<前回に続く>

先進事業者は「オープン型」高齢者住宅へ

 重要なのは、集合住宅減算に象徴されるような今改定に込められた意味を読み取ることである。「減算の対象を拡大したのは、『高齢者住宅事業者は入居者だけにサービスを提供するのではなく、地域のケアの拠点としての機能を拡充せよ』というメッセージだと受け止めている」。ある高齢者住宅の経営者はこう語る。 

実は4月16日に国土交通省が発表した「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」の中間とりまとめからも、同様のメッセージがうかがえる。検討会では今後の施策として「周辺地域へのサービス供給拠点となるサ付き住宅の整備促進」が掲げられている。

また市町村がサ付き住宅の供給量を高齢者居住安定確保計画の中に明記し、開設を制限していくといった「総量規制」を思わせる記述も見られる。補助金制度も供給方針に沿ったものに重点化する方針が示されており、要注目の内容だ。

 中には将来を先取りし、機敏に対処する高齢者住宅事業者も出始めた。例えば、訪問介護事業所の併設をやめ、地域の在宅高齢者に対してもサービスを提供するスタイルに切り替えたり、看護小規模多機能型居宅介護事業所などを併設した高齢者住宅を開設し、地域の在宅高齢者に対してもサービスを提供するといったケースである。「オープン化」がこれからのサ付き住宅のトレンドの1つになりそうだ。

 目先の減算回避もさることながら、より重要なのは制度の先を見据えて手を打つこと。高齢者住宅市場は、サ付き住宅のブームなどで急成長を遂げてきたが、時流に乗っていれば経営が成り立った時代は、今改定で一区切りが付いたといってよい。「いよいよ経営手腕が問われるステージに突入した」というのが率直な感想である。