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「住まい」の機能は切り捨て特養待機者数増大など新たな問題も

だが、宅老所の4つの機能を丸ごと受け入れるサービスはない。小規模多機能型の3機能から「住まい」が欠けてしまった。なぜ「住まい」だけが切り離されたのか。厚労省の答えは理解し難い。「住まいを含めると、それだけを目的にされてしまう」。つまり、「住まい」だけに特化したグループホームの絶対数が不足していることを知りつつ、そのうえでの新サービスの新設なのだ。

■グループホームが足りないのは、06年度から管轄を都道府県から市町村に移したため、介護保険料を増やしたくない市町村が新設を抑制し始めたからだ。介護保険のスタート時から順調に広がっていたのに、急に開業数が減少し、現在は入居者数が18万人と低迷している。

■最期まで暮らし続けるために必要な「住まい」が不足しているのを承知しながら、切り捨ててしまった。小規模多機能を在宅サービスの柱と位置付けたのはいいが、多大な需要に応える方策を採らなかった。不可解としか言いようがない。

■そのために、特養入所の待機者数が増大したり、「お泊りデイサービス」がじわじわと広がり出すなど制度内で解決できない新事態の出現を招いた。「お泊りデイサービス」については重大事なので今後の連載で触れていきたい。

■それでも、こうした一連の認知症ケアを目的にした在宅サービスが登場し、宅老所に近い「寄り添うケア」を実現させた意義は大きい。入居者と一緒に調理したり、買い物に出向くなど「食」に拘りながらの素晴らしいケアは北欧諸国にも見られない。こうした前向きな「生活モデル」の認知症ケアがある一方で、従来の「病院モデル」を抱えた前時代的な病院でのケアがまだ残っている。

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