<前回に続く>
ただ単なる認知症の高齢者が働くレストランではありませんね。随所に工夫がなされ、特にそのデザインにこだわったやり方など、大いに参考になります。今後、これらのノウハウが全国に広がっていく可能性を感じます。
次はカフェですね。色々な業態に広がっていく予感がします。〈コメント)
・・・・・・・・・・・・・・・・

認知症を抱える人が安心して働ける仕組みとは

 冒頭ご紹介したように、このお店では、認知症を抱える人がウエイターとして働いています。席への誘導や注文取りはもちろん、料理の配膳やお皿の片付けも行います。もしかしたら、「認知症を抱える人に、そんなことをさせたら危ないのでは?」と思ってしまう人もいるかもしれません。

 ただ実際にお店に行ってみて、そこには非常にこまやかな気遣いがされていることがわかりました。ホールには、ウエイターをしている方を普段から知っている人(福祉施設の職員さんなど)が常駐しており、困ったことや危険につながることがないか目を配っています。また、注文と違ったメニューが届いても大丈夫なように、お客さんには来店前に、アレルギーのある食品があるかどうかを確認しています 。

 もちろん、そもそも「間違う」ことを受け入れ、楽しむために来店しているというコンセプトがあるわけですが、認知症を抱える人が安心して働けるためにも「間違ってはいけない」ポイントはきちんとサポートする仕組みを作る、そんな運営者側の意図を感じました。

安心して働ける「環境」があれば、認知症を抱えていても活躍できる
安心して働ける「環境」があれば、認知症を抱えていても活躍できる

 そしてもうひとつ私が感じたポイントは、ウエイターやスタッフの衣装からお店の内装、さらには食器やマグカップにいたるまで統一したデザインがあり、「あたたかで、ワクワクできる」雰囲気が作られていること

内装や食器などのデザインは統一されている
内装や食器などのデザインは統一されている

 お客の側からすると、こうした環境があることで「自分も参加者のひとり」という一体感を得られ、よりウエイターさんに声をかけたり、手助けをしてみたりしやすくなります。また働く側からしても、認知症を抱えていようがいまいが、お洒落でワクワクできる環境って大事ですよね。

 これは個人的な意見ですが、「福祉」という言葉がつくと、ついつい無機的だったり、逆に過剰に親しみをもたせようとするようなデザインが選ばれる傾向があるように思います(個人的な意見ですよ!)。

 ただ今回の体験を経て、「福祉」というカテゴリーに入る取り組みであるからこそ、デザインの力にもっともっと注目すべきではないのか、と感じました。使いやすさだけではなく、あたたかさとか、ワクワクとか、そういう要素が入ってくることで、これまでになかった新しい可能性が開けるように感じます。

注文をまちがえる料理店 今後の展開は

 注文をまちがえる料理店は、9月18日まで東京・六本木でオープンしています。昨日確認したところ、ほとんどの席はすでに予約で埋まっているということですが、若干ですが当日のお席もあるようです。くわしくは運営事務局のフェイスブックページをご覧ください。ただとても人気で、すぐに売り切れてしまうそうです。

 なんだ、ざんねん・・・、と思ったかたもいらっしゃるかもしれませんが、同様の取り組みは今後も続いていくようです。運営事務局のもとには各地から実施を希望する問い合わせが相次いでいるとのことで、今回のオープンによって蓄積されたノウハウや、食器やエプロンなどの資材を提供することで、全国にこの取り組みを広げていきたいと考えているとのことです。

 さっそく今月24日には、東京・町田市で開かれる「RUN伴まちだ2017」で、認知症を抱える人による「注文をまちがえるカフェ」の出店が予定されています。運営事務局によれば、こちらはレストラン形式ではなくテントのような形で出店するので、お席にも余裕があるとのこと。

 あたたかでワクワクできる空間で、認知症を抱える人も、そうでない人も安心して触れ合える。そんな普段とはちょっと違う時間を過ごせる場を、よかったら体験してみてください。

【※】筆者は今回の記事の執筆にあたり、運営事務局より一切の利益を得ていません。またこの会は完全にボランティアにより運営され、会場のレンタル費や食材の購入などの費用以外の利益は得ていないことを確認しています。