人手不足に様々な手を考えますが、なかなか決め手になるものがありません。小さな工夫の積み重ねが大事なのでしょう。各社の事例を探ってみたいと思います。
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人手不足対策、企業のあの手この手

働き方改革の目的は、労働力確保。企業もあの手この手の施策を執り始めている。

例えばコンビニ。アルバイトの争奪戦が日増しに高まっている。そこでファミリーマーケットでは、かつてファーストリテーリングの経営に携わりその時の経験を活かした沢田貴司社長の発案で「優秀なバイトを本社社員として直接雇用する」制度の導入を決めた。

全国の加盟店で働くパートやアルバイト(約20万人)のうち、「社内表彰を受けたキャリアを持つ者」「スタッフの指導育成が担える社内資格の保有者」」が対象。2年余りで約300人を社員にシフトする計画だという。いわば「人材引き留め制度」。

さて同業他社は、どんな対抗策を講じてくるか。

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 人手不足という点では安倍晋三内閣も「高齢者社会の進行が不可避ないま、改善策が必須の課題」としている、介護士不足も喫緊の問題。最大の要因が「待遇(収入)」と分かっていても、介護事業者の8割が中小企業。資金力に欠ける。そうした中で他業態の大手資本が運営する事業体でなく、斯界の老舗が思い切った策に舵を切った。

 22年の実績を持つ「らいふ」。有料老人ホームをはじめサ高住やデイサービス、訪問介護などを展開している。だが悩みはやはり介護士不足だった。22年間の歴史を勘案すると業界内での待遇度は上位。しかし課題として「質の高い介護士の確保」を抱えていた。そこで踏み切ったのが「(2年以上在籍した)退職組」を「優遇策で再雇用しよう」という一策。

 介護業界では再入社組に対しては、新入社員と同様の給与水準かつ試用期間中の給与は正規採用時の90%が常だった。対して、らいふが新たに執る施策は、次の様な具合。「(らいふ)退職時と再入社直前まで働いていた会社の給与を比較し、高い方を再雇用時の初任給とする」「試用期間中も同様額を支給する」「再入社に際しての支度金として5万円を支給する」。

らいふ側では「清水の舞台から飛び降りるつもりで」としながらも、本心を「他の業態で培った経験も活かせる、ベテラン介護士をなんとしても確保したい」と語っている。

 人手不足の解決策には「腹を括った新制度の導入」が不可欠といえそうである。