無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2014年09月

認知症800万人の衝撃
欧米に遅れた日本の認知症ケアの現実(ダイヤモンドオンライン 2014年9月17日)

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)] 氏が認知症対応についてこれまでの取り組みと日本の認知症ケアの遅れを指摘しております。これまでの取り組み経緯と現状の課題を整理しておられますので、ポイントを掲載させて頂きます。

高齢者の4人に1人は認知症
■医療と介護のサービスの主な対象が高齢者となったのは日本だけではない。OECD各国も同様で、これらの国に共通するのは最大の課題が認知症ケアということだ。

■アルツハイマー病を始め多くの病から発症する認知症には、根治薬がなくケアのあり方が焦点になっている。そのケア手法で、「病院モデル」から「生活モデル」への転換を進めてきた欧米諸国。だが一方、日本の認知症ケアは最先端を行く「生活モデル」と最も遅れた「病院モデル」を共に抱えており、先進諸国の中では特異な状況だ。

■病気の治療を最優先し部屋の環境や食事、入浴などが二の次になるのが「病院モデル」。だが、認知症は症状を遅らせることはあっても完全な治療はできない。そこで、日々の日常生活を充実させようというのが「生活モデル」。QOL(生活の質)を重視する考えは、障害や疾病を複数抱えがちな高齢者への一般的な処遇法としても広がりつつある。

■認知症が国民的な関心事となったのは、昨年6月に厚労省が発表した衝撃的な人数だ。2012年時点で462万人に上り、前年に発表した305万人より実際は160万人近くも多いことが判明した。茨城県つくば市や愛知県大府市など10市町で、4年間に計9000人の高齢者を追跡調査した結果による。認知症有病率が15%となり、全国の高齢者3080万人に照らし合わせると462万人となる。

■一方、正常でもなく認知症でもない、予備軍的な中間状態の軽度認知障害(MCI)の高齢者が約400万人いることも推計された。合わせると862万人となり、「認知症800万人時代」「高齢者の4人に1人は認知症」とその後のマスコミが使い出し、一躍、認知症の議論が盛んになった。

<次回に続く>
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<前回に続く>

■国の「支援」は有効か
・国家試験に合格しながら帰国者が相次いでいることを報じた読売の記事は、介護人材の不足を指摘したうえで、「合格者の就労継続の支援や、不合格者の再受験の支援の必要性」を訴えて終わっている。これは同紙に限らず大手紙に共通するスタンスだ。毎年、外国人介護士らの国家試験の結果が発表になるたび、新聞各紙は揃って外国人への「支援」を促し続けてきた。だが、単に「支援」すれば問題は解決するのだろうか。

・「支援」ということでは、これまでゆうに80億円を超す税金が投じられてきた。その大きな部分は日本語習得のための「支援」である。外国人介護士を採用した施設には、1人につき年23万5000円も支払われる。国家試験に向けた「対策費」の名目だが、実際は外国人を採用する施設が急減したことに慌てた厚労省が、受け入れ数を確保しようと始めた補助金のバラマキである。だが、結果的には採用施設は増えなかった。本来は当初の2年間でインドネシア、フィリピンから2000人の介護士・看護師を受け入れるはずが、6年経っても枠は埋まっていない。しかも、国家試験の合格率も大して上がっていないのだ。

・「支援」があれば日本で仕事を続けたり、国家試験に再挑戦したかといえば、そういうわけでもない。問題の本質は「支援」の有無ではなく、EPAの受け入れ「スキーム」自体にある(2012年4月4日「根本が間違っている『外国人介護士』問題」参照)。それは介護士たちの声に耳を傾ければ明らかだ。

・インドネシアで看護師の資格を持つナニンさんやスリスさんは、母国では"エリート"とみなされる存在だった。しかしEPAには看護師として応募できず、どんなに日本でがんばっても「介護福祉士」以上の夢は描けなかった。大阪の有料老人ホームで働くマリシェルさんには、フィリピンで1人暮らしをしている母を日本に呼び寄せたいという思いがある。だが、そのために必要な永住権を取得しようとすれば、少なくともあと5年は日本で働かなければならない。親思いの彼女が、それまで辛抱できるかどうか。

・こうした彼女たちの本音は新聞には載らず、厚労省も理解していない。そもそも厚労省はEPAが始まって以降、EPAによる介護士らの受け入れは「人手不足とは無関係」という態度を崩していない。目的すら明確にせず受け入れているのだから、いくら税金を遣おうと効果が出ないのも当然だ。

■人材獲得競争
・EPAによる受け入れは、今年からベトナムとの間でも始まった。一方で政府は、「外国人技能実習制度」で介護士を受け入れる方針も打ち出している。実習制度は今から20年以上前、発展途上国の若者が日本で技術を学ぶためにつくられた。

・ただし、それは建前に過ぎず、現実には日本人の働き手不足に悩む中小企業の工場や建設現場に対し、入国が禁じられているはずの「単純労働者」を供給する"裏口"の手段となってきた。就労期間を最長3年から5年に延長することが検討されているが、短期労働者の受け入れ策であることに変わりない。

・介護現場に実習生を入れることは、ついに政府が介護の人手不足を認め、外国人に頼ることを意味している。しかし、それでは「人手不足とは無関係」としながら多額の税金を投じ、少なくとも形だけは国家試験合格を目標に受け入れてきたEPAとはいったい何だったのか。

・厚労省を始めとする政府には、実習制度で介護士を受け入れる前にやるべきことがある。EPAの何が良くて、何が間違っていたのかを詳細に分析し、総括することだ。EPAに対する介護現場の期待は、時が経つにつれ萎んでいった。多額の税金をつぎ込みながら「期待外れ」に終わった原因すら総括せず、新たに実習制度を採用したところで同じ轍を踏むだけだ。

どういったやり方で外国人の人材を受け入れようとも、彼らの「質」を確保することは重要だ。とりわけ介護や看護は、私たちの暮らしや命に関わる仕事である。ただし、もはや日本は、アジアの若者にとって何が何でも働きたい「憧れの国」ではなくなった。とりわけ、ある程度のレベルに達した人材にとってはそうだ。その象徴が、国家試験合格者から相次ぐ帰国組の姿である。

・アジア諸国では軒並み経済成長が続き、国内にいてもそれなりの仕事に就けるチャンスも増えた。わざわざ日本に「出稼ぎ」に来る必要もなくなりつつある。そこにきて最近では、日本にとっては手ごわいライバルも増えている。アジアの若い人材を巡って、先進国間で獲得競争が起きようとしているのだ。
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「人手不足」と外国人(1) 「介護士・看護師受け入れ」はなぜ失敗したのか(9月10日新潮社フォーサイト)

介護・看護の外国人雇用がカウントダウンの状況になっていますが、安易な取り組みに警鐘を鳴らしております。下記の内容に耳を傾ける必要があります。
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■日本政府が外国から介護士・看護師の受け入れを始めたのは2008年のことだった。政府間で結ぶ経済連携協定(EPA)に基づき、同年にはインドネシア、翌年にはフィリピンからの受け入れが始まった。これまで来日して仕事に就いた人材は2000人近くに上る。

■筆者はフォーサイト誌で「2010年の開国 外国人労働者の現実と未来」(07年8月―10年4月)を連載していた頃、介護士らの受け入れの実情をリアルタイムでルポした。外国人介護士・看護師は国家試験に合格すると、日本で無期限に仕事ができる。ホワイトカラーの「高度人材」、南米諸国など出身の「日系人」らを除けば、日本が初めて外国人に永住の道を開くケースである。その意味で介護士らの受け入れの成否は、近い将来、日本が必ずや直面する「移民」受け入れの試金石になると私は考えた。

■彼らは人手不足解消の切り札とも期待された。介護・看護分野での人手不足は深刻化する一方だ。厚生労働省によれば、介護職だけで2025年には100万人が不足するという。

■EPAによる受け入れ開始から6年が経った今、介護士らはどうしているのか。かつて取材した外国人介護士たちの「その後」を追ってみた。

■成功例はごく少数(詳細は省略)
・EPAで来日する外国人介護士たちは、日本で仕事を始めて3年後に国家試験を受験し、一発で合格しなければ帰国が義務づけられた。現在はある程度の点数を取った受験生に限って翌年の再チャレンジも認められたが、日本語での試験は外国人にとって難関だ。今年の合格率を見ても外国人は36パーセントで、日本人の65パーセントを大きく下回った。看護師の国家試験に至っては、日本人の合格率90パーセントに対し、外国人はわずか10パーセントに過ぎない。

・国家試験で不合格になった外国人は、日本人と結婚するなどして在留資格を得た人を除いて皆、母国へと帰国していった。さらには、合格しても日本に見切りをつけて去っていく者まで続出している。

・2008年から昨年までに来日した1869人のインドネシア人、フィリピン人介護士・看護師のうち、国家試験に合格したのは402人。「読売新聞」6月27日朝刊によれば、合格者の約2割の82人がすでに母国へと戻ってしまったという。日本での就労機会を蹴ってのことだ。

■EPA帰国者たち
・国家試験合格者で帰国する割合がとりわけ高いのがインドネシア人だ。合格者の4人に1人以上が日本を去った。

・インドネシアでは日本企業の進出ラッシュが続いている。日本語が堪能で、しかも日本での生活で文化や慣習も覚えたEPA帰国者たちは、通訳や看護師として引っ張りだこだ。ただし、ひとつ忘れてはならないことがある。彼らは、私たちの税金を遣って育成された人材なのである。スリスさんらが日本での経験を生かして祖国で活躍するのは喜ばしいことだが、それはそもそもの政策目的に適ったことなのだろうか。
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介護職の離職率16.6% 25年度、2年ぶり改善 産経ニュース(2014.9.10 )

介護人材の採用について、人手不足と離職率は実態はもっと高い水準にあるのではないかと思います。特に地域格差が広がっていることが予測されます。
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厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」が発表した平成25年度の介護労働実態調査で、職員の離職率は前年度比0.4ポイント減の16.6%と2年ぶりに改善した。労働時間に希望を反映させるなどの離職防止策の効果が表れたとみられるが、全産業平均の14.8%(24年)よりも高かった。

従業員の過不足状況に関する質問では「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計が56.5%。理由として「採用が困難」が68.3%を占めた。

施設長を除く職員の平均賃金(月給、基本給)は21万2972円で、前年度の21万1900円から1072円上がった。

 調査は25年10月に実施し、全国7808事業所と介護職員1万8881人から回答を得た。
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ローソンが介護事業者と提携しコンビニ展開(2014/09/11日経ヘルスケア)

ウイズネットが埼玉県川口市で1号店を開設の記事が出ています。コンビニと介護の連携が模索されています。今後の高齢者の街づくりの一つのアプローチの形ではないでしょうか。
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■コンビニエンスストア大手のローソン(東京都品川区)は、介護事業者と提携し、要介護・要支援者やその家族、一般高齢者向けのサービスを拡充したコンビニを展開する。高齢化を背景にした来店促進策の一環で、関東・中部・関西の都市部を中心に3年間で約30店の展開を見込む。

■1号店は、介護事業者のウイズネット(さいたま市大宮区)がローソンのFCに加盟して2015年2月に埼玉県川口市内に開設。ケアマネジャーを日中配置し、顧客の要望に応じて、通所介護などのサービスの紹介や高齢者住宅の入居相談を行う。つえなどの介護用品の注文や店頭での受け取りも可能。ウイズネットの配食サービスの物流網を活用し、ローソンの店頭商品の宅配サービスも提供する。
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