前回に引き続き日経ビジネス特集「老人ホーム革命」のポイントを整理します。

■日本が「介護破綻」する。国の財政が逼迫しているだけに今後、介護報酬が上がることは想定しにくい。厚労省によれば、2010年度に介護認定された人数は前の年度比22万人増の506万人に膨れ上がった。10年前の約2倍の数字で介護度3以上の比率も4割に上る。

■介護保険から支払う給付費も7兆円を突破した。今の制度を続ければ、2025年には20兆円に膨らむといわれる。

■高齢者は激増するが、介護士は集まらない。そして、介護コストばかりが膨張する。

■もう官のカネを当てにするだけでは、老人ホームは回っていかない。民間の感覚でサービス業として新商品サービスを生み出していくしかない。東京財団研究員の三原氏はそう読む。

■超高齢化社会をビジネスチャンスと捉え、介護に参入する企業が相次ぐ。しかし、現実は甘くない。そこは、国のルールに収益を左右される不自由な世界。既存の大手でさえ、事業モデルの転換なくしては生き残れない。

■「従来の介護付き有料老人ホームはその役割を終えつつある」(メッセージ橋本会長)。メッセージは業界でいち早く、介護付き有料老人ホームからサ高住へ、戦略転換することを表明した。

■目減りする介護報酬と生き残りをかけたビジネスモデルの転換を図る構図が見えてくる。

■冷める参入意欲。老人ホームの潜在需要は強く、今後も市場が拡大していくことは間違いない。だが、収益を上げるには、ハードルが高いビジネスでもある。新規参入を検討する企業も、そんな厳しい現実を認識し始めている。

■介護付き施設への参入熱が冷めようとしている中で、鼻息が荒いのが建設会社だ。補助金が見込めるサ高住を積極展開しようと狙っている。

■ある業界大手のトップは「10年前、老人ホーム事業に、異業種が相次いで参入して失敗した時とダブって見える」という。需要増を当て込んで参入したが、運営ノウハウもなく、赤字を垂れ流した。「国を頼りにしていたずらに施設を作っても、後で課題が噴出し、最後には入居者に迷惑をかける」と振り返る。
<次回に続く>