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薬物依存症

日本で代表的な薬物依存症がお酒によるアルコール依存症とたばこによるニコチン依存症です。アルコール依存症は80万人を、ニコチン依存症は1400万人を超えると推測されています。

薬物依存症の恐ろしい点は、自分が依存症であるという自覚がなかなか持てない点です。アルコール依存症の患者さんで通院している人は4万人にすぎません。

大量の飲酒を毎日のように続けるアルコール依存症にあっては、人体に様々な毒性を発揮するアルコールが胃潰瘍や肝硬変、高血圧、糖尿病や、時には認知症の原因になることがあります。

また、うつ病の患者さんの20%がアルコール依存を合併し、自殺者の3割からは高濃度のアルコールが検出されています。

これらの病気にかかっており、断酒が必要なことがわかっていても、断酒をしようとしない、あるいはそれが難しい方は少なくありません。ちなみに、アルコール依存症の平均寿命は50歳代前半ということが、いくつかの報告で明らかになっています。

それから、ニコチン依存症にあっても、日々の喫煙によって癌や動脈硬化による心血管や脳血管障害、および肺気腫といった、時に致命的となる身体疾患がもたらされることがあります。

日本における2012年の調査では、20歳までに喫煙を開始した人の余命は、喫煙しない人に比べ、男性で8年、女性で10年寿命が縮まるという結果が見られました。

しかし、それらの恐ろしい病気の危険が分かっていても、ニコチン依存症に対する保険診療が受けられるようになった今ですら、禁煙治療に取り組もうとしない方が大半なのです。

我々が日常的な嗜好品としているアルコールとたばこは、その強い依存性と依存症が身体にもたらす多大な危険性についてのさらなる啓蒙が必要です。また、日本は海外から対策の遅れを指摘されていますが、世界的な水準での広告や販売の規制を行うことが求められているのです。

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