<前回に続く>

■外国人労働者の受け入れを巡る議論で重要なのは、第1に、建設業などの人手不足に起因する短期的な受け入れと、人口減少に伴う長期的な移民の受入は、別次元であるということである。

■短期的な対応の筆頭に置かれるのは、単純労働者であることが多い。滞在は数年単位で、景気の変動とともに需要も増減する可能性が高いと考えられる。これに対し、長期的な対応で目的とすべきなのは、高度な技能を持つ人材を、日本経済の成長の起爆剤となるパートナーとして迎えるということである。

■人口減少のもとで持続的な成長を継続するには生産性の向上が欠かせない。経済を供給面からとらえると労働力、資本、生産性の3要素であるが、労働人口の減少は確実である。だからこそ海外からの高度人材を受け入れてイノベーション(技術革新)を促し、国内人材との競争を通じて生産性を高めていく戦略が必要となっているのである。

■第2に、高度人材の受入を前向きにとらえたとしても、急速に人口が減る日本で、減少分をそのまま海外からの移民で補うことは、ほぼ不可能だということである。減少分を埋めるには1000万人単位の受入を考える必要があるが、社会的コストがあまりに大きくなる。

■そもそも日本における移民数は経済協力開発機構(OECD)加盟国でも圧倒的に少ない。OECDの統計によればここ数年の日本への移民数(定住者に限る)は年5万~6万人であり、総人口に占める割合は0.05%と加盟国で最も低い(平均は0.36%)、また、住民基本台帳に登録されている外国人は13年3月時点で198万人、総人口の1.5%に過ぎない。

■当面は人口規模が安定するまでの間、補助的な政策手段として、海外から行動人材を受け入れて生産性上昇のきっかけにする、というのが長期的な戦略となろう。

<次回に続く>