<前回に続く>

あらゆる角度から睡眠を管理


ソニー・ライフケアの施設で実施している「スリープマネージメント」の取り組みもユニークだ。

生活を豊かにするには生活リズムを作ることが重要だという考えのもと、夜に質の高い眠りを得られるように工夫をしている。マットレスを個人に合わせてカスタマイズしているほか、レクリエーションの時間を夕方に設け、うたた寝を防止している。その時間帯に寝てしまうと夜に寝付きが悪くなり、睡眠の質が落ちてしまうためだ。それでもよく眠れない人には睡眠センサーも導入して指導しているという。

 内装や部屋の構造もコンセプトを踏まえた設計になっている。例として、ベッドを縦横どちらの向きにも置けるように18m2の部屋は間口3.4mを基準にした。これにより車椅子やリフトなどを持ち込んでも問題なく利用できるようになった。

PP(プライベート・パブリック)分離にも配慮している。老人ホームで一般的な引き戸は床や天井との間に隙間があり、室内にいても外の音が聞こえてしまう。プライベートな時間を守るため、25dBの遮音効果のある扉を設置した。

 井出氏が講演で繰り返し語ったのは「品質」だ。「一棟一棟ていねいに品質を作っていくことが、ひいては利用者の期待に添える形になる」(同氏)。今後の展開としては、年間何棟といった目標は掲げず、数年の間は多くても年数棟のペースで拡大していくという。

 井出氏は、「老人ホームに入る際、自宅からの転居、家族からの独居、新たな集団生活、という3つの苦渋の選択がある」と語る。多くの場合、老人ホームに入れる側にも罪の意識があり、入る側も入りたくないという思いがあるという。こうした中、同社が目指すのは、「『あのホームに住みたい』と言われる」(同氏)ような施設だと強調した。