無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
豊かな高齢者社会の構築に向けて、日々尽きることの無い気付き、出会いを綴って参ります。

2011年01月

1月26日の日経新聞「経済教室」に標記の記事が載っていました。今の高齢者住宅事業にとって全くこの通りだと思います。高齢者住宅経営者連絡協議会の提言報告には次のように掲載されています。

「主な高齢者住宅の新規開設戸(床)数の推移をみると、包括ケアが行われる高齢者住宅(介護保険3施設、認知症高齢者グループホーム、介護付有料老人ホーム)の新規開設数は2005年がピークで、約8万戸(床)が供給されたが、2006年以降供給量は年々減少しており、2009年は2.7万戸(床)の開設にとどまった。介護型療養病床(介護療養型医療施設)の廃止が1万床あったため、2009年の実質的な新規開設数は1.7万戸(床)しかなかった計算になり、これは2005年の約5分の1のボリュームに過ぎない
高齢者の数は年々増加し、その受け皿が当然増加してよいはずなのに、逆に減少しているという、市場原理に逆行することが起きています。何故でしょか?

標記の新聞記事の中にはこのように書かれています。

「政府の規制緩和の遅れが日本の成長をさらに停滞させた。なかでも非製造業では、規制緩和が比較的進んだ分野は、生産性成長性も比較的高かった。問題は規制緩和の進展が非常に遅かったことである。90年代後半から非製造業での規制はむしろ増加傾向に転じた。」

国の財政にかかわる問題とだけでは片づけることのできない内容を含んでいるように思います。現在、様々な医療と介護事業の改革が行われようとしていますが、どれも中途半端な感じは否めません。その根本的な問題にメスを入れねばならないと思うのです。記事の中に又次のようにも書かれています。

「日本の趨勢成長率は2000年の前半に下げ止まったようである。それまではイタリア並みに落ち続けていた成長率が反転し始めたかのように見える。この時期は小泉政権の初期と大体一致する。小泉政権は過去20年間の他の政権に比べて、改革への意欲と実行力において卓越していた。そこで小泉改革の検証は今後の日本経済の成長を考えるうえで重要な作業である」

まさに高齢者住宅事業にも同じ傾向が見て取れます。2000年の前半までの勢いとその後の5年間の停滞の真の原因を究明しなければなりません。その上で、増え続ける高齢者の問題を避けて通るのではなく、目標を掲げて改革断行を行ってゆかねばなりません。

老いの未来図:介護・医療の現場で 「医療難民」も流入 /千葉
毎日新聞 1月24日(月)10時47分配信

毎日新聞に注目すべき記事が載っていましたので全文を掲載します。医療難民の受け入れとして医療型の高齢者住宅の拡充が急がれます。特に首都圏での受け入れ体制の整備は緊急を要すると言ってよいでしょう。
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 ◇東京の区、入院要請 県内の病院が受け入れ

 長期の療養治療が必要な患者を受け入れる療養病床を持つ県内の病院が、東京都内の自治体の要請で高齢者を入院させるケースがあることが、医療関係者の証言で分かった。この中には生活保護受給者も含まれているという。都内で介護サービスを受けられない「介護難民」だけでなく、受け入れる病院が見つからない高齢の「医療難民」も、県境を越えて流入している実態が浮かんだ。【森有正】

 ◇高齢患者、行き場なく
 「療養病床」は、長期にわたる療養治療を必要とする主に高齢の慢性疾患患者や要介護認定者を受け入れるベッド。速やかな治療を要する急性期患者などを受け入れる「一般病床」などと区別され、配置すべき医師数や診療報酬の算定方法も異なっている。
 取材に応じた40床前後の療養病床を持つ県内の都市部の病院は、「地域密着の医療」を経営方針としている。だが病院の幹部によると、江戸川、江東、葛飾、墨田区など県に近い東京都の特別区から高齢患者の受け入れを要請され、最大で病床の約2割(8人)を受け入れている。自治体以外にも、都内の病院や福祉関係者からも受け入れを要請されるという。

 要請の際には、区の担当職員などから「先生のところで受けてくださるという話だが、お願いできないか」などと電話で頼まれ、病院側は「ベッドに空きがあるので、1人なら受け入れる」などと応じる。要請される患者には、生活保護受給者も少なくないという。
 療養病床を持つ病院は全国的に少なく、特に都内など大都市部で足りていない現状を踏まえ、病院幹部は「うちのような(都内から受け入れを要請される)療養病院は県内に多いはずだ」と話す。

 病院長も、行き場のない東京の高齢患者が県内に流入し、病院が受け皿となっている実態を認めた上で、その背景について「都内の病院はそれだけコストがかかる。医療が必要な高齢者を誰かが診なければならない。療養病床は診療報酬が低く厳しい。昔は『医は仁術』と言ったが、今は『医は算術』だ。医療制度が悪く、今はその『算術』すら難しい」と語った。

 この病院の療養病床は現在ほぼ満杯で、大部分が高齢者。脳内出血による半身不随などで寝たきりとなった患者が多く、現時点で9年間入院している患者もいるという。
 入院患者のうち生活保護受給者は8人ほどで、身寄りがない場合が多く、その際には入院治療費の支払いや死亡時の対応は福祉事務所が行う。また、生活保護をもらっておらず家族がいる患者でも、家族がほとんど見舞いに来ず、病院に任せきりとなっているケースも少なくないという。

 ◇療養病床の争奪・玉突きも
 療養病床の現状について、県北東部の病院関係者は「入院治療を必要とする高齢者の行き場がない現状が続いている。うちの療養病床でも、なるべく近くに住む患者を受け入れたいが、空きがない場合には近県の病院にお願いしなければならない」と話す。
 また、身寄りのない高齢者の生活支援を行う県北西部のNPO法人の代表は「以前、医療が必要なお年寄りを受け入れてくれる県内の病院を探し、見つからないことが何度かあった。その時は茨城県内の療養型の病院にお願いした。しかし、遠方でスタッフもなかなか見舞いに行けなかった」と、厳しい現状を打ち明けた。高齢者の増加に伴い、限られた療養病床の争奪や“玉突き”が起きていることをうかがわせる。

 療養病床は高齢者の長期療養のほか、脳疾患の後遺症を抱える患者にリハビリ(機能回復訓練)を施したり、地域で在宅介護を受ける高齢者の緊急受け入れ先となるなど、多様な役割を負う。県医療整備課によると県内の病院(診療所を除く)の療養病床数は05年には1万323床だったが、昨年は9902床で減少傾向にある。

 療養病床は、医療保険を使って治療を行う「医療療養病床」と、介護保険を使って介護サービスを行う「介護療養病床」に大別される。医療費や介護保険給付の膨張を踏まえて国は当初、2012年3月末までに病院や診療所の介護療養病床を全廃して介護老人保健施設などに移し、医療療養病床も減らす方針だった。これを受けて県も12年度療養病床を7940床まで減らす案をまとめていた。
 だが、長妻昭・前厚生労働相は昨年9月、他施設への転換が進んでいないことなどを理由に「廃止は困難」と表明。療養病床の扱いは宙に浮いた状態だ。【森有正】

昨日の朝日新聞に「きずなの会」の記事が載っていました。名古屋で大変お世話になりました。名古屋では家族の代わりに、NPOや業者が支えるサービスが広がっています。

身元保証から生活援助、お葬式まで。血縁や地縁に頼れぬ「孤独」の国で新たな命綱としてその活動が注目されています。「きずなの会」本部は名古屋市内のオフィスビルにあります。記事の内容は次のように伝えています。
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かすかに線香の香りが漂う。奥にある木製の棚に、会員の遺骨を納めた15センチ大の骨壺が並ぶ。その数、58柱。大晦日に亡くなった男性の遺骨も今月5日、この棚に安置された。年2回の納骨式で永代供養墓に移す。

「家族の代わりに生涯、あなたを支えます」というのが会の看板だ。費用は180万円。第三者の弁護士法人に一括して預け、利用のたびに精算する。通院介助なら1時間2100円が引き落とされる。会員は全国に2400人。昨年だけで600人増えた。「40代で契約できますか」「独り身で
不安」。相談は毎月200件に達する。支援員は全国に約40人おられます。

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きずなの会以外にも同じく名古屋市の鳴子団地の一角にあるNPO法人「権利擁護支援ぷらっとほーむ」のことも載っています。

老人ホームで暮らす会員から預かった私物を保管するとか、身元引受人として、金銭管理や役所での手続きなどの委託契約を結んでいる。

理事の篠田忠昭さん(80)が創立メンバー。原点には、民生委員として地域を支えた30年の経験がある。保証を頼まれる。通帳を預かってと、頼まれる。孤独死も2人経験した。一人暮らしの高齢者を同時に24人、担当した時期もあり、「個人でハンコをついていたら責任を負いきれない」と痛感し、会の設立を呼び掛けたということです。
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このような活動がもっと広がってくることを期待しております。一人暮らしの高齢者が増え、無縁社会の広がりの中で、孤独な高齢者を支える新たな社会システムが求められています。

病院周辺でケア付き住宅事業(長野・佐久市で13ホーム運営)

先日高齢者住宅新聞に表記の記事が掲載されていました。地域の医療と介護が融合した新しいビジネスモデルができつつあります。ご紹介します。
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恵仁会(長野県佐久市)は創設70年以上の医療法人。佐久市を中心に地域医療を手掛けてきたが、平成10年よりケア付き住宅事業を展開。現在までに8カ所で自立から重度の要介護者まで対応したホームを運営している。医療法人を核に営利会社、社会福祉法人で事業展開するグループの取り組みを、ケア付き住宅事業を中心に紹介する。

 社会医療法人恵仁会の中核をなす「くろさわ病院」は、佐久市の地域医療に永年携わってきた医療機関。現在一般病床43床、医療療養型病床20床、介護療養型病床20床を運営している。

 ケア付き住宅はその病院のある中込エリアを中心に、北部の長土呂、塚原の3エリアで手掛けている。運営をグループの「けいじん」が担う。

 「当時、運営していた入居系施設は老人保健施設だけ。病院や老健を退院・退所後、様々な事情で自宅に戻れない方がたくさんいたのが事業を始めたきっかけ」(黒澤一也理事長)。

 住み慣れた地域で在宅と同じような生活ができる場所としてケア付き住宅を提供。まず平成10年に病院から徒歩圏内の中込に「シルバーハウスひだまり」を新築で開設。以後、病院の周辺にほぼ毎年のペースでケアホーム(ケア付き住宅)を立ち上げる。現在8カ所で13ホーム、104室を運営している。
 ホームはすべて9人以下。小規模とした理由を黒澤理事長は「家庭的な雰囲気を出せること、老人福祉法上の届け出が必要なかったこと、投資額が少なくて済むこと」と話す。建物は新築やビル、ホテル、住宅の改修型など様々。改修型の場合、それぞれ数百万から数千万円を投じて改装した。

 現在は高齢者以外も入居するホームを除き、ほとんどを住宅型有料老人ホームとして届出、運営している。
 居宅サービスに則った介護保険サービスは、法人内の各エリアにある3カ所のヘルパーステーションの他、法人外の事業所が提供。生活支援は「けいじん」が手掛ける。医学的管理は主にグループの訪問看護ステーションなどの看護師らが実施する。

 胃ろうや寝たきり、認知症、看取りに対応。基本的に医療機関が身近にあるため、利用者・家族に安心感を与えられ、ある程度の重症者でも入居可能。ここ数年の看取りは年間3~7名ほど実施している。

 主治医は法人内が7割を占めるが、3割は法人外の医師。他院の医師が訪問診療に来ることもある。急変時に主治医のいる医療機関へ搬送することも可能。

 入居率はすべてほぼ満室の状況。平均要介護度は2・9。要介護3以上は全体の3分の2を占める。自立も5%ほど入居している。
 入居前に住んでいた場所は自宅が4割以上、法人内の病院・老健は約13%を占める。ケア付き住宅が在宅復帰の受け皿としても機能。退居後、自宅に戻る高齢者も多い。

 法人内連携会議ではすべての入居者情報を共有。必ず医師が参加し、「ケアホームでお世話可能か、医療的バックアップや介護サービスなどを十分確認してから入居の判定を行う」という。

 料金体系は様々。一戸建て、アパート、マンションなどのタイプから新築・改修まで事業形態がいろいろあるため、居室費は2万円台から8万円台まで幅がある。生活支援費3万円、食費4万2000円はほぼ共通。月額合計は9万4500~16万500円。

 平成14年からは宅老所(小規模型通所介護)の運営にも乗り出す。ケア付き住宅が病院の周辺にあるのに対し、宅老所は単独での運営が可能なため、病院から少し離れた場所に展開。認知症対応型を皮切りに、医療法人として5カ所で登録者77名が利用。グループ全体で10カ所の宅老所を運営している。

 グループの社会福祉法人恵仁福祉協会では、長野・上田市で特別養護老人ホーム「アザレアンさなだ」をはじめ、サテライト特養、デイサービス、小規模多機能型居宅介護、グループホーム、宅老所などを運営している。

 恵仁会は亜急性期から在宅まで、病院を核とした保健・医療・福祉の複合体として、小規模施設を主体に地域に根ざした事業を展開。平成21年に社会医療法人の認定を受けた。病院の他、佐久市と上田市で診療所を3カ所開設。そのうち2カ所が在宅療養支援診療所、1カ所がへき地診療所。老健施設は病院併設など2カ所運営。
 グループ全体の平成21年度売上高は約45億2000万円。中期計画で数年内にくろさわ病院の建て替えを予定している。

グループ概要

社会医療法人恵仁会
【医療】くろさわ病院(長野県佐久市)、つかばらクリニック(無床)(長野県佐久市)、さなだクリニック(有床)(長野県上田市)、菅平高原クリニック(長野県上田市)
【保健】ケイジン保健医学センター、ケイジン健康運動センター
【福祉】介護老人保健施設「安寿苑」(82床)・「シルバーポートつかばら」(70床)
その他、グループホーム、訪問看護ステーション、訪問介護、デイサービス、宅老所など

社会福祉法人恵仁福祉協会
特別養護老人ホーム、グループホーム、宅老所
その他関連会社
けいじん(ケア付き住宅運営)、メディコケイジン(福祉用品販売など)

先日ご面談をさせて頂きました一条真也氏より頂いた「老福論」(一条真也著)という本を読みました。「人は老いるほど豊かになる」というお考えを大変深い知識と直接経営される「葬祭会館」の両面から解き明かしておられます。

「老好社会」の実現と「グランド(大いなる老い)シティ」の実現というこれまでの「メディカルタウン構想」の理論的背景ともなるお考えを頂きました。ありがとうございました。

一条氏は様々な宗教論や哲学、文化論を織り交ぜて「老いる」ということについての素晴らしさを説いておられます。正に来たるべき老好社会における豊かな文化を予感させられ、大変興味深く読ませて頂きました。

高齢者事業にかかわっている皆様に是非一度読んでいただきたい本です。これだけ高齢者が増加するなかで、死というものがこれほど身近になっているということを改めて実感をさせて頂きました。

実際に経営しておられます高齢者複合施設(複合葬祭会館)を訪問させて頂き、今まで見たこともない、葬祭会館とホテル、カルチャーセンターというコンセプトに高齢者の価値観の変化を感じさせて頂きましたし、大変衝撃を受けました。

最高の「ゆとり」と「幸福」とが凝縮された大いなる人生の黄金時代、「グランドライフ」を迎えるために自分にできる最大の努力をして参りたいと思います。

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