無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2017年07月

明日から高齢者の医療・介護サービスの自己負担額が引き上げられます。旧来の枠の中で小手先の改善レベルでは間に合いません。

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医療・介護の自己負担増
2017年7月31日赤旗

来月から 高齢者や現役会社員も

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 8月1日から高齢者の医療・介護サービスの自己負担額が引き上げられます。

現役世代が負担する介護保険料も、大手企業会社員や公務員を中心に年収に応じて負担が引き上げられます。

国民生活基礎調査では、全世帯中56・5%が生活が「苦しい」と答えており、これ以上の給付抑制・負担増は国民生活との間にさらなる矛盾を生むことは必至です。

 医療では、患者の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」で、70歳以上を対象に上限額を引き上げます。年収370万円未満で住民税を課税されている人の場合、外来の負担上限が月2千円上がり、1万4千円に。2018年8月にはさらに外来月額1万8千円への引き上げが予定されています。約1240万人が対象になります。

 長期治療する患者への負担が大きいとの批判を受け、年間限度額を設定。これまでの月額1万2千円の12カ月分に当たる14万4千円としました。4回以上受信した場合(多数回該当)の世帯限度額は、月額1万3200円増の5万7600円に引き上げられます。

 介護では、サービス利用の自己負担限度額(高額介護サービス費)を、月額7200円増の4万4400円に引き上げます。住民税を払っている世帯で単身の場合は年収383万円未満、2人以上なら年収520万円未満の世帯が対象です。利用者負担が1割負担者のみの世帯では、これまでの月額上限の12カ月分(44万6400円)の年間上限額を設けますが、3年間の時限措置です。

 40~64歳の現役世代が支払う介護保険料は、健康保険組合連合(健保連)などが加入者数に応じて介護納付金を納めるこれまでの「人数割」から、収入に応じて支払う「総報酬割」を段階的に導入。20年度に全面導入し、約1300万人が対象になる見込みです。

厚労省は、健保組合加入で年収が456万円の場合、月額727円増(労使含む)の5852円と試算。年収841万円では5668円増(同)の1万793円になります。「能力に応じた負担」を理由にしていますが、協会けんぽに支出している国庫補助金を他の保険者に肩代わりさせるものです。

 年金制度では、年金を受け取るために最低限必要な保険料の納付期間が25年から10年へ短縮されます。新たに約64万人が受給資格を得ますが、支給額は納付期間10年でわずか月額1万6千円。新たな低年金層を生むとの批判が上がっています。

 安倍政権は社会保障費の自然増分を年5000億円程度に抑えるとした目標を掲げ、17年度の予算では1400億円の圧縮を実行しました。来年度予算でも、給付抑制・負担増による数字ありきの社会保障の削減を狙っています。

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全国知事会で介護人材不足に対処する為に国に介護職員の賃上げ要請が行われました。賃上げだけではなく、医療・介護の制度改革も併せてもっと国に強く迫って頂きたいと思います。

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2017.7.31官庁通信社

知事会、介護職員の更なる賃上げを要請 「人材不足が続けば福祉は確実に崩壊する」


27日、28日の両日に開催された全国知事会議で、介護職員の処遇を改善するよう国に強く訴える特別決議が採択された。
 
福祉人材確保のための特別決議〈省略)
 
「政府は施設整備を進めているが、その運営に必要な人材が確保できない状況」「人材が不足した状態が続くと我が国の福祉は確実に崩壊する」。
 
特別決議ではそう問題を提起。「抜本的かつ実効性のある打開策は見出せておらず危機的」と強調し、「更なる賃金の底上げ」を図るべきと促した。
 
人手不足の解消策をめぐっては、介護報酬の「介護職員処遇改善加算」が拡充されたあとの今年6月、全国市長会も一層の処遇改善が必要だと決議している。自治体の主張は一致しており、国がこれにどう応えていくかが焦点。来年度の介護報酬改定に向けた議論で、政府・与党の姿勢が厳しく問われそうだ。
 
全国知事会はこのほか、介護のイメージアップや働く環境の改善などに力を入れるよう求める提言もまとめた。「認定介護福祉士」を法的に位置付けたうえで、そうした専門性の高い人材の配置を介護報酬で評価することも要請している。

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<前回に続く>

・・・厚労省の集合住宅に対する規制強化は更に強化されています。併設の効果を削ぐことしか考えていません。このままでは第3の住宅モデルはできません。
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 その好例は、訪問診療に熱心な医師のいる地域医療で散見できる。医師の他看護師やケアマネジャー、ヘルパー、デイサービス職員、栄養士など要介護者に関わる全員が集まるケア会議で、あらゆる方向から全体像を確認しながら、本人と家族を交えて今後の対応法を検討する。ケアマネジャーが本来の会議主宰者だが、実態は医師主導型が大半である。医師が、一歩下がって巧みに会議を導く。

 こうした異業種の連携が上手くいっているのは人間関係が濃密な地方に多い。伝統的な社会基盤が未だに残っているからこそ、実現できたかもしれない。

 濃密な人間関係を嫌い、出奔してきた新住民が多数派の都市部では、そう簡単にいかない。だから「コミュニティ」づくりが喧伝される。

 都市部でも熱意のある訪問診療医はいるが、職種や法人を横断的にまとめあげるグループづくりは難しい。事業者相互の親密度が少なく、利用者との物理的心理的距離も遠い。

 従って、多様なサービスを展開し、組織力のある事業者がリーダーとならざるを得ないだろう。そこに医療も含まれていればなお結構である。

つまり「囲い込み」は一概に否定されるべきではない。要介護者のライフスタイルから障害の全体像をきちんと把握し、必要な医療・介護・生活サービスを臨機応変に注ぐことができるのは、囲い込んでいるからこそでもある。
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<前回に続く>

利用者にとっては「囲い込み」ならではのメリットも


では、利用者にとって囲い込みは本当に不利益なのだろうか。

 要介護者にとっては、要介護になった初めの症状から今の状態までずっと理解してもらえる医療・介護者がいれば心強い。複数のサービスを使っていることが多いので、制度上は全体のサービスを組み立てるケアマネジャーがその役割を担う。

 個別サービスの担当者がいつまでも変わらないのが利用者にとって喜ばしいこと。とりわけ、認知症高齢者には、おむつ交換や入浴介助をするスタッフとは信頼関係が重要だ。認知症になっても感性は生きている。できるだけ少数の介護者がほぼ専属的に関わる形式がいい。北欧では、こうした特定の介護者を「キーパーソン」として制度化している。個別ケアの徹底にもつながる

 24時間の切れ目ないケア手法を導入したグループホームと小規模型を見ればよく分かる。いずれも限られた少人数の利用者に、やはり少人数のスタッフが生活全般を支援する。今の介護保険制度では、利用者にとって「あるべきケア」と言われ評価が高い。だが、囲い込みそのものである

 小規模型を登場させたときに、厚労省は「通い」と「訪問」、「泊り」の3機能を「できるだけ同じ介護スタッフが同じ利用者に付く」と説明した。通所介護(デイサービス)と訪問介護、短期宿泊(ショートステイ)の3サービスを統合、一本化したのが小規模型。利用者25人を上限にして囲い込んだのである。

 この囲い込みに医療が加われば、利用者にとって安心度はさらに高まる。転倒骨折や認知症の初期症状、脳卒中などでまず医師の診察を受け、それから介護保険のサービスを受けるのが一般的。医療カルテや映像を含めて、介護スタッフにも情報が共有されれば、利用者の全体像を把握しやすい。介護保険の利用のスタートは医療から始まる。本来はケアマネジャーが得る情報だが、医療データがなかなか伝わらないのが現実でもある。

そこで、医療と介護が同じ法人グループであれば、データやサービスの実績が相互に伝わりやすい。

<次回に続く>

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<前回に続く>

そこへ、国交省が併設サービスを奨励し始めた。だが、再び併設事業者を「悪者」扱いするようなのが今回の減額政策である。
・・・・国交省と厚労省のかい離が始まる。厚労省が規制強化に入ったとしか言いようがありません。

   
この形式を「利用者から選択の自由を奪う囲い込みでよくない」とするなら、既存の介護3施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養病床)とグループホーム、特定施設はどうなのか。これら居住系5施設はすべて徹底した囲い込みが行われている。

 利用者は地域の介護サービスを使えない。特養入居者がすぐ近くの異なる法人のデイサービスで食事を摂りたくてもできない。介護サービスの自由な選択は論外である。諦めねばならない。介護はいずれも内部スタッフだけが遂行する。囲い込みを一方で否定しながら、片方で制度として組み込んでいる。ダブルスタンダードだろう。

施設を土台から見直し、住宅へ移行させる論議がない。スウェーデンを始めオランダを含めた北欧諸国では、1990年代から「脱施設、住宅へ」と舵を切った。
・・・時代に逆流する流れとなってしまいました。政策担当者の大いなる誤りと言わざるを得ません。

<次回に続く>

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