<前回に続く>

■医療界では、伝統的に質と効率は二律背反関係にあると考えてきたため、質を追求すれば効率は悪くなり、効率を求めれば質は犠牲になり、統合的な管理は無理であると考えられてきた。

■そして、効率管理は経営層の仕事であり、医療職は質い責任を持てばよいという、経営管理職と医療職との意識の溝と、それに根差した効率と質それぞれの管理活動の分離がみられてきた。

■こうした質と効率の二律背反観とそれに基づく管理活動は、米国の医療界でも1970年代まで支配的な考えであった。

■しかし、医療界でも質と効率は常に二律背反関係にあるわけではなく、特に両立可能であり、更には支援的関係(高い質は高い効率をもたらす関係)にさえあることが、80年代に理論的にも明らかにされ、90年代にはそうした認識が広まっていった。

■今後は経営管理職と医療職の間に立つ現場の医療管理職が中心となって、質と効率の管理活動を統合することが重要である。

■多職種からなる現場医療職の知識・知恵を結集して、質を維持しつつ効率の向上を図り、費用対成果の高い医療提供プロセスを構築する。つまり、医療管理職が主導下で現場医療職が一丸となって、費用対成果の高い医療サービスを設計開発していく必要がある。

■医療提供現場には、質と効率を両立させる知恵が眠っている。従って医療管理職主導の質と効率の統合的な管理体制の方が、「経営陣による効率管理」と「医療職による質管理」という体制よりも効率追求に伴い質が犠牲になってしまう危険が少ないと考えられる。

■具体策として、一つは、経営スタッフの育成あるいは確保である。現場の医療管理職にうまく働きかけ、また費用対成果を作り込むために必要な情報を提供できる適切な管理会計を構築し、それを有効に運用できる経営スタッフが必要となる。

■また現場医療職の知恵を活用して高い質と効率を医療提供プロセスに作り込んでいくため、彼らが積極的に知恵を出して費用対成果を高めるように、医療職の経営管理意識を高めておく必要がある。

■トップ経営層が経営スタッフの育成と医療職の経営管理意識を醸成に積極的に関わることが重要である。