スイスの老人ホーム 介護士不足 <前回に続く>

④外国人介護士の重要性

■バーゼル大学の調査報告書によると、老人ホーム運営事業者の9割以上が介護士の採用は難しいと考えている。さらに状況を厳しくするのが、欧州連合(EU)出身の労働者を含めた移民数制限法案が今月9日に国民投票で可決されたことだ。事業者は介護士を採用・維持するには新しいアプローチを探らなけれなばらなくなった。

■ドミシルの従業員は1350人おり、4人に1人が外国人だ。「スイス人よりも外国人を優先して採用しているわけではない」とヘンニさん。「募集してもスイス人が見つからないのだ」

■国民投票の結果を受け、今後は外国人労働者の採用が「もっと、もっと複雑になる」と、ドミシルのフランチスカ・ホネッガー人事部長。だが、必要な数の外国人スタッフは雇用できるようにしていきたいという。

■ドミシルでは様々な戦略で人材を採用している。一度離職した人が職場復帰しやすいよう特別支援プログラムを設けるかたわら、見習いを141人受け入れ、EUのパートナー企業と協力している。また、EU域外出身の労働者受け入れプログラムにも参加している。しかし「(EU域外出身者向けの)労働許可を取得するのは非常に困難」とホネッガーさんは付け加える。

⑤イノベーション

■高齢化社会のニーズを満たすには様々なレベルでイノベーション(革新)が必要だと、バーゼル大学の研究調査の共同執筆者ザビーナ・デゲーストさんは話す。介護士の養成方法、老人ホーム、介護方法、病院及び家庭医との連携、研究などの分野で新しいアプローチが求められている。例えばシニアに優しいデザインの家具や、老人ホーム入居者の希望を直接聞くことはこれまであまりなかった。

■デゲーストさんは言う。「年を取り、人に頼るようになることは、人生においてとても基本的なこと。(高齢者の介護では)テクノロジーは解決策にはなりえない。結局は人が介護をすることになる」