スイスの老人ホーム 介護士不足 <前回に続く>

②未来の介護士を育てる

スイスでは、初級介護士が10代の若者が選ぶ見習い職で3番目に人気の職業だ。初級介護士の資格は、上級介護士の資格を得る際のベースとなる。この職を選ぶのは主に女子だが、男子の数も増加している。ベルン大学病院では見習い募集人数40人に対し、毎年300人の応募が殺到する。ただし、「興味があるだけでは不十分」と、同院で従業員の教育・訓練を担当するヘンリエッテ・シュミードさんは断言する。

■ドミシルのハインツ・ヘンニ最高経営責任者(CEO)は言う。「病院勤務に魅力を感じる若者は多いが、人生経験を積んだ人は長期的なケアができる勤務先を選ぶことが多い」

■これには、介護士としての経験のあるシュミードさんも同意する。「私が20歳だったころは、医療技術、特に手術に興味があった。それが普通だと思う。若いときは、老齢や慢性の病気といった問題には特に向き合おうとは思わないから」

③人材を引き留める

■そこで重要となってくるのは、いかに介護士を職場に留めておくかだ。精神面、心理面、肉体面でハードな介護職だが、「職場の雰囲気が良く、仕事が評価されるのであれば、従業員を引き留められる」とシュミードさんは言う。

■ドミシルでは従業員をねぎらうための制度を設けている。採用初年度には年5週間、45歳に達したら年6週間の有給休暇があり、退職制度も充実している。

■人材を集めたいスイスの老人ホームにとっては、仕事の満足度がセールスポイントになるかもしれない。バーゼル大学が国内の老人ホームで働く介護士5千人を対象にした2013年調査報告書では、介護の質は高く、全般的に介護士は自分の仕事が好きだということが分かった。

■しかし、時間に追われたり、仕事量が多かったり、人材が不足したりすることは仕事のストレスにつながっている。「従業員の数が減らされるのに仕事量はそのまま、ましてや増えるのであれば、じきに良い従業員を失うだろう」とシュミードさん。

<次回に続く>