<前回に続く>

仕事を増やしたくない自治体担当者

 自己作成プランが普及しないもう一つの壁は市町村自治体の後ろ向きな姿勢にありそうだ。

「全国マイケアプラン・ネットワーク」の2009年の調査によるとそれは明らかだ。全国の保険者自治体の中で回答のあった896自治体に自己作成の態勢がどの程度整っているかを以下の3項目で聞いている。

(1)保険者発行のパンフレットに自己作成を記載している
(2)自己作成の相談を受ける担当者を決めている
(3)自己作成の手引書を作成している

その結果、各項目で「なし」と解答してきたのは、(1)が76.6%、(2)は65.0%、(3)は87.7%となった。大半の自治体で腰が引けていることがよく分かる。自己作成の普及への意識を問うと「積極的」と「やや積極的」で3.8%に過ぎなかった。

 この調査で、自治体担当者に自己作成についての問題点を聞いているが、その9割近くが「ケアプランを自己作成にすると、利用者からの問い合わせと相談に追われてしまう。プランのチェックや手続きが相当の業務負担となる」と回答してきた。つまり、仕事量を増やしたくないのである。

 この調査を裏付けるような現場の声はよく耳にする。住民が自己作成できることを知って、自治体に手続きに行くと「難しいからやめた方がいい」と断られるケースが各地で頻発している。門前払いを食わす自治体がまだ多い。

 千葉県流山市のAさんもその一人。かつて、自己作成を始めようと市役所を訪れると「複雑で重労働ですから」と暗に拒絶されてしまった。その後、粘り強く折衝を重ねて、自己作成への道を開いた。

 だが、多くの住民は、自治体から前向きな返事をもらえなければ諦めてしまう。介護保険は地方自治体にとって、「地方分権・地方主権の試金石」と当初言われたが、この体たらくでは失格と言わざるを得ないだろう。