<前回に続く>

問題は、国庫負担分の支給を行わない対象をどこまで広げるかだが、専門家によれば、モデル年金以上の世帯に対して、年金額に応じて基礎年金の国庫負担分を抑制すれば、最大で2.5兆円くらいの国庫負担分を浮かせることができ、そこそこの形になるだろうという。

しかし、「モデル年金以上では厳しすぎる」として(もう少し)高額年金の高齢者に限定すれば、当然であるが低所得者に回す国庫負担分は少なくなる。民主党は以前、最低保障年金の創設を提案した時に高所得者の反発を恐れてか、「トップ3~10%くらい」と提案した。しかし、「それだけでは低所得者に回す分が足りません。本気でやるなら、モデル年金以上くらいを基準にしなければダメです」と言う。

最低保障年金は、低年金者・無年金者に最低限の生活費を保障するのが目的である。その支給額(基準額)をいくらにするかだが、民主党が以前に提案した月額7万円で考えてみよう。そうすると、月額4.8万円の年金収入しかない人は7万円との差額を受け取れることになる。それでも生活が苦しいことに変わりはないが、他に住宅補助などを受けられれば最低限の生活を送ることは可能であろう。

最低所得保障の導入と共に強く求められるのは、低所得高齢者向けの住宅補助である。

実は日本の住宅対策は先進国のなかで最悪レベルにあり、下流老人の多くが民間賃貸住宅の家賃の支払いに苦しめられている。日本には低所得者向けの公営住宅はあるが、圧倒的に数が足りない。欧米は公営賃貸住宅が充実していて、フランスやイギリスでは全賃貸住宅の約20%が公営だが、日本はわずか3%程度にすぎないという。

公営住宅の供給が少ないために入居するのが非常に難しい。例えば、都営の高齢者向け賃貸住宅「シルバーピア」はバリアフリー化されて緊急対応サービスもあり、家賃も単身用は1万円台後半と格安のため大変人気がある。しかし、2016年2月に行われた抽選会の結果を見ると、目黒区八雲の住宅が254倍、文京区本郷の住宅335倍というように宝くじのような倍率だ。

日本の下流老人の多くは公営住宅に住むことができないため、仕方なく民間賃貸住宅に住み、「家賃を払ったら、手元にお金がほとんど残らない」という状況に追い込まれている。家賃補助があればなんとか暮らしていける、という下流老人は少なくないのである。

<次回に続く>