地域包括ケアの実現を目指して、来年の医療・介護報酬の同時改定を契機に更なる地域連携を進める動きが始まっています。
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2018年度 同時報酬改定 地域で連携、退院支援ルール作り 在宅ケア、求められる安心


国は患者の療養の場を「病院」から「在宅」へと移行する動きを加速化させている退院後に家で安心してケアを受けるには、医療と介護の連携が欠かせないが、体制構築はまだ途上だ。地域では、病院と関係者間のルールを作るなど、連携の試みが始まっている。【細川貴代】

 福島県郡山市など12市町村で構成する県中医療圏は「退院調整ルール」を作成し、2016年度から運用している。患者の入院が決まった段階から、病院側と介護プランを作る地域のケアマネジャーらが、患者のスムーズな在宅移行のため必要な情報共有の流れを示したもので、地域のほぼ全医療・介護関係機関が参加し、成果も出ている。

 昨年8月、郡山市の太田熱海病院に、70代の女性が心不全で入院した。認知症があり、薬を飲み忘れて病状が悪化し入退院を繰り返していた。同居家族も持病があった。病院で退院支援を担う医療ソーシャルワーカーが本人や家族との面接を重ね、女性の「家に帰りたい」という強い希望を確認。入院前から女性を担当するケアマネから自宅の様子を聞き取りつつ、院内では多職種で退院後の生活を見据えた治療やリハビリを検討した。



 服薬や体調管理ができるよう、病院ワーカーは訪問介護や泊まりサービスも受けられる「小規模多機能型居宅介護」(小多機)の利用を提案。退院調整会議で本人と家族、ケアマネらと自宅生活の注意点を確認した。だが、退院後しばらくすると、女性は小多機に通わなくなった。病院ワーカーは新たなケアマネを探し、訪問看護など他のサービスを検討し支援した。

 7月で退院半年が経過したが、女性は自宅で生活を続けている。遠藤利子看護部長は「これまで患者の在宅情報がほとんどない中で病気の治療が行われていた。医師の在宅への関心も高まり、在宅を見据えたケアが可能になった。患者を安心して地域に戻せるようになった」と話す。

入院前から要介護認定されていた患者に限れば、ルール運用後、退院時に病院側からケアマネに引き継ぎがなされなかった「退院調整もれ」は、31%から18%(開始9カ月時点)に改善した。医療と介護職の相互理解も進み、同市の居宅介護支援事業所の木戸三代子ケアマネジャーは「各病院の担当者が明確になり、病院への連絡や相談がしやすくなった」と評価する。


<次回に続く>