無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
豊かな高齢者社会の構築に向けて、日々尽きることの無い気付き、出会いを綴って参ります。

2011年02月

昨日はある地方都市の医療法人をお尋ねする機会がありました。医療が取り組む高齢者住宅の一つの事例だと思いましたので紹介をしておきたいと思います。

もともとは19床の有床クリニックですが、それと併せて16室の賃貸住宅を別法人で運営をされております。建物は新築ではありません。1階、2階がテナントフロアーであったものを別法人で借りて改修してクリニックが入り、、3階、4階が一般のワンルームマンション(会社の寮)であったものを同じく別法人が手を加えて高齢者も住める住宅にしております。

あくまでも医療と住宅は別法人にて運営をしています。別法人は賃貸住宅事業の他に、訪問介護事業所や配食事業所を併設して訪問介護や食事サービスができる体制も整えておられます。

このクリニックは末期がんの患者様の受け入れを積極的行っております。最新の医療機械も整備して治療をうけることが出来ますので多くの患者が入院を待っておられます。従って、賃貸住宅で生活しながら治療を受けている方々もおられます。そこに、別法人で訪問介護や配食サービスを行っているというビジネスモデルです。ここはあくまでも一般賃貸住宅です。このような形もあったのです。関係者の皆さんの努力には本当に頭が下がります。

院長先生はただ単に治療を受けるために待っているだけではなく、ここで生活をしている方々がもっと楽しめる住宅にしたいと考えておられます。その意味では今後本格的な医療連携型の高齢者住宅を検討されておられますが、既存物件を改築して医療が入ったこのようなモデルもあるのです。あくまでも有料老人ホームと異なりますので、サービスはそれぞれのサービス提供会社との個別契約という形をとっておられますが、不自由はないようです。

従って、低層階がテナントで上層階が賃貸住宅という建物があるとすれば、低層階には医療機関が入り、賃貸部分は高専賃や住宅型有料老人ホームとして改築する場合もあれば、従来の賃貸住宅のまま、医療支援と生活支援と住宅支援を切り離して、連携するパターンもあるのです。

より総合的なサービスを提供するとすれば、高齢者専用賃貸住宅や有料老人ホームという考えもありますが、その前段階で、連携型のものもあるのです。医療が併設されているがゆえに、それだけ個別サービスの集合体であっても十分な商品力があることを実感させて頂きました。

明日はある…か?:消費税・考/3 給付削減いつ誰が

本日、毎日新聞に下記の記事がのっていました。どうも論調がおかしいです。介護保険はあくまでも医療費を抑えるのが目的でつくられ、そのもくろみが外れたので、給付を下げるべきであるとの論旨は実態を反映していないと言えるのではないでしょうか?

決して当初の制度設計に誤りがあったとは思えないのです。問題は、当初設計していた介護保険制度と医療保険制の両面からの改革において、特に医療制度の改革が思うようにいかなかったからではないでしょうか?そこに問題点があるように思うのです。

改革を前提として設計されたものが、改革がうまくいかない。それ故に医療給費、介護給付が増大した、それゆえに削減をせねばならないというのは、論理的におかしいです。行うべきは改革であって、それを実現しないことには対処療法的に給付額を削減したところで根本的な解決には至らないはずです。今やらねばならないのは、断固とした医療制度改革であって、そのうえでの介護保険制度の改革と消費税引き上げはセットと考えるべきではないでしょうか。

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 「必要な介護サービスまで受けられなくなる」「要介護度の低い人の早期ケアができず重度化が進む」。昨年10月28日、社会保障審議会の介護保険部会。膨らむ一方の社会保障費の抑制策として厚生労働省が示した(1)高所得者の自己負担(2)要介護度の低い高齢者の自己負担--引き上げ案に委員から反対意見が続出した。統一地方選を控えた民主党も反発、今国会に提出する介護保険法改正案には盛り込まれなかった。

 介護、年金、高齢者医療の給付は日本の社会保障給付の約7割を占める。高齢化の進展で25年度の給付総額は141兆円と10年度より4割増える一方、支える現役世代は減少の一途だ。いまは高齢者1人を現役世代3人で支えている形だが、50年代には現役1人で支えなければならなくなる。日本経団連の森田富治郎副会長(社会保障委員長)は「社会保障の持続可能性確保には20年代半ばまでに消費税を10%台後半に引き上げる必要がある。財政健全化まで見据えると20%超の財源が必要」と指摘する。

 国民の反発で腰が引けた政治家が消費税論議を避けてきた中で、00年の介護保険制度導入は「消費税に代わる新たな保険料収入の道を開く目的もあった」(90年代の大蔵事務次官経験者)。津島雄二元厚相は「長期入院する高齢者を施設、在宅介護に移し医療費を抑えようとした」と話す。だが、介護保険導入時30・1兆円だった医療費は08年度には34・8兆円に、介護費も3・6兆円から7・9兆円に膨らみ、もくろみは大きく外れた。

 厚労相、自民党税制調査会長を歴任し、菅政権の社会保障改革集中検討会議メンバーも務める柳沢伯夫・城西国際大学長は「すべての高齢者に手厚くサービスする介護制度は限界」と指摘。「韓国や中国から日本の制度を視察に来ると、『とてもじゃないが、やっていけない』と帰っていく」と話す。

 野田毅・自民党税調会長も「そもそも消費税が15%程度でなければできない社会保障制度になってしまった」と指摘する。

 「年金支給開始年齢の引き上げも考えなければいけない」。1月21日、政府の新成長戦略実現会議で与謝野馨経済財政担当相は年金給付に切り込む可能性を示唆した。

 これに対し、国民の反発を恐れる政府・与党から「先のことを議論するという必要はない」(細川律夫厚労相)などと火消し発言が相次ぎ、与謝野氏も「今回の見直しとは関係ない」と事実上発言を修正した。だが、「現役世代も含めて増税への理解を得るには、社会保障の給付抑制も必要」という本音が垣間見えた。

 ニッセイ基礎研究所の遅沢秀一氏は「消費税増税や社会保障費削減など高齢者の不利益になることを訴えては選挙に負ける。それが社会保障を膨張させる一因になっている」と指摘。「税負担の急増に一定の歯止めをかけるには、高額所得の高齢者への給付抑制などを検討すべきだ」と、社会保障を「身の丈」に合わせる必要性を強調する。

昨日は廃校を高齢者住宅に転換できないかという話題でしたが、先般、空き家が増加している内容が日経で報道されていました。
2008年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家率は13.1%で03年調査に比べて0.9ポイント上昇して過去最高を記録したようです。

この間に年間約20万戸の空き家が生まれていることになります。10年の新設住宅着工数は81万戸。1973年の191万戸のピークから半分以下に落ち込んだが、なお供給過剰が続いています。リクルート住宅総研によると、英国の空き家率は4.6%、フランスは6.5%。賃貸住宅の大量供給と高齢化の進行で日本の比率が突出しているといわれます。

その内訳をみると、08年は757万戸の空き家のうち賃貸用が55%を占めます。公団住宅を管理する都市再生機構は現在も76万戸の賃貸住宅を抱え、築30年以上の住宅が半数にのぼるようです。賃貸住宅の5%程度が空き家といいます。次いで空き家が多いのが転勤・入院などで居住者がいなくなった住宅で、空き家全体の35%を占めています。自宅を離れて介護施設や子ども世帯の住まいに移る高齢者が増えているといわれます。

空き家が年間20万戸生まれ、高齢者住宅が年間10万戸必要(高齢者住宅経営者連絡協議会)といわれます。

それでも今なお、税制面での優遇措置のある賃貸アパート・マンションを建てる動きが後を絶たないといいます。ストックが十分にある現在は空き家増加に拍車をかけているといわれ、高齢者住宅への転換が遅れています。税制も含めて抜本的な対策が必要とされています。加えて、不動産活用の一環としての高齢者住宅への取り組みへ向けて関係者の一層の努力が求められます。

本日の日経新聞に標記の記事が出ていました。この内容について考えてみたいと思います。副題で「リフォームで列島再改造」と書かれています。
東京都品川区立の廃校となった原小学校を品川区が鳥取県米子市の社会福祉法人に無償で貸与し、48人の高齢者が暮らす3階建ての高齢者向け賃貸住宅にしたというものです。
約10億円の改装費をかけて42の個室を作り、理科室を食堂にトイレは浴槽に改築したようです。利用者負担が月額約15万円と他の施設より5万円近く安いといいます。

東京都によると、都内で本格的な介護が必要な人の数は現在約2万人であるが、25年には18万人に膨らむといいます。介護施設の不足は目に見えています。一方、全国で未利用のまな放置されている廃校は1015校。地元は治安悪化を懸念しているが、廃校を介護施設に転用すれば一石二鳥である。

その通りです。我々も、北海道で廃校になった学校を介護施設に転用するお手伝いをさせて頂きました。十分に可能性があるのです。

「06年には新潟県の長岡福祉協会が港区の小学校を、昨年3月には岡山県の新生寿会が港区の自治大跡地を介護施設に替えた。都市部より早く高齢化が始まった地方の福祉法人は豊富な介護ノウハウを持つ。そんな地方の実力派が廃校を使って続々と東上している」と記事は掲載しています。

廃校を含め、09年度末時点で国と地方が抱える不動産は465兆円。企業が保有する不動産も08年度末時点で471兆円に及ぶといわれます。更に、国や地方にも努力の余地がありそうです。日本の総住宅数の13%にあたる757万戸の空き家を家賃負担に苦しむ低所得者層のために使えないか。半分が未利用になっている分譲中の工業団地(1万5400㌶)をベンチャーや外資に開放できないかと述べていますが、それほどの土地があれば高齢者住宅群の開発に是非お借りしたいものです。

そのように住宅の空き家を高齢者住宅に利用する、未利用の工業団地を高齢者向けに利用する、更に、未利用の市街化調整区域を高齢者住宅向けに利用する・・・いずれも制度を変えねばならないものばかりです。日経が書いているリフォームで列島再改造を行うための規制緩和、制度改革が必要なのです。いくら未利用の潜在資産があっても、現状の制度下では限界があるのです。行き着くところはやはり政治の改革でしょうか。

本日はある社会福祉法人の方々と面談をしました。eL3の導入に大変意欲的な法人です。来週お会いするのも社会福祉法人ですが、前回も報告をしましたように社会福祉法人の取り組みが活発化しております。旧モデルの有料老人ホームではコストの面で相乗効果を図ることが難しく、この分野の取り組みは活発化しておりませんでした。

我々が提唱する小規模ローコスト型の高齢者住宅のeL3(エルスリー)となりますと、特養待機待ちを含めて相乗効果が生まれてきます。特養と実は価格的にも入居者特性からしても相性が良いのです(最大の競合にもなるのです)。 

それをいち早く察知した社会福祉法人の方々が動き始めたということでしょうか。今後、社会福祉法人の方々との連携が重要になってきます。参考となる記事がでていますので、報告しておきます。
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<特養老人ホーム入所への待機期間は平均1年3か月、最長11年>

「介護の不安」のアンケート調査によれば、4人に1人が「希望する介護施設に入れない」ことを挙げている。なかでも、入所待ちの高齢者が行列を作っているのが、特別養護老人ホームだ。なぜ特養ホームには行列ができるのか?

地方自治体や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(特養)では、介護保険制度で定められた施設サービスを受けられる。人気の理由は、何といっても費用の安さにある。

公的補助が出る介護保険施設なので、月額の利用料は居住費や食費、介護保険の自己負担分を含めて10万円程度と、介護付き有料老人ホームなどと比べて圧倒的に安い。それでも、食事、入浴、排せつ介助のほか、生活支援や健康管理、緊急時対応などのサービスは、介護付き有料老人ホームと同内容だ。

また、特養には要介護度の高い高齢者が入れるため、実際、(5段階で)要介護3以上の人が入所者の9割近くを占める。最期を看取ってくれる「終の棲家」であることも申込者が多い理由だ。しかし、希望者が殺到しているので、入所の順番待ちは長蛇の列になっている。

厚労省の調査によれば、2009年12月時点の入所申込者(待機者)は、定員とほぼ同数の約42万人。野村総合研究所の昨年3月の報告書によると、申し込みから入所までの平均期間は1年3か月、最長11年だった。施設ごとにも待機者の数は異なる。一般にどんな施設が人気なのだろうか?

「国が定めた介護士配置基準は、高齢者3人に対して介護士1人。現在、多くの施設はおおよそ2.5人対1人といわれますが、中には2対1や、個室を取り入れて1.8対1というところもあります。介護士が多い施設は人気が高く、ますます入るのが難しくなっています」(社会保障論が専門の結城康博・淑徳大学准教授)

※週刊ポスト2011年2月18日号

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