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施設から在宅介護への転換

「介護先進国」と呼ばれるデンマークも、かつて介護費増大の問題を抱えたことがあった。

1960年代に高齢化率が10%を超えたことで、デンマーク政府は「プライエム」という介護施設を多数建設する計画を推進したが、結果的に施設の建設費を含め介護費の大幅な増加を招いてしまった。加えて、当時実施した研究調査で、介護が必要になった高齢者をすぐに施設に入居させるよりも、必要な介護サービスを受けながらできるだけ長く自宅に住んでもらった方が、高齢者の健康維持の面からも費用の面からも効果的だということが示された。

そこで政府は1982年にプライエムの新規建設を中止し、在宅介護を主体とした介護サービスへの転換を図った。

同時に高齢者介護の基盤となる「高齢者三原則」(1.生活の継続性の維持、2.自己決定の尊重、3.残存能力の維持・活性化)を定めた。

この三原則は在宅介護サービスにも反映されているが、具体的には介護が必要になってもできるだけそれまでの生活を断絶せずに継続性を持たせ、高齢者自身の自己決定を尊重し(周りもそれを支え)、残っている能力や機能に目を向けて自立を支援していくことである。

デンマークの介護の基本理念には、「ノーマリゼーション」と「セルフ・ヘルプ支援」の考え方がある

前者は、障害や病を抱えた人をできるだけ健常者と同じようにノーマル(普通)に暮らせるように支援すること。後者は高齢者を過度にケアするのではなく、自分で問題を解決できるように方向づけをしながら支援していくことだ。

年をとって体の機能が衰えても全ての事ができなくなるわけではないので、介護職員としては利用者に何を支援するべきかの判断(見極め)が重要になってくる。本人ができることまでやってしまうと、自立機能の維持という面ではマイナスになりかねない。高齢になっても自分にできることをすることで残存能力を活性化させたり、自尊心を高めたりできるのである。

一方、日本の介護保険制度では、利用者が「自分でできないから」と頼んでも、「規定外なのでできません」と断られてしまうことが少なくない。特に掃除、洗濯、調理などは細かい規定があってなかなかやってもらえないようだ。どこまでやってあげるかの見極めは難しいが、やってあげないことで、利用者が無理してやってケガをしたら元も子もない。かえって介護費や医療費が高くついてしまうだろう。

デンマークでは細かい要介護度認定や利用制限がないので、職員は目の前にいる利用者の状態をよく見ながら、柔軟に対応することができる。時には利用者と一緒に座って話を聞くだけのこともあるが、それによって彼らの本当のニーズや問題をよく知ることができ、介護の仕事がやりやすくなるという。

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