老いに勝つ (11)複雑化する認知症(2012年4月5日) 【中日新聞】

複雑化する認知症と題して下記の記事が掲載されていました。認知症の介護力を強化せねばなりません。
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5割がアルツハイマー型

以前、NHKで新しい形の認知症が注目されているという報道があった。それはレビー小体型認知症という。アルツハイマー型の認知症の場合は、幻覚などはないのが普通だが、これは実際には存在しないものが見えるという症状を呈する。

さらに調べると、レビー小体という小さな塊が脳の神経細胞の中にある異常だということが分かった。レビー小体が大脳の視覚野の細胞にあるので、幻覚が起こるのだ。

この認知症は横浜市立大名誉教授の小阪憲司博士によって見つけられたので、日本ではとくに注目されている。幻覚などは漢方薬の抑肝散(よくかんさん)によって良くなるので、なんだか治る認知症のように思われている。

しかし認知症の本来の症状である記憶障害とか、見当識(自分がどこにいるのか)というような能力は、この漢方薬で治らないだけでなく、この症状は比較的速く進むので、治療が困難な認知症といえる。

パーキンソン病では、運動をつかさどる大脳基底核という部分に信号を送り、神経伝達物質のドーパミンを分泌させる中脳の神経細胞にレビー小体が現れ、細胞を死滅させる=図。レビー小体はやがて大脳前頭葉にも現れ、認知症を引き起こす。

現在、認知症の50%がアルツハイマー型、30%が脳血管性、10〜15%がレビー小体型で、残りはいくつかの型の認知症と分類されている。

脳血管型は脳のいろいろなところに脳梗塞を起こし、脳細胞が死滅するために起こるが、アルツハイマー病の人は脳梗塞を起こしやすく、脳梗塞が起こると、老人斑のような病態が出やすいので、両者は密接な関係にあるといえる。

パーキンソン病の人は増えている。若い人にも起こる。この病気はドーパミンを出す神経が死滅するのだから、ドーパミンが減る。そこで治療にドーパミンの前駆物質のL−ドーパを用いるのだが、これは神経細胞の死滅を防ぐことはできず、病状を遅らせるだけだ。

アルツハイマー病の患者の血縁にはパーキンソン病の人が多く、パーキンソン病の患者の血縁の人にはアルツハイマー病が多いので、遺伝的にも関係するとされている。

(浜松医科大名誉教授・高田明和)

参考資料
認知症患者の発症率と将来推計