<前回に続く>

「治す医療」から「納得できる生き方へ」を支援する医療へ
・日本の高齢化が急速に進み、今のような高齢社会になり、大きな問題に直面するであろうことは、40年、50年も前から予測はされていた。

・しかし、その当時は経済成長とともに生活がどんどん豊かになっていったので高齢化が進んでもその結果どのような問題が出てくるのか、実感として迫ってくることはなかった。こんな深刻な問題になるとは誰も思っていなかったのである。

・これまでの制度やシステムが機能しなくなるほどの時代の大きな転換期であるので、何よりもまず、どんな社会をめざすのか、どんな国にしていくのかという国家戦略をはっきりさせねばならない。これが決まらないと医療についても、どんな医療を目指すのかがはっきりしてこない。

・医療もこれまでの「治す医療」を目指すだけはだめである。100歳を超えてまで徹底して治すということよりも、その日1日1日をどうやって納得できる生き方をするか、そのための医療がどう支援できるかを考えることのほうが、はるかに大事ではないかと思う。

・超高齢社会における最大の医療需要が高齢者にあることは間違いないことであるから、何よりもまず高齢者にふさわしい医療とは何かが、もっと真剣に考えられねばならない。高齢者には高齢者特有の病気があり、病態があるので、それに合わせた医療が必要である。

・そして、高齢者が医療に何を求めているか、高齢になればなるほど、徹底的に治すという医療よりも、ときには病気と共存してでも、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を落とさないような医療を求めていることははっきりしている。ということは、そのような医療を行うことができる医者を育成して配置し、そのような医療が提供できるような仕組みや体制を構築していくのは当然のことである。

<次回に続く>