今回、福島の南相馬市からエルスリー取手に高齢者を受け入れる準備をしています。提携病院様のご紹介で、先日、病院の事務長と一緒に入居相談室長が南相馬市を訪問し、受け入れのご相談を受けて参りました。
2015年09月
ワタミの介護のMAに思う
高齢者住宅業界の第5位のワタミの介護の譲渡交渉が行われていると報じられました。損保ジャパン日本興亜ホールディングスや、パナソニックなどと売却交渉中とみられます。
ワタミの介護は介護付き有料老人ホームを中心に高齢者住宅事業において拡大をしてこらました。直近では112施設、約8500室を保有しております。
今回の譲渡については、風評被害等で稼働率が80%を切り、経営困難となったと言われますが、果たしてそれが原因だったのでしょうか?
ワタミの介護は介護付き有料老人ホーム以外に住宅型有料1棟、サービス付高齢者向け住宅1棟と他の分野の施設が少ないのが特徴です。
市場そのものが、マルメ報酬型の介護付き有料老人ホーム(特定施設)から住宅型、サ高住 といった外付けモデルに転換を始めていた時期に、新しいモデル開発に遅れたとも言えるのではないでしょうか?
介護業界は市場の成長と同時に、介護保険制度の改定により、急速に環境が変わってきています。世の中は在宅志向になっているのに、執拗に介護付き有料にこだわったことが敗因の一因ではなかったかと推測されます。
住宅型有料やサ高住 は大変困難な事業です。我々も死に物狂いでモデル開発に取り組んでいます。激変する市場環境に対して生き延びるモデルを開発することは容易ではありません。しかし、生き残るためには避けて通れない取り組みです。
今回のワタミさんの取り組みを他山の石としないよう、取り組んで参りたいと思います。
下流老人とは? 日本人の9割は下流老人に
日本人の九割は「下流老人」になることが決まっている 『下流老人』著者・藤田孝典氏インタビュー
「下流老人」とは、埼玉県で生活に困っている方の相談事業を行っているNPO法人・ほっとプラス代表理事の藤田孝典さんの造語で、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」を指す言葉だ。
藤田さんは東海道新幹線焼身自殺事件が起きた6月に刊行した『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)において
「高齢者だけでなく、いまの若い世代も含めた日本人の9割が下流老人になる」と警鐘を鳴らしている。つまり下流老人の定義に従うならば、日本人の9割が生活保護レベルの生活を送ることになる、
というわけだ。 「一億総中流社会」が崩壊し、「一億総老後崩壊」へと移行しつつある日本の現在を描いた藤田氏に、いま私たちに何が出来るのか、そして社会制度をどのように変えていくべきなのかについてインタビューを行った。
みんな自分のことで手一杯—— 今年6月に、東海道新幹線で焼身自殺をはかった老人は、事件を起こす1年ほど前から、「生活が苦しい。家賃(月4万円)を安くして欲しい」と家主に相談していたことがわかり、彼も「下流老人」であったとたいへん話題になりました。事件を通して多くの人が、老後の生活に対する不安や問題意識を共有したように思います。本書は藤田さんの造語「下流老人」がタイトルになっていますが、どんな意図を持って出版されたのでしょうか? 藤田 近年「子供の貧困」や「若者の貧困」がクローズアップされるようになりました。高齢者の貧困も注目を浴びつつありますが、不安を煽るばかりで、具体的な対策方法や現状はまだまだ伝わっていない。それらをまずはまとめる必要があると思いました。 そして、いま漠然と不安を抱えている若者に将来のことを知ってほしいという意図もありました。「下流老人」とされている高齢者は、高度経済成長やバブルを経験し、資産を蓄えやすかった最も豊かな世代です。その世代すら貧困に陥っている人たちがいるということは、若者世代の老後はより悲惨なものになってしまうことになる。今のうちに現実を知っておく必要があるんですよね。
平均年収400万でも下流老人に—— 自分の生活に照らし合わせて考えても、あるいは漠然とイメージをすることはできても、実際に下流老人を「自分事」として考えて、将来を組み立てるのは難しいと思います。シミュレーションして対策できているなら「下流化」はしなかったかもしれないでしょうけど、まずそれが出来ない。藤田さんに相談をする方々はどのようなお話をされるのでしょうか? 藤田 みな口を揃えて「自分がこうなるとは思わなかった」と言うんですよね。やはり想像するのはなかなか難しいのかもしれません。 実感を持つためには、30~40代の人でも自分が老後にどれだけの年金をもらえるのかを試算すればいいと思います。おそらくこれから大胆に収入が増える見込みはないでしょう。ということは老後の年金受給額がおおよそわかる。周りにいる先輩や同僚の年収を参考にしてもいい。そこから少しずつ実感がわくんじゃないでしょうか。 —— 具体例に想定していただけますか? 藤田 うーん、現在平均年収はだいたい400万とされています。これは平均値であって中央値ではありません。平均値の場合、極端に年収の高い人に引っ張られて平均が上がる傾向があるので、実際はもっと低い。
この平均年収400万の人たちは、老後、厚生年金と国民年金を合わせてだいたい月に14~16万円ほど支給されることになります。僕は「下流老人」の定義を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」としました。都内の生活保護基準はおおよそ12~13万円程度ですから大して変わりません。いずれにせよ、都内で暮らすとなると、月に18~20万円ほどが必要になるので、まったく足りていない。 —— 都内で、国が定めている「健康で最低限の文化的な生活」を送るのは難しい。それは平均年収を稼いでいる人も変わらないということですね。高齢者も働く時代ですが、やはり若いときに比べたら体力的な限界がでてきますし、身体が弱くなって病気にかかるリスクも増える。診察や検査を受けるためにはお金が必要ですし、入院となったら長期的に治療費を支払わないといけません。それこそ保険でまかなえないような差額ベッド代、食事代や介護者の交通費は自費で出す必要がある。そう考えたら、月14~16万ではとうてい生きていけないですね。 藤田 そういう現実を突きつけられて初めて「これでは暮らせない」と気がつく人がほとんどなんです。
個人で出来ることの限界—— こうした状況で、どのような対応や対策が取れるかが重要になると思います。個人レベルでの備えもあるでしょうし、社会制度として考えなくてはいけないものもある。藤田さんのお考えをお聞かせ下さい。 藤田 個人レベルで言えば、まず9割の人が下流老人、つまり今の生活保護基準で生きていかないといけないという現実を受け止めて、将来を考えることが必要です。
既に、生活スタイルを変えて地方に移住したり、家計を見直して支出を減らしている若者が少なくないのは、現状を肌で感じているからだと思います。雇用が不安定で、結婚も子供も産めない。歳を取ってから今のような暮らしができるなんて思っていないから消費もしない。安定志向ですよね。 —— 個人レベルの対応は、消費を減らして貯蓄を増やし、老後に備える、ということですね。ただ、その方向を放置すると、次の世代も下流老人になってしまう可能性はありませんか? 消費をしないから経済がまわらない。収入が安定しないので結婚もできないし子供も作れない。必然的に高齢者が多く、若い世代が少ないという人口構造が維持されてしまう。そういう悪循環に陥ってしまうような気がします。もちろんそうしたライフスタイルを否定するべきではないと思いますし、悪循環の中で、ある生活水準に落ち着くのかもしれませんが……。 藤田 そうはいっても個人レベルだと支出を下げて貯蓄を増やす以外の方法がないんですよね(笑)。北欧やヨーロッパだと、意識的に支出を下げなくても、普通に暮らしたら普通に老後を送れるように社会保障が作られていますが、日本はそうじゃない。だから個人レベルではなく、社会制度を根本的に変えていくしかないんです。
生活保護への抵抗感を減らすために「自分で払う」—— 本書は、下流老人の現実を伝えることに重点を置かれていますが、社会制度を変えていく必要性も訴えていらっしゃいますね。例えば昨今、繰り返し話題になる生活保護の場合、貧困層が制度の利用に抵抗感を覚えていたり、あるいは利用者をバッシングするような風潮について言及されています。 藤田 同じように貧困で、生活保護の対象となるべき人が、「私は頑張っているのに、どうしてお前は頑張らずに生活保護を受けているんだ!」と受給者を責めるケースがあります。先ほどもお話した母子家庭の場合、12~13万円で3人の子供を育てたことが美談として語られることが度々ある。でも最低生活基準以下の生活をしているんですから、今まで生きていけたことが奇跡で、美談にしてはいけない。 日本には「自分は生活保護を受けるほど哀れな対象ではない」と信じたいという強い価値観があるように感じます。でもこの価値観って、生活保護が無拠出型だから生まれているものだと思うんです。年金や介護保険って貰うことに抵抗がないですよね? これって「自分で払っているんだから当たり前」と思えるからなんですよ。それが生活保護の場合、自分で払っていないからいざ恩恵を受けようとなると、抵抗を覚
えてしまう。
本当は高い税金を払って、その一部から捻出されているんですけどね。そもそも年金だって全部が全部払っているわけじゃなくて半分は税金ですから生活保護とそんなに変わりません。それでも抵抗なく貰っているんだから、拠出型にしてもいいと思う。 —— 受給のハードルを低くするために「自分が出しているんだ」という感覚が持てるように無拠出型から拠出型にするというわけですね。ただそれって、本来の生活保護の理念から考えれば邪道ですよね。 藤田 そうですね。だからみなし拠出がいいんじゃないかな、と思います。「あなたたちは払っているんですよ。だから貰っていいんですよ」という打ち出し方ですね。国民年金と同じ形です。 —— ベーシックインカムのように、国民全員に払うという方法も考えられますね。 藤田 方法論は様々にあると思います。それぞれ良し悪しがありますから、ちゃんと議論をすればいい。僕は、部分的ベーシックインカム、つまり一定の所得水準に達していなければ、審査なく生活保護を出してしまえばいいと思っているんですけどね。マイナンバー制度が施行されて、国民の所得がわかりやすくなるわけですから、申請なしで生活保護を出すのは容易になるでしょう。今の政権での運用することは、僕は反対ですが(笑)。なにをされるかわからないので。
当たり前の住宅と教育を、インフラにする—— 生活保護以外にはどういった社会制度が有効だと思いますか? 藤田 住宅政策と教育政策はいち早く着手しないといけないと思います。私たちが一番相談を受けるのが家賃に関するものなんですね。とにかく負担が大きい。20万円の給料のうち、12~13万円を家賃に費やすような、馬鹿げた生計を山のように見てきました。 —— 東海道新幹線で焼身自殺した老人も家賃に困っているようでした。
家賃は手取りの30%が限界という話がよくされます。都内の生活保護基準の12~13万円の30%だと3万6000円~3万9000円。年収400万円の人の年金14~16万円の30%は4万2000円~4万8000円です
から、都内で部屋を借りるのはかなり難しいですね。 藤田 右肩上がりの経済成長を経験した先進諸国では土地と家屋が高騰し、商品化されています。でも
住宅って基本的な生活インフラですよね。日本はここにほとんど何も手をつけていないんですよ。ドイツやフランス、オランダでは、最も需要の大きい1~5万円の住宅を、市場ではなく国が提供しています。国が建てた公営住宅や、あるいは全国にある空き家を買い取ったり寄付を受け付けるなりして、それを提供する社会住宅を作っている。公営住宅や社会住宅を借りる人たちは、家賃が低いだけ余裕が生まれるので貯蓄や消費に使え、経済をまわせているんです。 —— 補助金ではなく住宅の提供が肝心なのでしょうか? 例えば貧困層がそうした住宅を借りることで、ある地域に貧困層がまとまってしまいスラム化するような可能性はありませんか? 藤田 日本の場合はそうならないと思うんですよね。だって全世帯が貧困なんですから(笑)。
1~5万円で家に住めるなら、学生からお年寄りまでみんな借りたいと思うんですよ。低学歴層から高学歴層までいろいろな人たちが集まるでしょうし、治安も悪くならないと思います。空き家なんて人口減少が進む中で全国各地に続々と出来ていますからね。 —— そのような動きは既に現れつつあるのでしょうか? 藤田 始めている自治体もあります。条例で、空き家や店舗、シェアハウス、老人ホームとして活用しています。 できれば住宅政策という形で政府が主導となって初めて欲しいんですよね。昔は単にお金をつぎ込んで公営住宅を各自治体に作るみたいな形でやられていましたけど、それだとただ借金が膨らむだけです。それに公営住宅の利用対象者は、高齢者や障害者、母子家庭など一定の層しか使えないことがほとんどです。私たちの世代はそんな形での解決を望んでいないと思うんですよ。教育政策も住宅政策も、当たり前のものだと思われてきました。当たり前に教育を受けているし、当たり前に家に住んでいる。でも実際にはそうとうな負担を強いられているわけです。誰もが下流老人になる中で、そうした負担を取り除いて、みんなが必要としているものを、国民全員が使えるようにインフラ整備していかないといけないでしょう。年金や介護、医療ばかり注目されますが、それだけじゃないんですよ。 藤田孝典(ふじた・たかのり) 1982 年生まれ。社会福祉士。特定非営利活動法人ほっとプラス 代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉 代表。厚生労働省 社会保障審議会「生活困窮者に関する生活支援の在り方に関する特別部会」 委員。著書・共著として、『反貧困のソーシャルワーク実践~NPOほっとポットの挑戦~』、『ひとりも殺させない~それでも生活保護を否定しますか~』『下流老人 1億総老後崩壊の衝撃』など
特別養護老人ホームの競争力とは?
増える介護費 自己負担(下)困惑する自治体 「不正」把握へ事務量増大
「限度額未満まで預金を下ろして『車を買った』と言われても、それ以上調べようがないんです」。東海地方にある市の介護保険担当職員は表情を曇らせた。
八月から始まった介護保険制度の見直しによる自治体補助見直し。施設利用者から申請の際に預金通帳などのコピーを受け取っているが、窓口で対応の難しさをこう打ち明ける。
これまで所得額だけで補助対象者や額を決めていたが、単身で一千万円、二人暮らしで二千万円以上ある場合は軽減対象から外れる=表参照。年間で約五百六十億円の介護給付が減る見通しだ。
資産がいくらあるかは自己申告制で、一部の資産のみを報告し、他は隠すなどの不正が懸念される。
自治体は不正防止のため、銀行に口座情報などを照会できる同意書を申請者から受け取っており、調べることができる。不正が分かった場合、支給額の二~三倍を徴収する。
自治体は対応に大わらわだ。事務量増加に対応するため、東京都世田谷区は四月、介護保険担当職員を増員。名古屋市は各区に介護給付事務などをする嘱託員を各一人配置した。両自治体とも「不正などの情報があれば対応する。一部の利用者を抜き打ちで調査する」としている。
ただ、未申告の預金があると思われても、口座を開設した金融機関が分からなければ、多数の金融機関の中から照会先を絞り込まなくてはならない。ある自治体の担当者は「限られた人数で、どこまで効率的に調査できるか」と不安を口にする。現金を手元に置く「たんす預金」を調べる方法はなく、厚生労働省も利用者の良心頼みだと認める。
◆「ペナルティーがあること伝えて」
「今回の制度改正は、大きな不公平感を解消し、高齢者の世代内である程度持っている人が、持っていない人を助ける世代内扶養を強化するのが目的です」
結城康博・淑徳大総合福祉学部教授(社会保障論)は強調する。介護保険制度を議論する厚生労働省社会保障審議会介護保険部会の委員を務めている。
結城教授によると、「年金額が少なければ、多額の預貯金があるのに食費などで補助が受けられる仕組みは不公平だ」という意見は、審議会の場で以前から出されていた。しかし、資産を理由とした負担増には反発が予想されるほか、預貯金に関する書類を整えたり“資産隠し”を調査したりする自治体の事務の増量が懸念され、制度導入に踏み出せなかった。
状況を変えたのは、年間一兆円ずつ増える介護保険財政の膨張と、高齢化で高騰する介護保険料、国の財政逼迫(ひっぱく)だった。
結城教授は「資産による軽減見直しをしないと、子や孫の世代へ負担がさらに重くなる」と指摘。不正問題に関して、「自治体は制度の趣旨とともに、不正にはペナルティーがあることもしっかり知らせるべきだ。ただ、特養を利用している世代はまじめな方が多いし、不正はごくわずかではないか」と想像する。