<前回に続く>
本当に現場の努力には頭が下がります(コメント)

すると傍らに置いてあったらしい出刃包丁を手に取って立ち上がり、『入って来るんじゃんねえ!』と、叫びながら向かってきました。私も部屋に入る時は何が起きても対応できるよう緊張していましたし、相手も70代後半で動きが遅かったので事なきを得ましたが、油断をしていたら刺されていたと思います」(Iさん)

極端な例ですが、こうした危険が伴う困難事例もあるのです。Mさんは言います。

▼困難事例があると仕事のやる気がわくケアマネも「私も駆け出しのケアマネの頃は、困難事例があると憂鬱になりました。でも、長年、この仕事をしていると慣れてくるというか、今では困難事例を仕事に対するモチベーションにするようにしています」

どういうことでしょうか。たとえば、「ケアマネを何十人も辞めさせている」と自慢する利用者の担当になった時。前もって、これまでどんなクレームがあったかを元担当者に聞き、ヘルパーとも情報を共有して対応するそうです。

「クレームがあるのは、サービス事業者側にもなんらかの問題がある場合も。そうした問題をなくす努力をするのはサービス向上につながるし、われわれ自身のスキルアップにもなります。それでクレームがこなければ勝ちというか、満足感につながりますしね。もっとも、なかにはクレームをつけるのが生きがいみたいな利用者さんがいて、そういう方にはいくら努力をしても通じませんが」

このように困難事例を前向きにとらえるケアマネージャーもいるわけですが、多くにとって悩みの種でしょう。

もちろん、ケアマネージャーは中立公正が原則であり、困難事例であっても他の利用者とサービスや対応で差をつけることはないと言います。

また、ケアマネ同士が困難事例を解決に向かわせるために意見を出し合う「事例検討会」を行うなど、介護業界でも前向きな取り組みを行っているそうです。

とはいえ、利用者サイドからすればケアマネージャーから「あの家は困難事例だから要注意」と見られないことに越したことはありません。

「やはり大事なのはコミュニケーションです。独居の認知症の方は厳しいですが、ご家族の場合、われわれのサービスや対応に不満や納得がいかない部分があったら、率直に話していただきたいですね。こちらも至らない点があれば改善に努めますし、互いに理解し信頼関係を築いたうえで行うことが介護には重要だと思います」(Mさん)

(ライター 相沢 光一)