<前回に続く>

■例えば、ドイツでは連邦医師会の終末期に関する事前ルール(ガイドライン)に治療に差し控え・中止の判断基準という形でスイッチが設置されている。具体的には「治療効果が望めない場合には、全ての選択肢を患者に説明した上で、治療の差し控えか中止を推奨する」と定められている。患者は、医師の提案に同意することでスイッチを押す。ガイドラインに従っている限り、医師は連邦医師会により法的に保護されている。

デンマークでは、加齢で身体が衰弱したり栄養摂取が困難になったりした場合がスイッチである。スイッチを押す人は、患者や家族と信頼関係にある総合診療医(GP)である。ドイツのようにルールがなくても問題が起きないのは、老衰などに積極的治療を行わないという社会的合意があるためと考えられる。

■03年に医学雑誌ランセットに掲載されたロッテルダム大学のハイデ医師らの研究によれば、デンマークで終末期と診断された場合は、若年層も含めた全体の約3分の1で、QOL重視への切り替えが実施されている。

米国では高齢者向け公的医療保険(メディケア)に「ホスピス給付」というスイッチが導入されている。医師に余命半年と診断されると、従来通り治療を続けるか、ホスピス給付でQOL重視に転換するかを患者が選択できる。このスイッチを患者が押すと患者負担はほぼ無料となり、必要であれば家事ヘルパーやカウンセラーも利用できる。

■日本の現状では、このようなスイッチやそれを押す人が曖昧である。今回の診療報酬改定の効果を十分なものにするためにも、医療の目的を転換する仕組みや意思決定の担当者を明確にする必要がある。