無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2011年02月

本日は福岡で全国経営者支援連絡協議会主催のセミナーがありました。私からは2012年の医療保険と介護保険のダブル改定に伴う、医療法人の経営戦略についてお話をさせて頂きました。病院から在宅へ、医療と介護の連携といった次の世代の医療経営について提案をさせて頂きましたが、セミナー終了後の懇談会で、訪問歯科のお世話をしている方から、福岡の訪問歯科の取り組みについて聞く機会がありました。

想像以上に訪問歯科の取り組みが進んでいることに驚きました。5~6台の車を走らせ、30名からのスタッフをつかって高齢者施設等を中心に展開している訪問歯科医がいるなど、活発な展開をしているようです。彼の口から、「これからは歯科医院を開業するにも、病院を建てて新規に事業を始めるのはリスクが大きすぎる。まずは訪問歯科から初めて、資金ができてから、開業することの方がよっぽどリスクが少ない。そして、全く医院を開業しない(一応医院は最小限の投資で形ばかりの開設はするようですが)訪問歯科医院も出てきている」という話が出てきました。様子が変わってきています。

少なくとも福岡市内には10人前後の先生がそのような展開をしているらしく、徐々にエリアを広げているようです。内科医の先生が在宅療養支援診療所登録をして訪問診療をすることで、大体一人の患者当たり、月間5万円~6万円の医療報酬を算定するのに対して、訪問歯科診療所では一人当たり月間4万円~5万円は算定できているようです。歯科の月間の診療報酬が300万円といわれる中で、訪問歯科による診療報酬がもし1人4.5万円が取れるとして、小規模ローコスト型高齢者住宅eL3(16戸)が2棟あれば、32人×4.5万円で144万円となり、外来報酬の約半分をカバー出来ることになります。

これから在宅志向が強まるにつれて、口腔ケアの重要性が増してきます。できれば経管栄養等はしたくない、直接自分の口から食べ物を摂取したい、その強い思いが高齢者にはあります。
誤嚥等の問題もありますが、きちんとした口腔ケアを行うことで、できるだけ在宅での生活を維持することが望ましいと考えます。それ故に、訪問歯科診療所の位置づけが高齢者住宅において重要性が増してきております。

コンビニの1.5倍といわれる歯科の競争はますます厳しくなって参ります。訪問歯科にその活路を見だそうとするドクターも多くなってくるでしょう。いよいよ、eL3の医療のバックアップ体制において、在療診による24時間の訪問ドクターとの連携に加え、訪問歯科や訪問調剤のセットアップが重要になって参ります。今後大いに訪問ドクターとの連携を強化して参りたいと思います。
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人生の最後に、人は何を思うのだろうか。患者の苦痛を和らげる緩和医療医として1000人以上を看取った経験から「死ぬときに後悔すること25」を書いた大津秀一氏に聞いた』という記事が載っていました。是非一度、この本を読んでみたいと思います。死ぬときに後悔することが抜粋されていますので、参考までにご紹介します。

・健康を大切にしなかったこと
・自分のやりたいことをやらなかったこと
・故郷に帰らなかったこと
・仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと
・会いたい人にあっておかなかったこと
・結婚をしなかったこと
・自分の生きた証を残さなかったこと
・愛する人に「ありがとう」と伝えなかったこと

どれも身に迫る内容ですね。最後にこうも言っています。

「人生、不幸ばかりだった」と言って亡くなる高齢者がいる一方で、10代、20代でも、とても安らかな顔で「先生、幸せでした。ありがとう」と言って逝かれる方がいます。人間の底知れない強さを感じます」

どれだけ長く生きたかはどうでもいいことで、人生の質や意味に関係ない」・・・精神分析学者フランクルの言葉
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先日、ある会計事務所にて今後の会計事務所の戦略展開についてお話を伺う機会がありました。会計事務所も御多分にもれず過当競争の時代に入っております。
その中で、今後の戦略として、今回の我々の戦略商品である小規模ローコスト型高齢者住宅エルスリー(eL3)に大変関心をもって頂きました。

テーマは「ヘルスケア部門のクライアントをいかに獲得するか」ということでしょうか。どのような業界にしろ、成長分野にシフトするのは当然です。医療と介護の分野で新たな顧客を獲得するのは今後の会計事務所において重要な戦略といえます。

会計事務所の強みは、税務・会計業務を通して様々な業種とつながりをもっていることです。高度経済成長の時代には建築・不動産関係に強い会計事務所は大いに成長したかもしれません。しかし、今やこの業界に重きを置けば、産業構造の変化で大きな成長は期待できないでしょう。会計業務そのものがシュリンクしてくるのは避けて通れないと考えられます。そのように位置する業界、クライアントによって会計事務所の成長も左右されることになるでしょう。

生き残りをかけて顧客構造の変化を先取りして成長分野のクライアントの獲得をしてゆかねばなりません。会計事務所には多様な業種のクライアントがいます。そこで、例えば次のようなことが考えられるでしょう。

①建築業界のクライアントには、エルスリー(eL3)の開発を打診する
②不動産業界のクライアントには、アパート経営に代わる土地活用の手
   法について地主紹介を打診する
③医療機関のクライアントには、増患増収の事業提案としてエルスリー(e
   L3)の提案をする
④デイサービスや訪問介護事業者には、新たな戦略展開商品としてエル
   スリー(eL3)を提案する
⑤金融機関に対して新たな融資先としてクレジット力の高い医療機関や
   地主の紹介を行う
⑥エルスリー(eL3)に対して、内科、整形外科、歯科、調剤薬局等訪問
   系の医療関係者の紹介を行う

そうすることによって、
医療法人に対して、増患増収の為の提案を不動産+建築+融資をセッ 
 トでできる
・同じく医療法人に対して、増患増収の為の一環として訪問資料先として 
 高齢者住宅を紹介できる
・介護事業者に対して、不動産+建築+融資+医療をセットで提案でき
 る
・金融機関に対して、医療法人や不動産等、良質の融資先を紹介できる
 


会計事務所には税務会計を通じて、有力な顧客を選別できる強みをもっておられます。


この強みを生かして、商品力の高い商材エルスリー(eL3)を各業界にパッケージで提案することができれば大いに新たなクライアントの獲得につなげていくことができるでしょう。

先生が言われた、「会計事務所は団子をつなぐ串」といわれたのが大変印象的でした。
各業界を貫く串とという強力な武器をもっておられます。是非、今後先生方とご一緒させて頂きたいと思います。
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昨日はある地方都市の医療法人をお尋ねする機会がありました。医療が取り組む高齢者住宅の一つの事例だと思いましたので紹介をしておきたいと思います。

もともとは19床の有床クリニックですが、それと併せて16室の賃貸住宅を別法人で運営をされております。建物は新築ではありません。1階、2階がテナントフロアーであったものを別法人で借りて改修してクリニックが入り、、3階、4階が一般のワンルームマンション(会社の寮)であったものを同じく別法人が手を加えて高齢者も住める住宅にしております。

あくまでも医療と住宅は別法人にて運営をしています。別法人は賃貸住宅事業の他に、訪問介護事業所や配食事業所を併設して訪問介護や食事サービスができる体制も整えておられます。

このクリニックは末期がんの患者様の受け入れを積極的行っております。最新の医療機械も整備して治療をうけることが出来ますので多くの患者が入院を待っておられます。従って、賃貸住宅で生活しながら治療を受けている方々もおられます。そこに、別法人で訪問介護や配食サービスを行っているというビジネスモデルです。ここはあくまでも一般賃貸住宅です。このような形もあったのです。関係者の皆さんの努力には本当に頭が下がります。

院長先生はただ単に治療を受けるために待っているだけではなく、ここで生活をしている方々がもっと楽しめる住宅にしたいと考えておられます。その意味では今後本格的な医療連携型の高齢者住宅を検討されておられますが、既存物件を改築して医療が入ったこのようなモデルもあるのです。あくまでも有料老人ホームと異なりますので、サービスはそれぞれのサービス提供会社との個別契約という形をとっておられますが、不自由はないようです。

従って、低層階がテナントで上層階が賃貸住宅という建物があるとすれば、低層階には医療機関が入り、賃貸部分は高専賃や住宅型有料老人ホームとして改築する場合もあれば、従来の賃貸住宅のまま、医療支援と生活支援と住宅支援を切り離して、連携するパターンもあるのです。

より総合的なサービスを提供するとすれば、高齢者専用賃貸住宅や有料老人ホームという考えもありますが、その前段階で、連携型のものもあるのです。医療が併設されているがゆえに、それだけ個別サービスの集合体であっても十分な商品力があることを実感させて頂きました。
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明日はある…か?:消費税・考/3 給付削減いつ誰が

本日、毎日新聞に下記の記事がのっていました。どうも論調がおかしいです。介護保険はあくまでも医療費を抑えるのが目的でつくられ、そのもくろみが外れたので、給付を下げるべきであるとの論旨は実態を反映していないと言えるのではないでしょうか?

決して当初の制度設計に誤りがあったとは思えないのです。問題は、当初設計していた介護保険制度と医療保険制の両面からの改革において、特に医療制度の改革が思うようにいかなかったからではないでしょうか?そこに問題点があるように思うのです。

改革を前提として設計されたものが、改革がうまくいかない。それ故に医療給費、介護給付が増大した、それゆえに削減をせねばならないというのは、論理的におかしいです。行うべきは改革であって、それを実現しないことには対処療法的に給付額を削減したところで根本的な解決には至らないはずです。今やらねばならないのは、断固とした医療制度改革であって、そのうえでの介護保険制度の改革と消費税引き上げはセットと考えるべきではないでしょうか。

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 「必要な介護サービスまで受けられなくなる」「要介護度の低い人の早期ケアができず重度化が進む」。昨年10月28日、社会保障審議会の介護保険部会。膨らむ一方の社会保障費の抑制策として厚生労働省が示した(1)高所得者の自己負担(2)要介護度の低い高齢者の自己負担--引き上げ案に委員から反対意見が続出した。統一地方選を控えた民主党も反発、今国会に提出する介護保険法改正案には盛り込まれなかった。

 介護、年金、高齢者医療の給付は日本の社会保障給付の約7割を占める。高齢化の進展で25年度の給付総額は141兆円と10年度より4割増える一方、支える現役世代は減少の一途だ。いまは高齢者1人を現役世代3人で支えている形だが、50年代には現役1人で支えなければならなくなる。日本経団連の森田富治郎副会長(社会保障委員長)は「社会保障の持続可能性確保には20年代半ばまでに消費税を10%台後半に引き上げる必要がある。財政健全化まで見据えると20%超の財源が必要」と指摘する。

 国民の反発で腰が引けた政治家が消費税論議を避けてきた中で、00年の介護保険制度導入は「消費税に代わる新たな保険料収入の道を開く目的もあった」(90年代の大蔵事務次官経験者)。津島雄二元厚相は「長期入院する高齢者を施設、在宅介護に移し医療費を抑えようとした」と話す。だが、介護保険導入時30・1兆円だった医療費は08年度には34・8兆円に、介護費も3・6兆円から7・9兆円に膨らみ、もくろみは大きく外れた。

 厚労相、自民党税制調査会長を歴任し、菅政権の社会保障改革集中検討会議メンバーも務める柳沢伯夫・城西国際大学長は「すべての高齢者に手厚くサービスする介護制度は限界」と指摘。「韓国や中国から日本の制度を視察に来ると、『とてもじゃないが、やっていけない』と帰っていく」と話す。

 野田毅・自民党税調会長も「そもそも消費税が15%程度でなければできない社会保障制度になってしまった」と指摘する。

 「年金支給開始年齢の引き上げも考えなければいけない」。1月21日、政府の新成長戦略実現会議で与謝野馨経済財政担当相は年金給付に切り込む可能性を示唆した。

 これに対し、国民の反発を恐れる政府・与党から「先のことを議論するという必要はない」(細川律夫厚労相)などと火消し発言が相次ぎ、与謝野氏も「今回の見直しとは関係ない」と事実上発言を修正した。だが、「現役世代も含めて増税への理解を得るには、社会保障の給付抑制も必要」という本音が垣間見えた。

 ニッセイ基礎研究所の遅沢秀一氏は「消費税増税や社会保障費削減など高齢者の不利益になることを訴えては選挙に負ける。それが社会保障を膨張させる一因になっている」と指摘。「税負担の急増に一定の歯止めをかけるには、高額所得の高齢者への給付抑制などを検討すべきだ」と、社会保障を「身の丈」に合わせる必要性を強調する。

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