<前回に続く>

安全基準満たしていないが入居費・食費安い
東京・江戸川区の木造2階建の一軒家では、7人の高齢者が介護を受けながら暮らしている。月の料金は食費も入れて15万円。平均的な老人ホームより10万円安い。廊下の幅や部屋の広さ、消火設備などが国の定める老人ホームの基準を満たしていないため「無届け」だ。基準を満たすための工事などを行うには「採算的な問題がある」(経営者)が、自治体や病院からの依頼で高齢者を受け入れ、常に空きがない状態だという。

7年前から暮らしているという86歳の女性は、体調を崩して自宅で一人で暮らせなくなった。家族はいない。収入が少ないため入れる施設はここだけだと、区役所から紹介されて来たという。

「行くところがないから、ここが一番いい」(入居者)
「やっちゃいけないと言われればやめます。でも、入ってる人たちはどうするんですか」(経営者)

特養間に合わず、自治体・病院も頼みの綱
こうした無届け施設は、行政の目が及ばないことから安全や衛生面が懸念されている。高齢者160人が暮らす東京都内マンションで3年前の冬、インフルエンザやノロウイルスが蔓延して28人が次々と死亡した。

老人ホームで集団感染が発生した場合は保健所に報告する義務があり、保健所から衛生上の指導を受ける。無届け施設は野放し状態だという。元職員は「閉鎖された空間。何事もなかったように済まされてしまう」と話す。

自治体側にとって無届け施設は頭の痛い問題だ。東京・世田谷区は地価の高さなどから高齢者施設の建設が進まず、2300人の入所待機者がいて、無届けの施設に頼らざるをえないという。

保坂展人・世田谷区長はこう話す。「待機者が大変多く、高齢者施設が少ないということで、無届けの場所があるというのが現実です。そこをどう解決していったらいいのかは大変悩ましい」