今まで懸念をしていたように一方的に出されてきた介護サービスの利益率をもって引き下げにかかる国、企業側と現場側の真っ向からの対立です。3.3%だけの単純な数字だけで判断をするような問題ではないはずですが、報酬減ありきの議論は無意味です。双方でもう少し具体的な資料を出していく必要があるのではないですか?事業者側からも現場のデータを出して議論する必要があります。
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官庁通信社2017.10.30
= 社保審・介護給付費分科会 =

介護サービスの利益率をめぐり対立 「報酬下げるべき」「サービスが崩壊する」

 衆院選への影響を勘案して中断されていた社会保障審議会・介護給付費分科会 −− 。およそ1ヵ月半ぶりに開かれた27日の会合は、委員の意見が激しく対立する展開となった。
 
第148回社会保障審議会介護給付費分科会資料
 
争点になったのは、厚生労働省が前日に公表した「介護事業経営実態調査」の結果だ。多くのサービスで収支が悪化していることが分かったが、保険料を負担して制度を支える現役世代や民間企業を代表する立場の委員は、来年度の改定で介護報酬を引き下げる余地があると主張。これに対し介護現場の関係者は、「サービスが崩壊してしまう」「強い憤りを感じる」などと強く反発した
 
「制度の持続性が重要」

 「利益率は総じてプラス。介護保険は税や保険料をもとに限られた財源で運営されている。次の改定で報酬の全般的な引き下げを図るべきだ」日本経団連の間利子晃一参考人(井上隆常務理事の代理で出席)はそう訴えた。

健康保険組合連合会の本多伸行理事も、「利益率は決して悪くない。今後の財政は非常に厳しく、報酬を引き上げる環境にはない」と持論を展開。

会けんぽの安藤伸樹理事長は、「高齢化が進む一方で『支え手』は減っていく。制度の持続性の確保という視点は重要。保険料もすでに高い水準にあり、適正化できる部分は確実に実施すべき」と促した。

 
今回の「介護事業経営実態調査」では、介護サービスの種類ごとに昨年度の利益率が明らかにされている。全サービスの平均は、一昨年度より0.5ポイント低い3.3%。2014年度の調査の結果は7.8%で、前回の介護報酬改定の影響が大きかったことが読み取れる。

ただし、財務省は厳しい姿勢を崩していない。国の財政を議論する「財政制度等審議会」の25日の会合で、介護サービスの利益率の多寡は中小企業の平均(2.6%)と比べて判断すべきと指摘。
利益率の高いサービスの報酬は引き下げるべき、と要求した。
 
「事業者の持続性も考えるべき」

 27日の分科会では、介護施設・事業所の経営者や利用者の立場を代表する委員らがこうした意見に反論した。
 
全国老人福祉施設協議会の瀬戸雅嗣理事は、「事業者の持続性も考えないといけない。サービスが崩壊してしまう」と忠告。

全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「介護報酬をマイナスにするために持ってきたとしか思えない数字を使うのはやめて欲しい」と批判した。

認知症の人と家族の会の田部井康夫理事は、「ちょっと利益率が上がったらすぐ報酬が下がるような業界で誰が働きたいと思うのか」と問題を提起。

日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、「特に中小の事業所は限界にきている。報酬をさらに下げるという議論をすること自体がナンセンスだ。強い憤りを感じる」と語気を強めた。

 
介護報酬を上げるべきか、それとも下げるべきか −− 。政府は大枠の方針を年末に固める。加藤勝信厚労相は27日の記者会見で、「必要な方に必要なサービスをいかに効率的に提供していくか、という視点が大事。施設・事業所の経営状況や物価・賃金の動向、国民負担、財政への影響などをしっかり踏まえて検討していく」と話した。