本日、ある医療法人から「外部サービス型特定施設」について相談がありました。我々もこれまでこの形態での取り組みはありませんので、改めて、その内容について確認をさせて頂きました。

来年度の介護保険改正で、訪問介護併設型サービス付高齢者向け住宅について、一定規模以上の高齢者住宅における訪問介護報酬が減額になるという内容が出されています。当面は40室以上となるようですが、実は「外部サービス型特定施設」は今後の制度改革において一つの方向性を示していると考えられています。

あえて、このモデルが真にこれからのサービス外付けのモデルになりうるかどうか、本当に事業としてなりたつものかどうかを検証して参りたいと思います。
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介護報酬と高齢者住宅との相性の悪さを解消するために、2006年の報酬改定で制度化されたのが「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」(外部サービス利用型)です。

これは、見守り、緊急対応などについては日額包括算定方式で行い、入居者個別の排泄介助、入浴介助などは、外部の訪問介護等を利用して出来高で算定するというものです。

名前からもわかるように、特定施設入居者生活介護の新しい介護報酬体系であり、包括部分と出来高部分を合わせた限度額は、従来の一般型特定施設の月額報酬程度に抑えられています。軽度要介護高齢者は、出来高部分を全額利用しないため介護報酬を抑えられ、重度要介護高齢者が全額利用しても、区分支給限度額と比較すると介護報酬を抑えることができます。

そもそも、区分支給限度額は、自宅で暮らす高齢者に適用する介護報酬ですから、ホームヘルパーや看護師が各自宅を回るという非効率性を加味して、介護報酬単価は高く設定されています。外部サービス利用型は、集合住宅で暮らす要介護高齢者の介護の効率性を反映させ、現在の介護報酬の課題を修正した高齢者住宅専用の介護報酬だと言えます。

しかし、この新しい介護報酬が設定されたことによって新たな歪が生じています。訪問介護サービス、通所介護サービスを併設し、一体的に運営している高齢者住宅事業者から見れば、区分支給限度額と外部サービス利用型のどちらで算定するのかによって、同じ介護サービスを提供しても、グループ全体で受け取る介護報酬が大きく違ってくるからです。

厚労省は、これに対して有料老人ホームや高専賃において区分支給限度額方式で訪問介護を算定する場合は、一人20分以上介護すること、2時間程度の時間を空けること等の通知を出していますが、事業者からすれば、そのように書類を整えればよいというだけですし、逆に入居者は、その制約によって介護サービスが受けにくくなります。

更に、都道府県・市町村では、その中身を精査せず、『外部サービス利用型も特定施設の一つ』として、総量規制に含めています。当然、事業者から見ても区分支給限度額のままで介護サービスを提供したほうが収入は大きくなるために、外部サービス利用型の指定は民間の高齢者住宅ではほとんど進んでいません。

ただ、このような制度の根幹に関わるような歪がいつまでも続くとは思えません。特に、この問題は逼迫する介護保険財政・社会保障財政に直結します。すでに医療保険における訪問診療、訪問看護の診療報酬は、高齢者住宅に対する単価が各自宅を回る報酬と区別して引き下げられています。

そのため、将来的には同様に高齢者住宅に対する区分支給限度額の算定は抑制され、外部サービス利用型に移行させられる可能性が高いと考えています。

そうなると、要介護5の高齢者に対するグループ全体で受け取る介護報酬は、35830単位から25870単位へと、1/3に、金額では約10万円下がることになります。