の高さと多様な職種との連携、長年の蓄積による利用者の安心感だと述べております。

こうしたレベルに到達するには、時間もかかれば、お金もかかる。新規参入者にはハードルが高いのも事実といわれていますが、我々はこれは一つのビジネスモデルの問題と捕えます。

在宅という発想を捨てずに、医療、介護、看護を一つにしていかに終末期までのケアができる体制を整えるか。その為のプラットフォームを作ること、我々はこの問題(ビジネスモデル開発に真正面から取り組んで参りたいと思います。
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前々回に続き、WEDGE11月号から特出すべき内容を抜粋しておきます。

<特養待機待42万人をどう見るか?>その内容とコメント

在宅には魅力があり、その支援に力を尽くす人が増えているが、現状では老後を在宅で暮らすのは簡単ではない。

人生の最後を自宅で過ごしたい人の割合は、各種調査で6~8割に達し、特別養護老人ホームを希望する人はそう多くない。(日本経済新聞電子版の調査では4.5%)。しかし、実際には、入居待機者が42万人も存在するほど、人気がある。

「特養はもともと、在宅生活が困難になった高齢者を、市町村行政が”措置入所”させるための施設。42万人は、本人希望ではなく、多くが家族による入所申し込みの集計だ。家族など周囲の人が自分だけでは介護できず特養に入れたがっていいるのが実態」。

以前にもご紹介しました新潟県長岡市で高齢者総合ケアセンターこぶし園を運営する小山剛施設長は言う。

特養待機の多さは家族介護の過酷さの現れだ。「皆はじめは在宅で頑張ろうとするが、半年過ぎると疲れてくる。まずショートステイを利用し、そのうち施設入所を望むようになる」

終の棲家の特養、急性期入院の後に長期療養するための療養病床。
病院と在宅の中間リハビリ施設としての老人保健施設(老健)。介護保険導入前からの施設はいまだ主役。

国は、「施設から在宅へ」、「社会的入院の削減」という大方針を掲げるが、在宅を支える医療、看護、介護のサポートがいまだ十分ではないため、家族が不安に駆られ「特養待機待」に流れているのが現状だ。
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確かにそうなのですが、この待機者で重要なのは、家族が不安にかられ、特養にというだけではなく、その入居金額も大きく影響していると思われます。皆さんはどうしても、この点についての訴求が弱いように思います。

誰しもが在宅で面倒を見てもらえる有料老人ホーム等の方が良いに決まっています。しかし、そこに入れるだけのお金がない方々のいかに多いことでしょう。特養の待機者にはここの問題も大変大きな要因になっているのではないでしょうか。
<次回に続く>
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前回、福岡市の医療法人の高齢者住宅への取り組みが進んでいる状況を報告しましたが、再度詳細を調べたデータがまとまりましたので、改めて御報告を致します。

福岡市(7区)限定:医療法人経営有料老人ホーム数調査
 
■ 福岡市内の有料老人ホーム総数は70施設。
  
■ うち、医療法人が事業主体の施設は、判明している数だけで25施設
   (住宅型6、介護付19)に上る。
  
■ 市内の有料老人ホームのうち、35.7%が医療法人の経営する施設で
    あり、ベッド数は1,861床。 
  
■ 福岡市の要介護者は44,752名。※8月現在
  
■ その他、医療法人が運営している施設数及びベッド数(特養・老健・
    GH)は13施設 876床。

福岡市内の有料老人ホームの35.7%を既に医療法人が運営をしているのが伺えます。多様な住まいのあり方を求めて、医療型、介護型、自立型のバランスの取れたインフラを整備すべきところ、医療が突出しているのではないかと思われます。今後どのようにそのバランスを再構築するのかが課題となるでしょう。
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今月号のWEDGEに表題の特別レポートが掲載されています。考えさせられる内容ですので、少しご紹介したいと思います。

爆発的な高齢化が進む大都市圏。団塊の世代が75歳を超える2025年、郊外には後期高齢者が4倍近くまで増える市町村もある。高齢者の所在不明問題に注目が集まったが、インフラ整備を急がなければ、孤独死は日常茶飯事になるかもしれない。

多くの国民が抱く「住み慣れた地域、自宅で老後を過ごす」という希望を満たすには、在宅介護を手厚く支える仕組みが必要だ。

私たちがまずやらなければならないのは、元気なうちから「老い」「死」「終末期の医療」について学び、意思決定していくことだ。

と冒頭の記事に書かれています。

51年に82%を占めた自宅死は一直線に減少し、09年では12%、85%が医療機関で死亡する。老人ホームなどの施設死もたった4%だ。やはり大半の日本人は病院で死んで、裏口からひっそりと運び出されるのである、と述べられています。

いつの時代からこのように人間の死が裏の世界のように扱われるようになったのでしょうか。家族に看取られ、家族と最後の別れを行う光景が見れなくなったのはいつの時代からでしょうか。

人間の死に正面から向かい合うのではなく、医療任せで、あたかも分業のように扱われてしまう、そのような環境を変えたいと思います。少なくとも、自分の慣れ親しんだ環境で最期を看取りたい。そのためには、在宅サービスの充実を急がねばなりません。家族により多くを期待するのは今の環境からして無理があるのはよくわかります。それゆえに、高齢者住宅にてその環境の幾分でも補完をすることができればと思います。誰かがどこかで、その仕組みを作らねば大変なことになってしまいます。

今月号について何回かに分けて紹介をしておきたいと思います。
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本日の日経に、厚生労働省の検討会が26日、24時間必要なときに使える訪問介護サービスの骨格を盛り込んだ中間報告をまとめたとの記事が出ておりました。下記の内容ついて28日に開く社会保障審議会(厚労相の諮問機関)に報告をするそうです。

①事業所に介護職員と看護職員を配置するなど、介護と医療が連携できる体制の検討を求めた。
②利用者の負担を軽減するため、定額で一定量のサービスを使える仕組みの導入も打ち出した。

その骨格によると、次のように記されております。

①24時間訪問サービスは時間帯を問わず必要なときに、必要な訪問サービスを提供する仕組み
②1日複数回の定期訪問を基本に、利用者が随時必要な時にサービスを使えるようにする
③サービスを提供する職員配置のあり方については、職員が24時間訪問介護事業所と施設などの兼務できる仕組みの検討を促した。

特に注目をしたいのは③の兼務できる仕組みというところです。現在、行政によっては兼務を認めない方向に指導をし始めているところがあります。この内容に極めて重要な関心をもってみております。兼務の体制をつくることで、少しでも効率のよい介護を目指したい我々にとって、このことが福音にならんことを祈るのみです。その内容が待ち遠しいです。極めて現実的な内容だと思います。
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