無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2017年08月

<前回に続く>

 ●「保育園より短い」

 「デイサービスの預かり時間は保育園より短い」「一般的提供時間(8時間)で介護と仕事の両立が可能か疑問」。政府の「働き方改革」「1億総活躍社会」を巡る議論で出されたデイサービスを批判した二つの資料だ。

介護報酬を議論した今年6月の社会保障審議会介護給付費分科会でこの資料に委員から反発が出た。鈴木邦彦・日本医師会常任理事は、人手不足が深刻で保育所に夜勤がないため「同列には論じられない」と話す。

 昨年の「働き方改革実現会議」に資料の一つを出した白河桃子・相模女子大客員教授は「これまでは嫁やパートの女性が介護を担ってきたが、今後は男性が担う確率が高い。働き盛りの男性が介護する発想が抜け落ちている。感覚が昔のまま」とあきれる。

 昨年の「1億総活躍社会に関する意見交換会」の資料は、介護に直面する中高年が働き続ける障害をなくし、税や保険料の担い手であり続けてもらい社会保障財源を確保する提案だ。

しかし分科会委員の本多伸行・健康保険組合連合会理事は「(急増する支出に)間に合わない」とこの案を事実上否定。「支出にブレーキをかけるべきだ」とサービス削減先行を主張する。

 本多委員は「自立支援を実施」せず「機能回復を図る適切なサービス提供」のない「漫然」なデイサービスの「減算」を提案した。「単なる預かりは問題」と話す。委員の東憲太郎・全国老人保健施設協会会長も「心身の機能を維持できていなければペナルティーを科すべきだ」と述べた。
・・・何と短絡的な発想、自分たちの立場からしか物が見えない、近視眼的発想です。(コメント)

<次回に続く>

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介護報酬改定議論の中で、デイサービスの減算が浮上しています。単純な減算ではなく、仕事と介護の両立という観点が欠落しているという指摘です。その通りかと思います。
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長寿リスク社会

検証・介護報酬改定/下 仕事と両立の発想欠落

 

 ●進まぬ時間延長

    デイサービス「人生の里」で、朝食サービスの食卓に向かう利用者を手助けする兼本まゆみ主任(左)=福島県いわき市で

     「みんなで食べるとおいしいねえ」。玄葉チエ子さん(75)はご飯、みそ汁、目玉焼きの朝ご飯を平らげた。福島県いわき市のデイサービス「人生(いきがい)の里」(定員35人)。昨年4月から始めた朝食サービスで7人がテーブルを囲む。

    映画「ティファニーで朝食を」よろしく「デイサービスで朝食を」がその名前だ。本来は午前9時半スタートだが9時からに前倒しして30分間を朝食に充てる。兼本まゆみ主任は、朝食を食べず、薬も飲んだかわからない利用者がぐったりしているのを目にして早めの朝食提供を提案した。

     玄葉さんは、直前の食事や薬の服用も忘れる。親族が自宅で見る水曜、日曜以外の週5日、デイサービスが朝食と服薬管理を担う。兼本主任は「本人、家族、職員も安心できる」と話す。介護保険制度の適用外だが1回180円と低価格に抑え、現在いる職員でやりくりし対応する。

     朝食サービスのもう一つの狙いは「仕事と介護の両立」だ。玄葉さんの長男安広さん(57)は毎朝5時に仕事に向かう。以前は朝食を作り置きして出たが、母が冷蔵庫にある物をどんどん食べてしまうため心配だった。「朝食サービスで私が精神的に助かっている」と話す。「人生の里」では夕食提供なども検討中だ。

     ただ、「人生の里」のように利用者・介護者本位でデイサービス延長に取り組む例は少数だ。

    厚生労働省は2015年度の報酬改定で14時間までの延長を認め、高い加算を設定したが、昨年の委託調査によると約4割の施設がサービス時間は7時間~7時間半。午前9時半開始、午後4時終了が一般的だ。時間が長いほど「仕事と介護が両立しやすい」と回答した家族が多かったが、10時間以上の加算4種類を算定している事業者は各4%以下だ。
    <次回に続く>

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    「支援は施しではなくお返し」

    Bさんは低年金でギリギリの生活だが、結構充実した毎日を送っている。地域のシニアセンターに通い、陶芸や文学、「自叙伝の書き方」などのクラスを受けたり、講演会やパーティなどに参加している。

    黒人女性として常に差別と向き合い、公民権運動に関わり、白人男性との結婚・離婚を経験するなど波乱に満ちた人生を送ってきた彼女は、それを本にまとめて出版するのが夢だという。 

    アメリカシニア

     

    シニアセンターのカフェテリアは高齢者の交流場所になっている


    シニアセンターは高齢者の自立を支援する公的施設で、各自治体が連邦・州政府の助成金を得て運営し、全米のほとんどの都市(計約1100カ所)にある。

    利用者(会員)の多くは独居高齢者だが、彼らが1日中1人で家にいると孤立しかねないので、シニアセンターではクラスや講演会、誕生パーティなどさまざまなイベントを実施している。また、カフェテリアでランチを食べたり、コーヒーを飲んだりしながら、気の合う仲間と雑談することもできる。

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    <前回に続く>

    米国には国民皆保険はないが、実は高齢者と低所得者は公的医療保険で守られている。

    前述のAさんは低所得者向けの公的保険メディケイドの適用を受けている。彼は数年前に前立腺肥大症が悪化して救急病院に運ばれ、治療を受けた。その後、前立腺がんの疑いも出て精密検査を受けたが、その治療費はすべてメディケイドでカバーされたという。

    皆保険がない米国では高額の民間保険に加入していないと、病気になっても病院へ行けない、医者にかかると莫大な治療費を請求されて破産するといった話を聞くが、それは主に中流層(65歳以下の)の場合である。

    高齢者と低所得者は公的保険で保障されているので、あまりそういうことにはならない。

    米国で多額の医療費や介護費が必要になった時に最も苦労するのは、そこそこお金を持っている中流層ではないかと思われる。

    上流層は高額の民間医療保険に加入すればなんとかなるだろうし、下流層は公的支援が受けられる。しかし、中流層は貯金や車、家などの財産を使い果たし、貧困層に転落しないと公的支援を受けられない。

    <次回に続く>

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    <前回に続く>

    低年金でも公的支援が受けられる

    次は下流老人の家賃補助と公的医療保険について紹介したい。
    教育関係のNPO団体をリタイアした黒人女性のBさん(74歳)は月1030ドルの年金収入しかなく、ギリギリの生活を続けている。

    退職後しばらくは息子夫婦と同居していたが、孫がうるさくて好きな読書や書き物に集中できないのと、1人暮らしの方が性に合っていると思ったので、3年前に家を出ることを決めた。でも、彼女の年金では普通のアパートに入るのは難しいので、収入の3割を払えば住めるシニア住宅の入居申請をした。

    待機者が多くて2年近く待たされたが、1年ほど前にようやく入居できた。1ベッドルーム(居間+寝室)の住宅は1人ではもったいないくらい広く、地下鉄の駅やスーパーなども近くてとても満足していると話す。

    家賃補助を受けられるのは生活苦を抱える下流老人にとって大きな救いとなっている。だからこそ米国ではシニア住宅プログラムを導入し、欧州でもほとんどの国は低所得高齢者向けの家賃補助を制度化している

    一方、日本には低所得者向けの公営住宅はあるが、圧倒的に数が足りない。そのため下流老人の多くは仕方なく民間賃貸住宅に住み、「家賃を払ったら手元にお金がほとんど残らない」状況に追い込まれている。一刻も早い家賃補助制度の導入が求められるところだ。

    家賃と同様に苦労するのが医療費の支払いである。Bさんは関節炎や心臓病などを抱え、診察費や薬代はかなりの額になるが、高齢者向けの公的医療保険メディケアでほとんどカバーされるので問題ないという。メディケアはSS税を10年以上納めた人が65歳以上から加入できる制度である。

    <次回に続く>

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