無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2012年07月

本日の日経に見出しに記事が出ていました。既婚者の労働力率5割というものです。

■高齢化が進むなか、女性の働き手をいかに増やすかが経済の活力を取り戻すために不可欠だ。

■保育所に子どもをあずけられず、働きたくとも働けない20歳代、30歳代の女性が多い。この層の労働力率は5割程度にとどまり、7割を超えるフランスなどとの差は大きい。

■政府は3歳未満の子どもの保育所の利用者を現在の86万人から122万人(2017年度)に増やす計画を掲げているが、保育士不足などの課題も多い。

■「非常に高い教育を受けた女性は、未発掘だがすばらしい資源だ」と今月初めに来日した国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は6日の都内での講演会で強調した。

■日本の女性の労働参加がほかの先進諸国並みに進めば、日本の生産力は30年までに最大25%増えるとの試算を披露した。

■厚生労働省の試算によると、30年までに日本の就業者数は悲観シナリオで850万人減少する。だが、女性の社会進出などを前提にした楽観シナリオでは、減少幅は210万人程度に抑えられる。

■政府は今回の社会保障と税の一体改革で毎年、消費増税で賄う7千億円を子ども・子育て支援に投入する。このうち4千億円を保育の規模拡大、3千億円を質向上に使う。3歳未満児の保育利用率を現在の27%から17年度にはフランス並みの44%に高め、希望すれば誰でも子供を預けられるようにするという。

しかし、保育士は17年度予測で7万人不足するといいます。仕事内容が厳しいのに賃金が低い為、離職率が多いのです。これは介護とよく似ています。少子高齢化社会において、基幹となる仕事である介護や保育が賃金が低く、労働者が不足するという悪循環が続いています。

子育てをしながら働く環境をどう作り出すか、できるところか取り組みを進めてみたいと思います。
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11年度の介護受給者、500万人突破-厚労省の介護給付費実態調査が2日前に発表されましたのでポイントを掲載しておきます。

■2011年度に介護サービスか介護予防サービスを1回以上受けた人は、前年度比24万5600人増の517万3800人で、初めて500万人を突破したことが26日、厚生労働省の「2011年度介護給付費実態調査」の結果(11年5月-12年4月審査分)で分かりました。

→高齢者3000万人として17.2%

■介護サービスの受給者は420万1000人(前年度比18万5200人増)。

→高齢者人口に占める比率は居宅サービスで14%

■このうち居宅サービスは315万1000人(16万4100人増)、施設サービスは113万5400人(2万6700人増)、地域密着型サービスは40万500人(4万2000人増)、居宅介護支援は290万4100人(13万5700人増)だった。

■居宅サービスのうち、受給者数が最も多かったのは福祉用具貸与の168万1100人(12万7800人増)。以下は通所介護の155万5000人(10万3800人増)、訪問介護が129万8700人(5万800人増)、短期入所生活介護65万600人(2万4200人増)などと続いた。

■施設サービスの受給者数では、介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)が56万2100人(2万3400人増)、介護保健施設サービス(介護老人保健施設)が49万9300人(1万5500人増)と増えた一方、介護療養施設サービス(介護療養型医療施設)は12万6800人(9300人減)となった。

→3施設で118万8200人と高齢者人口に占める比率は3.96%

■地域密着型サービスでは、短期利用を除く認知症対応型共同生活介護の20万2600人(1万3900人増)、認知症対応型通所介護の8万8900人(3500人増)、小規模多機能型居宅介護の7万9900人(1万4500人増)などが多かった。

全利用者1人当たりの平均費用は、月15万7000円(12年4月審査分、本人負担は1割)で、前年度より1200円増えた。都道府県別でみると、1人当たりの費用が介護サービス、介護予防サービスともに最も高いのは沖縄県で、介護は21万2400円、介護予防は4万4200円。最も低いのは、介護が岩手県で17万8200円、介護予防は京都府で3万4600円だった。

■介護度別利用率と給付額は下記図にて.
介護保険居宅サービス平均利用率 
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今月に入って特に感じることですが、爆発的に高齢者住宅の建築が始まっているように感じます。昨年の住まい法の改正で、サービス付高齢者向け住宅の取り組みが始まった為です。昨年はまだ、登録の段階でしたが、今年になって昨年の開発登録をしたサービス付高齢者向け住宅が一気に立ち上がり始めているようです。

それに加えて、住宅型有料老人ホームも次々と立ち上がってきています。特に、西の開発状況は凄まじいものがあります。介護事業者、医療法人、新規参入の企業等が入り乱れて、この分野に入ってきております。

以前は次の様な一定の棲み分けがありました。

①訪問介護や通所サービスといった在宅系のサービスと有料老人ホームやグループホームといった施設系のサービス
②特別養護老人ホーム、老健施設、療養病床といった社会福祉法人や医療法人が取り組む低価格型の施設と民間参入の中間所得者以上の人を対象とした有料老人ホーム

ところが、今や、

①医療法人が有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅を手掛けるケースが増加、更に低価格の医療型高齢者住宅にて市場を席巻し始める
②訪問介護や通所サービス併設の高齢者住宅の急増
③10万円を切る低価格型高齢者住宅の登場
④介護1までの自立~虚弱までの高齢者を受け入れる自立型高齢者住宅と重度介護までを受け入れる介護型高齢者住宅の登場
⑤加えて、指導指針や行政の指導基準を逸脱した高齢者住宅も出て来始めています。

その種類や価格、規模、対象者は様々で市場がセグメント化され様々な商品群が爆発的に増えているのです。

それに対して行政の指導は完全に後手に回っております。先日もある県で、住宅型有料老人ホームで1部屋13㎡以下の施設があることに疑問を思い、行政に確認をしました。

通常我々が住宅型有料老人ホームを作る際には、建築上の基準が指導指針と合致するかどうかを事前に図面をチェックをして頂き、その上で、本来登録制であるはずの住宅型有料老人ホームなのに、膨大な資料をつけて事前申請の依頼を出し、そしてそれが通れば次は本審査、全てが通って受理と、日に日に手続きに煩雑さと時間を要し、開発が遅れることに頭を悩まされています。

おまけに、行政によっては住宅型有料は自立の人しか受け入れてはいけないというで、全く意味がわからないところもありますが、指導指針で定められているという一言でなかなか受け入れて頂けません。

ところが、先の13㎡以下の有料老人ホームの申請は受理しているといいます。何故? 行政に尋ねると、指導指針は指針であって、強制力は無いと言われる。これには唖然としてしまいました。指導指針てそんなものだったのですかと言いたくなります。尋ねられれば「県の基準は満たしていない」と、そう答えますという程度なのです。

我々は勿論、指針に違反した施設は作るつもりもありませんが、得た結論は、行政の対応能力を実態が超えてしまっているのではないかという疑問です。

そうなると、今後、指針を度外視した高齢者住宅の商品群が出てきて市場がかく乱されるといった状況になりはしないかと心配をしています。一定のルールの上で、競争がなされてこそ、質の高いサービスが可能になるのではないでしょうか。行政も現実を直視し、業界の動きに後れを取らないように、品質向上の為のルール作りをして頂く必要があります。
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前回に続き「認知症の人を地域で(WEDGE Report)」のポイント(最終回)を述べてみたいと思います。これから認知症の高齢者の受け皿づくりを積極的に進めてゆかねばなりません。

■日本の精神科病院の病床数は世界的にみて圧倒的に多い。日本には明治以来、私宅監置という制度があった。精神障害者を親族が私宅に閉じ込め、警察が管理するという世界にも類をみない制度だ。

■1950年の精神衛生法施行でこれを禁止する際、2つの悪弊が残った。1つは、精神科病院増設に民間資本を活用しようと、「医師は他の診療科の3分の1、看護職員は3分の2でよい」という趣旨の「精神科特例」を設けたこと。もう一つは、本人の同意がなくても、保護者の同意で入院させることができる医療保護入院制度を創出したことだ。

■認知症PTと同時期に開かれた厚労省の有識者検討会では、精神科特例の廃止と、医療保護入院改革が議論された。両案とも病床と入院患者の減少につながる。日精協推薦の委員は抵抗を続けた。

■日精協は、長期高齢の在院者の「受け皿」として、精神科病床を介護老人保健施設に転換できるようにすべきと提案している。「老健への転換は看板の架け替えにすぎない」と反対論が相次いだが、担当の精神・障害保険課が作成したとりまとめには反映されなかった。

■認知症の人や精神障害者の長期にわたる施設収容が維持される介護型精神老健の創設は不適切だ。

■精神障害者の人権問題に詳しい八尋光秀弁護士はこう語る。「現状を追認した現実論から入れば改革はできない。世界中でやったことなのだから、2年なら2年で病床を削減すると決めた上で、具体的に地域で生活していく場をどう作るかデザインしていくべきだ。」

■薬物依存の人を社会復帰させるダルク(薬物依存リハビリセンター)という取り組みに関わっているが、その経験によれば入院より地域生活の方がコストも安い。

■自分がどう余生を暮したいか考えたときに、精神科病院への入院がいいという人はいないであろう。社会で支えようという覚悟を国民が共有することが大切だ。
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前回に引き続き「認知症の人を地域でWEDGE Report」の要約をしてみたいと思います。

■1980年代に社会問題化した「寝たきり老人問題」は、90年のゴールドプランを皮切りに、10年越しで結実した介護保険制度により少しづつ改善されている。しかし、介護保険は身体ケアが主で、認知症の取り組みは遅れた。認知症対応型グループホームの整備が始まったのが2000年。それから10年越しで、今回の報告に至ったということになる。

■この間、精神科病院に入院している認知症の人は96年の2.8万人から08年の5.2万人に増えた。(そして直近の調査では7.2万人にまで増えているといわれます)

■「統合失調症の新規入院患者が減っている精神科病院にとって、認知症患者は欠かせない顧客」(精神科医)との声も聞かれる。

■今後の取り組みの核は、「初期集中支援チーム」(以下「初期チーム」)と「身近型認知症疾患医療センター」(以下「身近型」)だ。

■「初期チーム」は看護師や作業療法士、精神保健福祉士、心理士といった多職種からなる「初期チーム」が自宅を訪問して支援する。「身近型」は自宅や施設を訪問し、本人・家族やかかりつけ医、あるいは「初期チーム」を支援する出前形式の専門医だ。認知症を進行させるような不適切な対応や投薬を防ぎ、地域の関係者を啓発する役割を担う。

■これまでも認知症疾患医療センターは基幹型・地域型という名で整備されてきたが、多くが精神科病院に併設され、むしろ入院の窓口のようになっているとの批判がある。「センターについては、精神科病院を担当する社会・援護局精神・障害保険課から、老健局高齢者支援課へ所管替えを行う」(藤田政務官)。

  …これが実現できると画期的な取り組みとなるのではないでしょう。

■レポートでは「初期チーム」のモデルとして英国やオランダのメモリーサービスを紹介している。高齢者人口4万人に1ヵ所設置され、多職種からなる。2人1組で自宅を訪れ、本人と家族に対して2時間ほどの面談を行ない、これまでの人生(生活歴)や、認知症のレベル評価(認知症機能評価)、精神面の既往歴、本人の今後の生活に関する希望などを確認し、自宅生活を続けるために何をしたらいいかを見つけ出す。医師はこれらの情報に基づいて最終的な診断を行う際に登場する程度だ。

その他、国内でも地域で支える先進事例…初期チームや身近型の先進事例が生れてきており、今後の取り組みが本格化する動きがあります。しかし、この動きにも精神科病院側の強い抵抗がありそうです。

<続きは次回に>

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