“手厚い看護”が評判の高齢者ホーム 重度者受け入れや看取りも

地域包括ケアの受け皿として居宅系高齢者ホームの受け入れ体制をどう作るかを苦心しています。どうしても医療依存度の高い高齢者が多くなり、医療体制の強化は避けて通れません。少し古い記事ですが、果敢に取り組んでおられる高齢者ホームの事例が紹介されていましたので、掲載させて頂きます。参考にしたいと思います。

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「医師が来なくなった」「救急車対応が増えた」――。  今春、各地の高齢者ホームで、訪問医(在宅医)が診療に二の足を踏む事態が起きた。4月に医療行為の公定価格である診療報酬が改定。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの集合住宅で、同一日に複数の患者を診る場合の報酬が最大で約4分の1にまで引き下げられたからだ。  全国特定施設事業者協議会など高齢者ホームの事業者団体が6月に報酬改定後の動向を調査したところ、1764カ所のホームのうち8.8%で医療機関が変更となったほか、「診療時間が短くなった」「緊急往診が減った」などの影響が出ているという。

 改定のきっかけは、一度の訪問で多数の患者を“まとめて”診察できる高齢者ホームで、訪問医が事業者に手数料を払って診療を請け負う事例が各地で相次いだからだ。国は医療費のかさむ入院治療を削減するため、手厚い報酬で在宅医療を誘導してきたが、仲介業者による「患者紹介ビジネス」まで生むことになり見直しを余儀なくされたのだ。  だが、あまりの大幅な減額に、現場からも「退院患者の行き場がなくなる」といった不安の声があがっている。  そんななか、独自の運営で重度者の受け入れや看取りに取り組む高齢者ホームもある。住宅型有料老人ホーム「住ま居るメディカ」(岐阜県多治見市)は、入居者の大半が医療処置の必要な患者で、その約7割は病院からの紹介患者だ。 「入院日数の短縮化で、医療依存度の高い要介護者が増えていますが、生活感のある場所で最期まで療養してもらえるのが強みです」  こう話す井下宣広社長は、現場にも出る看護師だ。ホームの立ち上げ前に大学病院の救命救急センターで看護技術と判断力を磨き、勤務先で知り合った介護福祉士兼ケアマネジャーの石川敏幸副社長とともに「ほかのホームがまねのできないケアを提供しよう」と、2年前に住ま居るメディカを開設した。  同ホームの特長といえるのが手厚い看護態勢だ。定員は16人と小規模だが、日中は2人の看護師が常駐する。介護職員から「尿のにごりが気になる」「皮膚に赤みがあるので褥瘡(じょくそう[床ずれ])の兆候かもしれない」などと相談が持ちかけられると、看護師が部屋に出向いて状態を確認し、対応策を助言する。両者が一緒に介助することもある。 「介護職員は日頃の生活状況をよく見ていますから、ちょっとした異変にも気づいてくれます。早めに対策を検討できるので助かっています」(井下社長)  同ホームの入居一時金は25万円、月額費用は14万3400円(食費込み、介護費は別途)。入居者はケアマネジャーと相談のうえ訪問介護やデイサービスなどを利用するが、介護保険で賄えない分や緊急時は、ホーム常駐の看護師が臨機応変に対応する。その分は月額費用に含まれるので、重度者でも費用が高くなる心配はない。  住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は入居者が介護事業所を自由に選択できるが、一般的には併設または系列の介護事業所を利用する例が多い。高齢者ホーム側もその分の介護報酬(介護費用)を見込んで事業計画を立てる。ただ昨今は、入居者の「囲い込み」が不要なサービスの誘発につながりかねない、と問題視されている。  この点について井下社長は、異論を唱える。 「もちろん入居者の選択を阻害することがあってはいけません。ただ、住まいとサービスの事業者が同じほうが職員同士の連携がしやすく、サービスの変更などの融通もききやすい。ケアの方法について話し合う会議を招集しやすいという利点もあります」  確かに取材中も職員同士が入居者のケアについて話し込む場面がよく見られた。立ち話がいつの間にかケア検討会議に様変わりしていることも少なくない。実際、同ホームのチーム力は地域でも評判だ。多治見市内の病院で患者の退院支援を担うソーシャルワーカー(相談員)はこう評価する。 「高齢者ホームの多くは『こういう状態の患者ならば受け入れます』と自分たちの物差しで考えがちですが、住ま居るメディカは違う。連絡すると職員数人がすぐに飛んできて、患者の状態を把握したうえで具体的にどんなケアを提供できるのか提示してくれるので助かります」 週刊朝日  2014年11月7日号より抜粋