これまで人口減社会を考えるシリーズで㊥まで要点を述べましたが、11月9日の日経新聞の経済教室で同テーマの㊦で、日本大学人口研究所長・教授小川 直宏氏が「高齢化の重荷軽減が急務」という内容で報告がなされています。

ポイントは次の3つ。

1.最近ほど若者の経済的独立が遅くなる傾向
2.高齢者が子供世代の安全網の役割果たす
3.労働所得のピーク時を51歳から伸ばす必要


高齢世代から子供世代・孫世代への経済支援パターンが出てきたのはバブル経済崩壊後の94年以降で、この傾向は今も持続している。高齢者は年金受給者なので安定収入があるのに対し、成人した子供世代はリストラ等で失職することがあり、又非正規労働者の増加などで高齢者が政府に代わってセーフティ-ネット(安全網)の役割を果たしている。

ただ、04年から09年にかけては、高齢者から若い世代への私的移転(ネットブロー)が実質・名目ベースともに減っている。08年のリーマンショックで高齢者の財産所得が減り(70歳代では実質で5%、名目で9%の減少)、経済的余裕が低下したことを反映しているのであろう。

年齢ごとにみた労働所得のピークは51歳だが、高齢化の進行にオーナス(重荷)状態の悪化をさけるために、これを52歳、53歳というように労働政策を実施しようというわけだ。計算によれば、53年までに労働所得のピーク年齢を9歳右(60歳)にシフトできれば、44年間はオーナスの悪貨を避けられる。

しかし、そうした労働市場の変化が起きると、60歳の労働所得は現在の1.7倍、65歳では3.7倍となる。労働所得の大幅な上昇に見合うように、中高年の労働生産性の向上を実現する必要がある。

若年人口にも目を向ける必要がある。そもそも人口高齢化が起きた主因は出生率低下であり、子どもの数を減らしても質を高めたいという親世代の考え方が背景にある。

しかし、09年の年齢別労働所得みると、多くの教育投資が実施されてきた我が国の若年世代の人的資本が十分に活用されているとはいいがたい。彼らのキャリア形成に役立つように高等教育を変革し、グローバル経済の中でも競争できるように雇用体系や賃金制度を改革することが必要だろう。

結論は、高齢者の生産性向上によ労働所得の向上(51歳からピークを60歳にシフトすること)と若年人口の活用の為の制度設計であろうと思います。ここに叡智を傾けねばなりません。