前回に続き「認知症の人を地域で(WEDGE Report)」のポイント(最終回)を述べてみたいと思います。これから認知症の高齢者の受け皿づくりを積極的に進めてゆかねばなりません。

■日本の精神科病院の病床数は世界的にみて圧倒的に多い。日本には明治以来、私宅監置という制度があった。精神障害者を親族が私宅に閉じ込め、警察が管理するという世界にも類をみない制度だ。

■1950年の精神衛生法施行でこれを禁止する際、2つの悪弊が残った。1つは、精神科病院増設に民間資本を活用しようと、「医師は他の診療科の3分の1、看護職員は3分の2でよい」という趣旨の「精神科特例」を設けたこと。もう一つは、本人の同意がなくても、保護者の同意で入院させることができる医療保護入院制度を創出したことだ。

■認知症PTと同時期に開かれた厚労省の有識者検討会では、精神科特例の廃止と、医療保護入院改革が議論された。両案とも病床と入院患者の減少につながる。日精協推薦の委員は抵抗を続けた。

■日精協は、長期高齢の在院者の「受け皿」として、精神科病床を介護老人保健施設に転換できるようにすべきと提案している。「老健への転換は看板の架け替えにすぎない」と反対論が相次いだが、担当の精神・障害保険課が作成したとりまとめには反映されなかった。

■認知症の人や精神障害者の長期にわたる施設収容が維持される介護型精神老健の創設は不適切だ。

■精神障害者の人権問題に詳しい八尋光秀弁護士はこう語る。「現状を追認した現実論から入れば改革はできない。世界中でやったことなのだから、2年なら2年で病床を削減すると決めた上で、具体的に地域で生活していく場をどう作るかデザインしていくべきだ。」

■薬物依存の人を社会復帰させるダルク(薬物依存リハビリセンター)という取り組みに関わっているが、その経験によれば入院より地域生活の方がコストも安い。

■自分がどう余生を暮したいか考えたときに、精神科病院への入院がいいという人はいないであろう。社会で支えようという覚悟を国民が共有することが大切だ。