<前回に続く>

※水道維持できず

■日本の総人口は1億2704万人。ピークの08年から104万人減った。深刻なのは世代のひずみだ。15~64歳が400万人弱減り、65歳以上が400万人超増えた。横浜市の人口を上回る規模の年齢構成の変化に耐えかね、あちこちで社会が傷み始めている。

■「このままだと水が出なくなります」。5月、埼玉県秩父市の担当者は住民に頭を下げた。水道管の老朽化で家に届くまでに3割の水が漏れ、修復のために水道料金を上げる計画だからだ。人口減で料金収入が減り、本来35%の値上げが必要。だが「負担が重い」と市議会が反発して半額にとどめ、一般会計で不足を埋める綱渡りになる。

■防災にも影を落とす。南海トラフ巨大地震への備えを急ぐ愛知県瀬戸市。消防団員は定数の268人を18人割り込んだままだ。「助かる命も助からない」(消防本部)。飲食店での割り引き特典を付けるなど躍起だ。

■農村から都市に広がり始めた人口減の打撃。民間有識者による日本創成会議が5月に公表した独自の人口推計は、20~39歳の女性が40年までに半減する896自治体を「消滅可能性都市」とした。このなかには青森、秋田、旭川など279もの市が含まれている。

■外壁や窓は落下し、鉄筋は腐食――。都市では小中学校の老朽化が深刻だ。築30年以上の施設の割合は政令指定都市で6割を超す。国の試算では、全国の小中学校の施設維持にかける支出を今の学校建築費の年8千億円より抑えようとすると、施設を35%減らすと同時に、約40年の施設の寿命を改修によって築80年まで延ばす必要がある。