<前回に続く>

子どもへの愛情と配慮を最大の費用とともに注ごうと考えている母親のもとでも、生活保護世帯の子どもの生活は厳しい。しかも当時は、母子加算があった。また、生活保護費の生活費分も、現在よりは高かった。生活費分の削減が始まった2013年夏のことを、ミサトさんはこう語る。

「1万4000円くらい下がって。これからアスカの高校受験もあるのに、どうしようかと思いました」

 もしも母子加算がなかったら、さらに何を諦めることになっただろうか。

「公営団地の子ども会に参加させることを諦めたと思います。あと削れたとしたら、子ども会費くらいでしたから。そうすると、地域の小学校の集団登校にも参加できなくなるのですが」(ミサトさん)

下着や生理用ナプキンを買えない
母親が自分のために「選択したもの」

 一方、千葉県のYさんは、6人の子どもとともに生活保護で暮らすシングルマザーだ。現在、高校生から小学生の6人の子どもたち全員が、母子加算の対象となっている。

 子どもたちは、Yさんの愛情に加え、保育士だったYさんの専門知識とスキルを反映した多様な配慮のもと、心身とも健やかに、個性豊かに育っている。Yさんが離婚する以前は父親からのDVや虐待が日常的だったのだが、過去の影は感じられない。

 公立高校に通う高校生の子どもには、給食がない。Yさんは、高校生の子どもの弁当を毎日手づくりしている。食費の増加が家計に痛い。また、中学までは生活保護費でカバーされる部分が大きかった学校関連の経費も、高校になるとカバーされない部分が大きくなる。

「予想以上にお金がかかります。中学校の比ではありません。そして、請求は一気に来るんです」(Yさん)

 貯金で備えることはできない生活状況だ。「支払いを待ってもらって振り込んだことが、何回もあります」とYさんは言う。高校生の子どもを含め、年長の子どもたちは思春期に突入した。第二次性徴が始まれば、女の子にはブラジャーも必要になる。
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