元路上生活者の自立支援、決して容易ではありません。折角ホームレスから脱却できても孤立死が後を絶たないと言われます。ホームレス→自立支援施設→生活保護を受けてアパート生活への移行、それを見守りや生活支援を行う自治体、NPO法人や多くのボランティアがいます。それでも孤立死防止は難しいと言われています。
加えて若者の中にも非正規雇用や未婚者の増加で予備軍がおり、孤立死を防ぐには地域住民や支援団体の見守りだけでは不十分で行政の対応を含めた対策が必要と言われます。そのためのコストは今後増大の一途をたどりそうです。我々は、新しい社会保障を作る為の実験に取り組まねばなりません。
そのヒントをドイツの医療・福祉の町のベーテルに見出すことができます。
「福祉は「継続する愛」でなければならない。それには、自分が自由である必要がある。自由になるには、自ら進んで、積極的に参加することが大切である。そのうえで、愛が実現されなくてはならない。そのためには、使命感だけではなく、楽しく夢中になれる職場づくりがポイントになる。ベーテルにはたくさんの職場ができた。奉仕する人たちも、介護の人たちも、障害のある人たちも、それぞれが楽しめ、夢中になれる職場で働くのだ。
喜びを感じながら一生懸命仕事をすれば、自然と充実感がゆとりが生まれる。障害のあるひとたちも、自分に合った仕事をみつければ、自力で暮らせるようになる。このような、自立のための仕事を見つけられるように助けるのが、社会保障でなくてはならない。
ベーテルは、いつもそれを目指している。そのために、ベーテルはいろいろな仕事の場を提供し、治療や研修の場を多く用意して、一人一人の個性の発見に努めているのだ。」
(日本グリム協会会長、宇都宮大学教授 橋本 孝著)「奇跡の医療・福祉の町ベーテルより」
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元路上生活者の孤立死 後絶たず ホームレスから脱却できたのに 地域になじめない 最期を誰に託せば…
(西日本新聞2018.06.29)
ホームレスの人が路上生活から抜け出し、アパートなどで自立した暮らしを始めたものの、誰にもみとられず孤立死するケースが後を絶たない。高齢な上に身内と疎遠なことが多く、地域にもなじめないのが原因という。国は生活困窮者自立支援制度を強化し、路上から地域社会に戻った人や一般の単身高齢者の孤立防止策を進めているが、まだ十分でない面がある。