地域医療を考える:地域包括ケア病棟 慣れた住まいで暮らし続けるために
毎日新聞 2015年04月24日 大阪朝刊

地域包括ケア病棟について研究を進めています。介護とどのように連携をすべきか、我々のような高齢者住宅はどのような役割を果たすべきかについて研究を進めて参りたいと思います。
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◇高齢者の在宅復帰支援
 厚生労働省は高齢者が人生の最期まで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるために、住まい、医療・介護・予防・生活支援を一体で提供するシステム「地域包括ケア」の整備を進めている。

土佐市立土佐市民病院(土佐市高岡町甲)は、脳卒中や骨折などで入院した患者がスムーズに在宅療養へと移行できるように「地域包括ケア病棟」を設置している。この病棟は地域包括ケアシステムにおける医療から介護、生活支援への懸け橋ともいえる。田中肇院長にその役割と現状を聞いた。

 ◇「急性期後」の治療やリハビリ
 −地域包括ケア病棟を設置されたのはどうしてですか。

 ◆脳卒中の後遺症や認知症の高齢者が住み慣れた場所で最期まで地域の人々とともに暮らしていけるためには、医療と介護、福祉がうまく連携していかなければなりません。これからますます高齢者人口が増えていくことが予想され、厚生労働省も高齢者を地域で支えていくシステム「地域包括ケア」を整備しています。

 昨年から一定の条件のもとで、急性期医療から在宅医療への橋渡し的な役割の「地域包括ケア病棟」を設置することができるようになりました。この地域でも高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増え、医療と介護の連携が不可欠な状況ですので、昨年7月に設置することにしたのです。

 −もう少し具体的に説明してください。

 ◆病棟が設置される前は、患者さんの治療が終了した時点で、そのまま自宅への退院が困難な場合には、回復期の治療やリハビリのできる病院に転院してもらい、その病院から在宅への移行、もしくは長期療養の可能な病院への転院というシステムになっていました。

 しかし、現在は家に帰るまで同じ病院で治療やリハビリを続け、在宅生活へ向けての準備(介護保険など)を行うことができるようになったのです。急性期の治療から在宅生活への移行がよりスムーズにできるようになったわけです。


 −患者さんにどのようなメリットがあるのですか。

 ◆転院しなくてもいいので、患者さんは看護師やリハビリをする理学療法士など病院内のスタッフと新たな関係を結ばなくてもいいですし、慣れた環境ですので精神的にも楽です。また同じ医師が継続的に診ることができ、最適な治療やリハビリを提供することが可能になったのです。また地域スタッフとの連携においても入院前、入院時、回復期、在宅移行期と、トータルに情報共有ができるようになりました。ひとりひとりの患者さんにとって最適な生活を地域とともに支える、まさに地域包括ケアの一助となっていると言えます。

 −医療スタッフにとって病棟ができたことで変化はありますか。

 ◆医師、看護師、理学療法士や医療ソーシャルワーカーの連携がより密になりました。また、患者さんと接する時間が長くなるので、患者さんの全体像やご家族のことが今まで以上に詳しくわかるようになり、どのように生きてこられたのか、またこれからどのように生きていきたいのかなど、より深いところまで理解できるようになりました。その結果として、在宅で療養できるようになる患者さんが増えてきました。

 −どうして増えてきたのですか。

 ◆さまざまな要因がありますが、これまでの退院支援と違い比較的、時間をかけて対応できるようになったことです。具体的には医療スタッフ同士の検討だけでなく、患者さんや家族も交えてじっくりと話し合いができるようになったことですね。また、院内のスタッフだけでなく、患者さんの退院後に関係する人たちと具体的な打ち合わせを細かくできるようになったことも大きな要因だと考えています。

 −退院後に関係する人たちとは。

 ◆在宅療養において介護が必要な患者さんが多いので、ケアマネジャーやヘルパー、訪問看護師です。これまでも退院支援としてこれらの人たちとの連絡はありましたが、それほど密ではありませんでした。病棟ができてから、患者さんや家族を交えての検討会を何度も行うことができ、患者さんや家族のことをよりよく知ってもらえるようになり、よりきめ細かなケアプランを立てられるようになりました。

 あるケアマネジャーは「これまでは病院の敷居が高かった」と言っていましたが、今は顔が見える付き合いですので、在宅療養において医療的にどのような問題があるのかを率直に話してくれるようになりました。それによりケアマネジャーやヘルパーに適切なアドバイスができるようになったのです。

<次回に続く>