関西学院大学教授 井口 泰氏が人材獲得への環境整備の重要性を訴えておられます。まとめの部分を掲載しておきます。

■アジアから日本への流入圧力は依然として高いものの、アジアで事実上の経済統合が進んだことで、日本以外のアジア諸国に流れる低技能労働者は増え、獲得競争は厳しさを増している。我が国では05年から日本人の人口減少が進んでいるが、実は外国人の流出も08年~12年に拡大した。

■現在、政府は高度人材に対する政策を重視し、学歴や年収などをポイント化し、一定水準になると優遇措置を与えるなど受け入れ条件の緩和を進めている。

■一方で低技能労働者に対する政策は過度に軽視されている。日本に居住する大多数の外国人に対する日本語講習、雇用促進と職業訓練、子弟の教育をはじめ、外国人の権利の確保や社会参加の支援は地域・自治体に委ねられているのが実態だ。

■外国人労働者を高度人材と低技能労働者に二分し、高度人材の受入のみを議論してきた従来の政策は、これまで見てきた同市場の密接な関係を考えると一貫性がない。

■高度人材か否かにかかわらず、日本に必要なのは、外国人が日本で働き、家族を養い、次世代を育てる魅力的な環境を整備することである。それには年金・医療の面で不利にならない社会保障協定の締結や、在日2・3世の教育環境を改善する国による社会的投資が不可欠だ。

■今は就労が認められていないミドルスキル職種でも、留学終了後、在留資格を変更して就労できる制度を設けるべきである。

■低技能分野では、一時的に在留を認める「ローテーション方式の技能実習制度は、経済統合が進むアジアにおいて、人材育成を通じた関係強化に重要な役割を果たし得る。今後、帰国者の再来日の条件緩和だけでなく、優秀な人材が安定した在留資格に移行できる仕組みの導入を検討すべきであろう。