認知症:社会的負担14.5兆円 医療、介護費用など試算 厚労省
毎日新聞 2015年05月30日 東京朝刊

認知症の社会負担について初めて試算がなされています。この負担を抑えるための社会インフラの整備が不可欠です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■認知症患者の医療や介護の費用、家族らによる日常的なケアなど、認知症にかかわる社会全体の負担(社会的コスト)が、年間約14兆5000億円に上ることが、厚生労働省研究班の推計で29日明らかになった。

■国内総生産(GDP)の3%に相当する。国内の認知症の社会的コストが試算されたのは初めて。高齢人口がさらに増える2060年には、約24兆3000億円に膨らむ見込みという。

■推計の対象は、14年に医療機関にかかったり、介護サービスを受けていたりする認知症患者約200万人。

■医療費は全国の医療保険の診療報酬明細、介護費はサービス受給者数と平均利用額から計算した。無償で実施されている家族らのケアは、認知症患者を介助する全国4236人に調査用紙を送り、食事や入浴の介助など在宅ケアの内容と時間を質問した。回答のあった1685人のデータから、支払われたはずの労働対価を計算した。

■推計の結果、年間の社会的コストの内訳は、入院・外来医療費1兆9000億円▽施設・在宅介護費6兆4000億円▽家族らによるケア6兆2000億円(要介護者1人当たり382万円)−−となった。

■研究班主任の佐渡充洋・慶応大助教(精神・神経科学)は「これまで見えていなかった無償ケアの負担が大きいことが分かった。社会全体で介護者を支える仕組み作りが、患者の生活の質を向上させるうえでも重要だ」と話す。

■別の厚労省研究班の推計では、12年の国内の認知症患者数は462万人。

■予備群である軽度認知障害の高齢者も約400万人いるとされ、医療機関や介護施設にかかっていない人も含めると社会的コストはさらに膨らむ可能性がある。【阿部周一】