◎動き出した地域医療構想と公立病院改革病床再編が加速、急性期縮小に動く病院も続々?
2015/5/11 日経ヘルスケア 豊川 琢氏

地域医療構想が動き出し始めました。病床再編に向けて動きが加速度化して参ります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今年4月、各都道府県で「地域医療構想」の策定作業が始まった。診療機能別に病床数の過不足を明らかにして、病床配置の「適正化」を図ろうとするものだ。実現すれば、地域の医療提供体制が大きく塗り替わる可能性もある。

 厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で、来年4月の診療報酬改定に向けた具体的な議論が始まった。近年の改定では、高齢化による疾病構造の変化に対応するため、看護配置7対1の急性期病床を絞り込み、急性期後の入院医療や在宅医療の拡充を促す点数設定が行われている。次期改定でも、急性期病床の絞り込みを柱とする病床再編がメーンテーマになるのは間違いないだろう。

診療機能別の整備目標を設定
 厚労省は、診療報酬改定だけでなく、様々な仕掛けにより病床再編を進めようとしている。その1つが地域医療構想だ。

団塊世代が全て75歳以上になる2025年に向け、地域医療提供体制を再構築するためのプランで、今年度中に都道府県が作成する。

 全ての病院・有床診療所からの病床機能報告により現状の医療資源を把握した上で、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の機能別に、2025年の医療需要や必要病床数を原則二次医療圏単位で推計。整備目標を設定し、その実現に向けた計画を策定することになる。

 例えば、ある二次医療圏で「高度急性期」や「急性期」の病床が過剰となり、回復期以降のステージを担う病床が不足すると見込まれたら、都道府県は急性期後の入院医療の拡充を図るプランを練る必要が出てくる。

 構想の実現は医療機関同士の協議によることが基本だが、調整の難航も予想される。そこで、協議で調整できない場合、その地域で過剰とされた病床区分への転換計画の中止や休眠病床の削減を要請できる権限が都道府県知事に与えられた。公立病院などに対しては、知事が「指示・命令」をすることもできる。

 さらに、将来的には地域医療構想をベースにした医療法の病床規制が導入される可能性もある。現在の一般病床、療養病床などの区分を「高度急性期」「急性期」「回復期」などと細分化し、それぞれの基準病床数を設定。過剰地域では増床や新設を認めないというやり方だ。

 公立病院については、別の側面からも病床再編を迫られている。総務省は3月31日、「新公立病院改革ガイドライン」を公表した。同省が初めてガイドラインを設けたのは2007年のこと。経営の効率化や再編・ネットワーク化に一定の成果を上げたが、新しいガイドラインではより一層の改革を促している。

 その核となるのが、交付税措置の見直しだ。これまでは各病院の許可病床数を基に決定していた交付税の配分(1床当たり約70万円)を、稼働病床数ベースに変更する方針が示された。つまり、休眠病床が多い病院は交付税が大幅に減ることになる。

<次回に続く>