無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2017年07月

<前回に続く>
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

<前回に続く>

組み合わせるサービスは、訪問介護やデイサービス、訪問看護ステーションなど介護保険の在宅サービスのほか食事提供などの生活サービスなど様々だ。2010年度は340件に助成金を投じたが、うち24件は小規模型であった。

小規模型は2006年度から介護保険に加わった新しいサービスだが、採算を採るのが難しく参入事業者が二の足を踏んでいた。それなのに、高専賃との組み合わせとして選択する事業者が多いのは、認知症や中重度要介護者の入居を想定していたからだ。それだけ社会的ニーズが高いと判断したのである。

国交省としては、高齢者専用の住宅だから要介護者が入居してくるのは当然であり、介護サービスが同一建物内にあれば便利だろう、としてモデル事業に乗り出したわけだ。極めて常識的な考えである。

 2010年3月には「地域包括ケア研究会」(座長・田中滋慶応大学大学院教授)の報告書「2025年の地域ケアシステム」で、「外付けのケアを組み合わせた集合賃貸住宅」が提言される。両省は適合高専賃を発展的に解消し、翌年に高齢者居住安定法の改正に動く。国交省は、建設費の補助のため前年度の2倍近い300億円以上の予算を確保した。企業や個人の建物に税を投入するには憲法に触れかねない。それほどの意気込みであった。


<次回に続く>
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

<前回に続く>

市町村の特定施設拡大反対で作戦は頓挫 国交省が「高専賃+サービス」奨励へ

 ところが、この作戦は頓挫してしまう。介護保険を運営する市町村が特定施設の拡大に反発介護保険事業計画の中で数量を制限してしまう。特定施設の指定者は都道府県だが、地方分権の流れの中で「市町村の意向を尊重すること」となり、事実上のストップをかけてしまった。

地方自治体は「厚労省から介護施設の総量を制限するように指示されたから」と、国の意向に従ったまでと弁解する。確かに当時の小泉政権は社会保障費の伸び率抑制策をとり、厚労省も介護施設抑制策を指示しており、それを「義務」と受けとめた自治体が多かった。

 ここで厚労省などが予測しなかった事態が起きてくる。特定施設に移行できなくなった事業者が、訪問介護やデイサービスなどを適合高専賃に組み込み始めた。
・・・必然的結果です。

夜勤者も独自に配置する。要介護者に必要だからだ。そのうえで、特定施設と変わらないサービスを対外的には謳う。

 入居者やその家族に「施設と同じように、必要な時に必ず介護サービスが受けられます」と説明。適合高専賃などの複雑な制度を理解してもらうのは無理なので、こうした簡潔な一言で済ませてしまう。

一方、国交省でも高専賃に様々な在宅サービスや生活サービスを組み込んだタイプをモデル事業として奨励し始める。

2009年度は「高齢者居住安定化モデル事業」、2010年度は「高齢者等居住安定化推進事業」である。それぞれ80億円、160億円を投入する力の入れようだ。

<次回に続く>
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

<前回に続く>適合高専賃誕生の背景

 健康な家族向けの住宅計画しか眼中になかった国交省が一転、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者居住安定法)を施行したのが2001年8月。高齢化時代を睨んでの施策だった。同法の中で3つの高齢者住宅を打ち出していた。


 高齢者の入居を拒否しない高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、建設費や家賃を自治体などが公費助成する高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)、建設費や家賃の公的助成はなく、都道府県に登録して家賃や居室面積などを公表する高齢者専用賃貸住宅(高専賃)である。


両省はその中の高専賃に着目した。公費負担がなく企業が推進力になっており普及が期待できるからだ。

この高専賃に要介護者でも暮らせるようにと、先述の「生活支援4条件」を加えて、特定施設に移行できることとしたのである。これが「適合高専賃」であり、サ高住の前身だ。

「適合」とは、特定施設になることができる、という意味であった。つまり、「適合高専賃」は特定施設に移行させるための特別の仕掛け、第3のルートだった。舞台裏の渡り廊下のような位置づけだ。
 両省とも、これでケア付き住宅の拡大への道筋をつけたと思った。


<次回に続く>

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

<前回に続く>

サ高住の前身「適合高専賃」の誕生で ケア付き住宅(特定施設)拡大への道筋に

 では、サ高住入居者は「大家」が提供するサービスを使うことで本当に不利益を被るのか。介護の良し悪しを見極めるには、利用者側にたって考えねばならない。その検討には、そもそもサ高住が登場してきた経緯に遡らねばならないだろう。

 サ高住は2011年10月から制度化されたが、前身があった。適合高齢者専用賃貸住宅(適合高専賃)である。高齢者専用賃貸住宅(高専賃)に加えて「生活支援4条件」を課したのが適合高専賃だ。4条件は(1)25m2以上の居室 (2)トイレ、台所、洗面所、浴室、収納部が居室に完備 (3)入浴と排泄あるいは食事提供と洗濯、掃除などの家事提供あるいは健康管理のどれか一つがある (4)前払い家賃には保全措置を義務付け―――である。共用の台所や浴室を別に設ければ、その分居室は狭くてもよく18m2以上に下げられる。

 このうち(3)を健康管理だけに限定し、(1)と(2)(4)をそのまま踏襲したのがサ高住である。では、適合高専賃はどのような出自なのか。

出発点は、2003年6月に厚労省老健局長の私的研究会「高齢者介護研究会」(委員10人、座長・堀田力さわやか福祉財団理事長)がまとめた報告書「2015年の高齢者介護――高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」である。

 介護保険がスタートして間もない時に早くも、制度の欠陥を指摘し、それを克服するための必要な課題を打ち出した。画期的な報告書として評価が高い。その欠陥は、
(1)認知症ケアの軽視 
(2)24時間の切れ目ない在宅サービスの欠如 
(3)自宅介護が難しくなった要介護者のための「ケア付き住宅」の不足の3項目に集約される。


その対策として、(1)は痴呆を認知症に改名、認知症サポーター制度の新設、医師への研修強化などを促し、(2)はその後に小規模型と24時間訪問サービスの登場として結実、そし(3)によってケア付き住宅の検討に着手することになる。 

(3)について報告書は「これまでわが国では、福祉サービスの視点から住宅を考えるという視点は必ずしも意識されてこなかった」と記し、官庁の文書では珍しく「自己批判」した。「意識してこなかった」理由は、厚労省にとって、住宅は管轄外だったからだ。

具体策にも踏み込んだ。報告書は2つのタイプの集合住宅を想定。「要介護状態になる前の早めの住み替え型」と「要介護者向け型」だ。だが、同時に「住み替え型」でも、「将来要介護状態になっても再度の住み替えをしなくても済むように、必要になったら介護サービスが提供されることが約束されて」いなければならないという。

結論として介護保険サービスの特定施設(介護付き有料老人ホーム)を有力候補に挙げた。それは「自宅と施設以外の多様な『住まい方』の実現」であり、「第3類型」と関係者に呼ばれた。

こうして、特定施設を増やすことが政策課題となる。特定施設とは、有料老人ホームの人員配置を特別養護老人ホームと同等(入居者3人に対し職員1人)にしたもので、介護保険から報酬が得られる。

 ところが、特定施設になるためには、有料老人ホームかケアハウスでないと認められなかった。それでは全国的な普及が難しい。そこで厚労省は「『介護を受けながら住み続ける住まい』研究会」(委員10人、委員長・堀田力氏)を設置して、具体策を検討する。その報告書の提案を受け、厚労省は国交省に呼び掛けて対応策を練る。

<次回に続く>
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ