<前回に続く>

なぜ認知症の「訪問介護」はないのか
 では、現行の介護保険の中で認知症高齢者向けのサービスはどのようになっているのか。(2)のなかで、「認知症グループ―ホームは認知症ケアの拠点」と位置付け、「認知症対応通所介護(デイサービス)」の展開が期待されているとある。共に、介護保険スタート時から設けられたサービスだ。今更強調すべきことではないだろう。

この2つのサービスは「入所」と「通い」である。ではなぜ「訪問」がないのだろうか。「認知症対応訪問介護」というサービスが、単なる訪問介護とは別に設定されてもいいのではないだろうか

認知症ケアに精通したヘルパーが自宅に来て、お茶を一緒にしたり昔のアルバムを見ながら思い出話の相手になってもらう。長い時間をかけて話を聞くだけでもいい。介護家族はその合間に買い物や趣味の時間を採ることができる。

 掃除や洗濯など決められた作業を極めて短時間にこなす現行の訪問介護は、身体介護を必要とする要介護者向けのものである。認知症者向けが別にあるべきだろう。天気の話から始まって、トランプや百人一首、歌、手芸、リンゴの皮むき、キャベツの千切りなど、本人が得意なこと好きなことを付き合う。5~6時間も一緒に過ごすことができれば、家族にとってレスパイト(*)効果は大きい。

 実は、認知症高齢者が好みの時間、気持ちが休まる時間を過ごせるように支援することこそ認知症ケアそのものであるはず。遠方まで外出するデイサービスや入所のグループホームでは実践されている。同じことを自宅で楽しむ、それが認知症訪問介護である。

 新オレンジプランで盛り込んでいれば、評価が高まったはずだ。

(*)一時的中断、延期、小休止などを意味し、介護する側を一時的に休ませ、リフレッシュさせることを指す。