<前回に続く>
ほとんどの先進国には「最低所得保障」がある
私は他の先進国についても調べてみたが、フランス、カナダ、オーストラリアなどでも、低所得高齢者向けの最低所得保障の制度を備えていることがわかった。カナダは「老齢年金」(OAS)の受給が一定額に満たない低年金者に所得保障を行う「補足所得保障」(GIS)という制度を導入している。
また、オーストラリアでは最低保障機能を備えた老齢年金の枠組みで、資力審査を前提に低所得者に所得保障を行っている。ちなみに同国の年金は全額税金で賄われるので、社会保険料の負担は全くない。
さらに米国では、65歳以上の低所得高齢者に対しては一般の生活扶助「補足的保障所得」(SSI)の受給条件を緩和することで、実質的な最低所得保障にしている。貧困レベル以下の収入・資産しかない人は65歳になれば月額750~850ドル(州によって異なる)のSSIを受給できる。また、低所得高齢者は家賃補助や公的医療扶助「メディケイド」などを受けることができる。
こうしてみると、先進国の中で老後の最低所得保障制度がないのは日本くらいだということがわかる。
スウェーデンの社会保障制度の基本的な考え方を反映している「社会サービス法」には、「自己のニーズを自分で、あるいは他の方法によって満たされない人は、社会委員会より生活補助およびその他生活のための援助を受ける権利を有する」と定義されている。つまり、自助努力で最低限の生活を維持できない人は政府から必要な援助を受ける権利があるということだ。
この考え方は、私が米国で取材したソーシャルワーカーの「公的扶助は施しではなく、政府からのお返しである。だから、堂々と受けるべきだ」という言葉とも共通している。
日本でもこのような考え方が人々の間にもっと広まれば、政府も低所得高齢者向けの最低所得保障制度を作らざるを得なくなるのではないか。